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第27話 貴族の生きる世界

 気絶した母さんとエリーを【反重力アンチグラビティ】で浮かし、ギルドに戻った。

 母さんとエリーはまた診療所で寝かせてもらった。


 そのまま裏に回って素材を買い取ってもらおうとしていつものように取り出した。


「な、何ですかこれは!?」

「何ってギガントタートルですよ? 買い取りお願いします」


 大きなモンスターを出すとビックリしてくれるから楽しいんだよね。


「ギガントタートル!? そんなの買い取れませんよっ!」

「え? ポイズンリザードやアサシンカメレオンは引き取ってくれたじゃないですか。何でギガントタートルは無理なんですか?」


 巨大な三級モンスターには毎度驚かれた。三級モンスターはかなり珍しいんだとは思う。でも今までは問題なく買取ってもらえた。買い取れないと言われたのは初めてだった。


「あの2体は解体出来るんで、体の一部が売りに出ることがあります。だから値段がつけられますが、こいつは固すぎて解体も一苦労ですから、ダンジョンから素材が持ち帰られたことがないんです。売るならオークションにかけるしかないですよ」


「じゃあ、オークションで売ってもらってもいいですか?」

「それはいいんですけど、こんなに大きいと運ぶ手段もないんですよ。解体しちゃったら価値も落ちちゃいますし」


 そうか。そもそも運べないか。


「ええっと、じゃあどうすれば?」

「シルフィスさんにオークションが行われる王都まで運んでもらうしかないかと······」


 うーん。そうなるのか。

 これは皆と相談しないとだな。



「······というわけなんです」

 酒場で打ち上げをしようとしていた皆にギガントタートルが買取って貰えなかったこと、オークションにかけるにしても王都まで運ばないといけないことを話した。


 少なくとも三体のギガントタートルは俺達のものじゃないから何とかして売る必要がある。


「僕はシルと一緒にバーンズさんの所に行くから皆は先に始めててくれ」

「おう、始めとくわ」

「頼んだぞ」


 皆はもう待ち切れないといった感じだから待たせるのは申し訳ないよね。


「悪いね。シルも勉強と思って一緒に来てくれ」

「いいですよ。構いません」

 ギルドマスターに相談すれば何とかなるんだろうか?


 結局売るには王都に行くしかないと思うんだけどな。


「マイヤ、バーンズさんに話があるんだ」

「どうぞ」


 ギドさんは受付の列に並ぶことなく、受付の一人に声を掛けるとそのまま職員専用通路に入っていった。


「このギルドではね、四級以上のパーティリーダーは受付を介さずにギルドマスターと話せるんだ」

「へぇ、そうなんですね」

 それは知らなかった。


「と言ってもバーンズさんがいないこともあるから受付に一言断ってからから行くんだけどね」


 あのやり取りはそういうことだったのか。

 マイヤさんは別の冒険者の受付業務をしてたのに声を掛けたから「えっ?」って思ったけど、よくあることなのかもしれない。


「特に何も言ってなかったからここにいるはずだ」


 そう言ってギドさんはギルドマスターの部屋のドアをノックする。


「入れ」

 直ぐに返事があった。


「忙しいところすいません」

「お、お邪魔します」


「おお、シルフィスとギドか。まあ座ってくれ」

 促されるままに座る。

 突然の来訪者に驚くこともなくギルドマスターは尋ねた。


「それで、どうしたんだ?」

「実は今日の探索で持ち帰った素材が買取を拒否されまして」

「ほぅ、余程の値打ちもんを持ち帰ったか。それならオークションか?」

「はい、そうなったのですが、その場合も王都まで素材を持って行って欲しいと言われまして」

「はぁ? お前ら一体何を持ち帰ったんだ?」

「ギガントタートルです」

「ギガントタートル!!?」

「3体······」

「3体!!!?」

「いえ、最低3体は売りたいので売れるならもっとですね」

「ちょちょちょ、ちょっと待てツッコミどころが多すぎる。ギガントタートルを何体倒したんだ?」


 ギドさんはギルドマスターが驚く様を楽しんで見ていたが、何体倒したと聞かれ俺の方を見てきた。


「何体だっけ?」

「20〜30くらいですかね?」

 多分そのくらいだったと思う。


「はぁ〜!?」

 ギルドマスターはこれまた驚いたようだ。


「【収納庫ストレージ】」 

 ギガントタートルを取り出そうと思うと、頭に収納してあるギガントタートルが浮かんでくる。その数を数えると27体だった。


「正確には27体でした」

「ありがとう、シル。バーンズさん、27体です。そのうち3体はうちの派閥のパーティの取り分なんで売りたいんですよ」


「ああ、あ〜。ああ。そういうことか」

 ギルドマスターは色々なことに納得がいったようだった。


「昨日と今日で三級冒険者が一気に増えたのはお前らがキャリーしたからで、そいつらの取り分がその3体のギガントタートルってことか」

「そうですね。正確には今日三級になったパーティの取り分になります。何とかして売れませんかね?」


「王都に持って行くのは?」

「それもありなんですけどね。最近活動の拠点を王都に移そうと思ってましたから。でもそうなるとこっちに戻ってくるのがまた手間だし、支払いが大分遅くなってしまうんですよね。出来ればスッキリと旅立ちたくて」


 ギルドマスターは一つため息をついた。


「そうか······やはり出ていくか······」

「はい。シルのお陰でまた夢を追えるようになりました」


「お前らみたいな優等生には長く派閥の長として居座って貰いたかったんだがな」

「大丈夫ですよ。バッジがいますから」


「なる程な。バッジか。それで強引に五級から三級に引き上げたのか。1日でそれをしたってのが信じ難いが······それよりも三級が増えすぎると逆に荒れねぇか?」

「古参の派閥のメンバーは団結力がありますし、新規加入のメンバーよりも一段強いですから上手くまとめてくれるはずです」


「一段強く育成したってことか? ······そんなことも出来るのか?」

 ギルドマスターが驚いて俺の方を見る。


「まぁ、ある程度は」

 古参と新規加入の違いはスキルを1つ覚えたかそうでないかの違いしかないけど。

 まぁ、そのスキル1つが大きいのか。


「ギド、シルフィスをちゃんと守ってやれよ」

「もちろんです。そのために俺達も必死に頑張って強く成りましたし、これからも強くなりますから」

「頼んだぞ」


 今のギドさん達は総合的に見れば俺より遥かに強い。ステータスがまるで違うからね。

 もし模擬戦をしたとしたら普通に負けると思う。もし俺が勝てるとしたら熱線魔法や爆裂魔法を使うしかないけど、それは流石に使えないからな。


 今後強くなるためには強いモンスターに挑戦するのは必要だから、危険なこともあるだろうけど、守ってもらうような危険な事態に陥らないように気をつけよう。


 あれ? もしかして今のはそういう意味ではない?


「それで売却の方は?」

「伯爵に話をつけよう。手紙を書くから酒場で待っててくれ」

「ありがとうございます。宜しくお願いします」

「宜しくお願いします」


 ギドさんに倣ってギルドマスターに宜しくお願いする。

 伯爵ってことは、貴族に売るってことか。

 そういう方法もあるのか。


 オークションよりは値段が安くなるかも知れないけど直ぐ売れるならその方がありがたい。


 その後、俺とギドさんはギルドマスターの部屋から退出し打ち上げに参加した。

 途中で受付嬢の一人がギルドマスターの手紙を持ってきてくれた。明日俺とギドさんで伯爵邸に行って手紙を渡すように言われた。


 貴族に面会するということらしい。

 まさか自分が会いに行くとは思っていなかったから緊張してきた。


 結局と言うか、やはりと言うか、打ち上げが終わっても母さんとエリーは目を覚まさなかった。

 でも、今回はギドさんがいるのでエリーはギドさんに抱えて帰ってもらい、俺も母さんを抱えて帰った。


 

◇翌日、伯爵邸◇


 ギドさんと待ち合わせて伯爵邸へと向かった。

 貴族と会うのは初めてだ。

 めちゃくちゃ緊張している。


 門番にギルドマスターの手紙を渡すと暫く待っているように言われた。


 ギドさんはそれなりに貴族と関わる機会があったようで「大丈夫だよ」と声をかけてくれた。


 程なくして年配の身なりの良い方がやって来た。

「悠久の剣のギド様ですね。こちらへどうぞ。ザーレ伯爵がお会いになるとのことです。お連れ様のお名前を伺っても?」


 俺達を見る目も特に見下した感じもなく、物腰も柔らかかった。


「こちらはシルフィスです。悠久の剣は彼の傘下に入りました。若いですが、彼は僕らの派閥の長です」

「これはこれは失礼しました。シルフィス様、私は家宰のサイモンと申します。以後お見知り置きを」

 サイモンさんはお辞儀をして挨拶してくれた。

 見下すどころか丁寧な対応に驚く。


「シルフィスといいます。宜しくお願いします」

「はい。こちらこそ。ではお二人とも伯爵がお待ちですのでどうぞこちらに」


 サイモンさんに案内されるままついていく。貴族のお屋敷に初めて入ったけど広いし、色々と豪華だし目移りしてしまう。


 サイモンさんは丁寧に対応してくれたので少しホッとしたけどやっぱり緊張するな。


「バルナ様。冒険者の方々をお連れしました」

「どうぞ、入ってもらって」


「どうぞ。お入りください」

 中から声がするとサイモンさんはドアを開けて誘導してくれた。


「シルフィス様と、悠久の剣のギド様になります」


「シルフィスは初めてだな。私はバルナ・ザーレ伯爵だ。ギドは久しいな」

「初めましてシルフィスと言います」

「お久しぶりです。バルナ様」


 バルナ様。初めて見たけど思ったより若いな。20代半ばくらいか?


「まぁ、座って楽にしてくれ」

 座るように言われたがめちゃくちゃ高そうなソファで気が引ける。


 恐る恐る座るが座り心地は凄く良い。

 緊張さえなければ相当寛げるソファだと思う。


「それで聞き間違えでなければサイモンはギドよりもシルフィスを先に紹介したと思うんだが、君はギドよりも上なのか?」


 突然の予想外の質問に驚く。

「い、いえ、ある意味上かも知れませんが、全然上でないと言いますか······」


 緊張しすぎて何言ってるかよく分からない感じになってしまった。


「バルナ様。彼は私達の派閥の長なのです」


 ギドさんの説明でバルナ様の眼つきが変わった。


「大分若く見えるけど、レベルは?」


 うわぁ、この質問はきついな。


「レベルは2です」


 あまりのレベルの低さにバルナ様の目が一瞬見開く。

 しかし直ぐに口角が上がった。


「面白い。レベル2でギドの上に立つか」

「ギドさんの方が全然強いんですけどね。担ぎ上げられてしまいました」

 うーん。何か興味を持たれてしまった気がする。


「本人はそう言ってるが? 何故下についたんだ?」

「謙遜してるんですよ。冒険者は力が全て。弱い奴の下にはつきません。それに恩義もあります。彼が悠久の剣を三級に引き上げてくれたのです」


 ギドさんの言葉を聞いてバルナ様は上機嫌になったようだ。


「はははっ、いいぞ。謙虚な強者は好感が持てる」


 俺褒められた?

「ありがとうございます」


「それで、バーンズの手紙によるとモンスターの素材を可能な限り買取ってもらいたいとのことだが······何の素材だ?」


 どうも手紙には詳しく書いて無かったようだ。と言うかギルドマスターはわざと書かなかったんじゃないか?


 ギドさんは俺に答えるように目で促している。

「ギガントタートルです」


 バルナ様の表情が驚きと歓喜に沸く。

「何と!! あのデカブツを持ち帰ったというのか!! 信じられん!! なぁバルザック?」


 バルナ様は後ろに控えていた騎士に顔を向けて問いかけた。

「はい、騎士団でさえ回収出来なかった素材です。それを回収してこようとは天晴です」

 

「それで買取っていただけますでしょうか?」

「ああ、勿論だ。あれの甲羅からかなり強力な防具が作れると見込めるのでな」


 良かった。

 需要はありそうだ。


「では実物を見せてもらえるか?」

「はい、もちろんです。······ただ、どこで出しましょうか?」


「おお、そうだな。では、訓練場で出してもらおう」


 




「では、この辺に出しますね」

 俺はマジックバッグに魔力を込めてギガントタートルを取り出した。


 貴族の前で空間魔法は使わない方がいいと思い、ギガントタートルは【収納庫ストレージ】からマジックバッグに移しておいた。


 ちなみに、その際に【収納庫ストレージ】とマジックバッグは同時に使用すると中身を外に出さなくても移動出来るという発見も出来た。


「おお、本当にギガントタートルだ」

「思ったより大きいのですね」

「しかも何だこれは!? 首を切り落として倒したというのか!? 素材が殆ど傷ついていない」


 おそらくバルザック様はギガントタートルと戦ったことがあるのだろう。

 倒し方に驚いていた。


「素晴らしい。これならば金貨100枚は出そう」


 100枚!?

 オークションに出せばどのくらいになるか分からないけど、100枚でも十分だと思える。


 これ1体で宝箱の中身と同じくらいの価値があるってことでしょ。

 当然文句はない。


「サイモンはどう見る?」

「そうですね。100枚では些か安いかも知れません。希少度で言えばダンジョン産の魔導具より希少かと」


 もっと上!?

 それはすごい。


「そうか、バルザックはどうだ?」

「はい、物好きなコレクターにはかなりの値段で売れるでしょうが、素材そのものの価値となると利用価値のある部位は甲羅ぐらいではないかと。金貨50枚程度ではないでしょうか?」


 バルザック様は低く見積もっているようだ。意見が割れたな。どうなるんだ?


「ふむ。そうか。では正解を聞こう。ライアン頼む」


 正解?


 バルナ様はもう一人ついてきていた男性に意見を求めた。


「ふむふむ。おお、これは素晴らしいですね。ギガントタートルを鑑定するのは初めてです」

「ライアンは鑑定士でね。希少性は加味出来ないが、素材としての価値は鑑定できるんだ」


 おお、【鑑定】のスキルを持っているってことか。


「先ず甲羅ですが、防具として利用価値が非常に高いですな。ミスリル並の防御力を誇る盾や防具が作れます。しかもミスリルよりもはるかに軽い。それだけでなく杖の素材としても優秀で水系統の魔石と組み合わせますと抜群の効果を発揮します。同様に嘴は水属性の武具になりますな。骨や血は触媒としても使えます。肉はそこそこ美味いようです」

「中々良い鑑定結果だな。それでいくらになる?」


「はい、合計で金貨500枚程になるかと」

「500か想像以上に価値があったな。私もまだまだだ。サイモン、やるではないか」

「いえ、私もまさかここまで価値があるとは思っていませんでした」


「シルフィス、ギド、希少性は加味していないが金貨500枚でも良いか?」


 500枚!? マジでその値段で売れるのか?

 ギドさんを見ると、ウンウンと頷いている。


「はい、もちろんです。ありがとうございます」

「中々良い買い物であった。バルザックよ、これで我が騎士団は更に精強になるな」

「はっ、間違いないかと」


 バルナ様達は喜んでいるが、肝心なのは3体以上売ることだ。

 ギドさんが早く言うように目で訴えてくる。

「すいません。それで何体買取っていただけますでしょうか?」


「はっ? 何体とはどういう事だ?」

 バルナ様は虚を突かれたような顔をしている。

 あ〜、やっぱりこれ1体だけだと思われていたか。


「実は可能であれば3体は買取って頂きたいのです」

「3体!? いや、3体は、だと!?」

「やはり、難しいですしょうか?」


 1体がかなりの高額になったからな。

 流石に3体は厳しいか。


「い、いや、難しいとかそれ以前に頭が追いつかん。シルフィス、貴様何体のギガントタートルを持ち帰ったのだ?」


 うーん。言い辛い。

「27体です」

「27体!!!? 27体だと!!!?」

「有り得んだろう!?」


 バルナ様とバルザック様が声を上げて驚いていた。

 ギルドマスターでも驚いていたからな。

 やっぱりこうなるか。


「貴様嘘ではなかろうな?」

 バルザック様が詰め寄ってきた。

「もちろんです」

「では確認させてもらえるか?」


 そう言ってバルザック様は手を差し出してきた。マジックバッグを貸せということだろう。


 魔力を通せば中に入っているものは把握出来るからな。

 マジックバッグに移しといて本当に良かった。

 バルザック様にマジックバッグを渡す。


「た、確かに26体のギガントタートルが入っている······しかも何体かは完全な状態で······傷もなく倒しているものもあるだと?」


「バルザック、冗談だろ?」

「信じ難い事ですが、本当です」


 バルザック様は手を震わせながらマジックバッグを返してくれた。


「お前は何者だ? レベル2で何故ギガントタートルを取り出せる? 俺には取り出せなかった」


 ああ、今取り出そうとしてたのか。

 多分首切断で倒したやつじゃなくて、雷魔法で仕留めた傷のないやつを取り出して証明しようとしたんだな。


 でもこれって答えなきゃダメな感じか?

 言ったら利用されてしまうのだろうか?


「バルザック様、それがシルフィスのスキルに関わることなのはお分かりでしょう。申し訳ありませんが彼のスキルは明かせません」


 どうしようかと思っていたらギドさんが割って入ってくれた。


「何故だ?」

「冒険者にとってスキルは飯のタネ。おいそれと明かすものではありません」


 その言葉の意味は単に儲けが減るという意味ではない。

 スキルが知られると対策される可能性が出てくる。つまり、モンスターではなく人に殺される可能性が高まるという意味だ。


「ギド、俺が信用ならないと言いたいのか?」

「いえ、信用の問題ではありません。彼のスキルの力を知れば利用しようとする者が必ず出てきます。彼は冒険者として自由に生きることを望んでいますから教えたくないのですよ」


「だからそれが信用してねぇって言ってんだろうが?」

「別にバルザック様に限ったことではないと申しています」


 えっ、ちょっとギドさん。何かバルザック様を怒らせてませんか?

 貴族相手に不味くない?

 いいのこれ?


「三級に上がったばかりの小僧が調子に乗るなよ」

「調子に乗ってはいません。私は彼を守るためにここにいますから、その役目を果たしているだけです」


「バルザック。控えろ。ギドは間違っていない」

 見かねたバルナ様が止めに入った。


「スキルはレベル差を覆すことがある。そんなことも忘れたか?」

「も、申し訳ありません」

 バルザック様は強引に怒りを抑えこんだ。

 抑えきれてなくて所々漏れてるが。


「ギドもだ」

 そして叱責はギドさんへも向いた


「ギドもどうした? 今日はやけに熱いではないか。まさか三級に上がった程度で自惚れたか?」

「いえ、三級程度の実力でお二人の前で自惚れるほど愚かではないつもりです」


「ならば何故だ?」

「率直に申しますと、三級という肩書以上に私は強い。もっと言えばお二人よりも強いからです」


「何だと!!?」

 バルザック様の怒号が飛ぶ。


 ギドさん、それは絶対まずいですって。

 完全に喧嘩売ってるじゃん。


「ほぅ?」

 だがバルナ様は寧ろ笑っていた。


「我々貴族が民を治めるのは、その力があるからだ。三級冒険者ごときには負けんぞ?」

「先ほど『スキルはレベル差を覆すことがある』と言われたではありませんか」


「いいぞ。面白くなってきたではないか。ならばこうしよう。決闘で我々が勝てばシルフィスのスキルを教えてもらう。貴様が勝てばギガントタートルを3体買い取ろう。どうだ?」

「もちろん受けましょう」


 えええ? なんでこうなるの?


 ああ、そうか。

 冒険者だけじゃなく、貴族はそれ以上に「力こそ全て」の世界で生きているのかも知れない。


 何となくそう思った。


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