191杯目 信じる心に二言はない
「すみません、逃げてるばかりじゃ終わらないですよ。」
「せめて俺だけでも!」
「むしろあなただけを殺します。」
「落ち着け。」
殺し合いという名の拷問をしている二人を前に、篤史が声をかけた。
「桜坂さんの気持ちは痛いほどわかる。しかし、これは私の落ち度でもある。なので、私が裁いても良いだろうか。」
「いえ、私の手で」
「ゆりね、そこまで。」
「…会長が言うなら仕方ないわね。」
「やっと帰ってこれたよ!」
「まず私は帰ってきた。そして魔王は旅行中に亡くなられた。後継者選びは、本来私と風早快斗の二人で考えなければならなかった。しかし、こちらの世界への帰るために必要なエネルギーがないことからエネルギーを貯めるために努力し、帰ったときには…もう30人も亡くなっていた。守護貴族問題や方角家の戦争などがあったのだが…」
「何が言いたい?」
「…三日戦争の首謀者は、黒崎康隆。間違いないな。」
「あぁ、そうだ。だが、飛翔を殺すためではない。」
「…何が戦争に持って行ったの?」
「…真の目的は…魔王の座を狙うため。ダメか?」
「ダメに決まってるだろ。」
「どうしていけると思った。」
「だって、会長が…」
「…あの結末、覚えているだろう?私は怒られた。でも魔王だからここまで寛大だった。しかし、魔王がいなくなって…」
「会長が泣いたので私から。魔王の座を奪うということは、相当な実力がなければいけないの。それに、あなたがやったこと、それとこれからやろうとしたことは魔王が作ったこの世界を裏切ることなの。」
「でも…」
「でもじゃない!…暴れるな。」
「でも俺がこうしなければ誰が支配するんだよ!」
「支配?」
「こういうことだよ!」
「…」
「みんな俺の言うとおりだ。俺が言うことには“はい”とだけ言うんだ!」
「はい」
「…手始めに飛翔を殺せ!」
「おい…やめろ!」
「…」
「やめ…ぐふ…やめて!」
「…殺す」
「やめて!痛いよ!」
「…」
「…おい。どうした。手を止めるな。」
「…誰が洗脳されるかよ。」
「いい加減にしてください。」
「…だから飛翔を殺せないんだよ。飛翔の存在がある限り、ずっとな。もし私がいなくなっても誰か止めるさ。」
「…どうして…」
「わたくしたちは飛翔を守りたいんです。」
「主人公だからじゃなくて、友達として好きなの。」
「恋愛関係だとか言われたっていい。でもひーくんは絶対に私たちに必要なんだ。」
「…笑わせるな!馬鹿馬鹿しい。」
「来るわね。」
「~♪」
綺麗な歌声が聞こえると同時に、ヤスは少しずつ溶けていった。それと同時に戦争が終わりを告げた。終わったと同時に歌が消えた。
「空が晴れていく…」
戦争で汚れた空はいつのまにか綺麗な空となって、見渡す限り広がっていた。




