177杯目 さくらの涙
「おはよう…今日も朝日は見えずと。」
「おはようございます…意外と寒くないですわね…」
「それどころか暑くもない…ちょうどいいまであるな。」
「ところで大学には他に誰がいるのでしょうか…」
飛翔と結花は歩き始めた。他の生存者を探したり仲間を増やしたりするためだ。外には出れないため高校棟に向かうことはできないため、大学内で探すことにした。
「飛翔さん、あの人影は?」
「…あれは人体模型だ。」
「ではあの頭は?」
「あれは誰かの死骸だ。」
「じゃああそこで弱っている子は?」
「あれはさくらだ…さくら!?」
「お…願い…ご飯を…」
さくらを連れて本拠地へ戻った。
「さくら!」
「飛翔さんとわたくしのご飯はいいのでさくらさんに!」
「ごめんね…ありがとう…」
「さくらさん、どうして倒れていたの?」
「あのね…食べ物を探していたの…そしたら誰かに盗まれちゃって…」
「そうだったんだ…」
「それ盗んだ人って…誰?」
「わからない…でも…もう外に行ったよ…」
「…そう。わかった。」
「雪…暴れないで…」
「雪さんのせいじゃありません!」
「うるさいなぁ…起こさないでくれ…」
「初音?今は大変な事態なのよ?」
「ごめん…おやすみ…ちょっと待って、さくらちゃんいるでしょ。」
「どうしましたか?」
「…ごめんね。守れなくて…辛かったよね…」
「気にしないでください!」
さくらが倒れる少し前、初音は助けに行っていた。少し経った時に飛翔たちは本拠地に戻ろうと交渉したが、彼女は見つかってないから戻れないと言って離れてしまった。その後初音は戻ったものの、さくらは食料品を奪われて倒れていたのだという。
「なるほど…初音さん、ゆっくりしてなさい。」
「そうですよ。あなたがしっかりしてないと…」
「結花…初音様は頑張ったんだ…この場所を確保できたのだって…彼女のおかげなんだ…」
「そうですね。そうでなければ…今頃私たちは殺し合いをしていたかもしれませんからね。」
「もしそうなっていたら…あ、雪がカレー出来たって!」
「体調不良じゃないとはいえ…ちょっと作りすぎちゃったかな?」
「スパイスが効いて、適度に辛くて…それでいて…」
「おかわり…いいですか!?」
「当たり前だよ。いっぱい食べて!」
「…京子どうしたの?食欲がないの?」
「ごめんなさい…懐かしくて涙が…またみんなで料理をしたいです…」
「本当に…本当にそうだよ…!」
「このカレー…学食のレシピでしょ。」
「よくわかったね!」
「京子の涙で思い出したの。もう飛翔もさくらも気づいてるわ。」
「星が無限大だよ…」
涙は辛かったり悲しかったりするから流すだけじゃない。嬉しかったり懐かしかったりするから流すことだってあるのだ。