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第25話 発想の勝利

 翌日、俺、母さん、エリーは五級冒険者パーティを四組率いて16階に潜っていた。


 六級のオークが出るのが15階だが、16階には四級のオーガが出る。

 オーガはオークよりも一回り体格がいいがオークと違って太ってはいない。

 筋肉質の体型でオークよりも動きは速い。


 悠久のメンバー達は一人一人が数組ずつ六級のパーティをキャリーしている。


 今回のキャリーは古参の派閥のパーティを優先している。新しく加わった冒険者が多すぎて、一度には連れて行けなくなったので、古参のパーティを強くしてこの人達に新規加入のパーティをキャリーしてもらう予定だ。

 派閥の冒険者を一通りキャリーした後は、下級の冒険者を率先してキャリーしてくれた人を優先してキャリーすることにした。


 新しく四級や五級の冒険者も加わってくれたのだが、その人達のキャリーは明日行う予定だ。


 ひとまずはこの五級の冒険者たちを四級に上げ、出来れば三級に上げたいと思っている。

 ギドさん達としても、新規加入の四級冒険者よりも古参の人達に派閥を率いてもらいたいと思っているので頑張ってもらいたい。


 ちなみに今回はレベルアップが目的なので五級の皆さんのステータスは固定しない。同じ派閥とは言え、ステータスが【固定】出来ることは隠すことにしたからでもある。


 大勢で戦えば戦うほど経験値は分散してしまうので、順番に一組ずつ戦う予定だ。


 五級の方々は普段15階を主戦場としており16階の階段の場所も当然把握していたので道案内をしてもらった。


 今回は俺もしっかり道を覚えた。


「······と言うわけでこれから皆さんには魔法を覚える訓練と並行してオーガと戦ってもらいます。上手くいけば魔法系のスキルを覚える可能性もありますから頑張ってください」


――おおお――


 驚きの声が漏れる。


「ギドさん達は皆さんに今後の派閥を率いる中核になってもらいたいと考えています。俺もその意見には賛成です。ですので、今日の目標として、三級に上がれるように頑張ってください」


 すると今度は明確な驚きの声が上がった。


「大将、今日中に三級ってマジで言ってるんですか?」


 俺は皆から大将と呼ばれている。

 ちなみに母さんは『姉さん』、エリーは『お嬢』と呼ばれている。


「可能であれば······ですね。でも無理ではないと思っています。明日は新規加入した四級のパーティもキャリーしますから、負けないで下さいね」


「はいっ」


 思ってもみなかった三級という言葉に全員震えているようだ。と言っても恐怖からではなく歓喜の方で。


 

 オーガはかなり好戦的で血の匂いに反応して寄ってくる性質がある。

 またオーガは群れることを好まないため複数に囲まれることは少い。


 手こずらずに倒せれば比較的簡単にレベルを上げやすいモンスターであると言える。


 しかし、普通は四級冒険者であっても倒すのが容易ではないため、一体を相手している間にどんどんオーガが集まってしまい詰んでしまうこともあるらしい。


「来たぞ、オーガだ!」

 感知系のスキルを持つ冒険者がオーガの接近を知らせる。


「では、これから順番に1パーティずつオーガと戦ってもらいます。攻撃する際に魔導具を発動しながら攻撃すると魔法を覚えることもありますから試してみてください」


 ステータスを固定していないと魔力には限りがあるので継続して魔導具を使い続けることは出来ない。

 回数が減ると魔法を覚える可能性は低くなるが、今日覚えられれなくてもいずれ覚えることもあるかも知れないからね。今日に限らず続けてもらいたい。


「【重力グラビティ】」


 オーガが現れるやいなや動きを封じる。

 オーガは片膝をついて立ち上がれない。


「よし、行くぞ!」

「「「応っ!」」」


 一組目のパーティがオーガに襲いかかる。


 オーガの皮膚は固く、魔法にもある程度耐性がある。固く速く力強いモンスターであるため、シンプルに強い。弱点らしい弱点はないため地力が試されるモンスターと言える。


 皮は装備に使われる。魔力を通すと硬くなり魔法もある程度防いでくれるので高級素材として取引される。

 ダンジョン産のオーガは金棒を持っているのだが、材質は魔鉄なのでこれも金になる。


 動きを封じても直ぐに倒せる程オーガはヤワではないようでそこそこ手こずっていた。


「あ、もう一体来ましたね。2組目行ってください」


 一組目がオーガを倒しきれないうちにもう一体寄ってきた。

「【重力グラビティ】」


 母さんが動きを封じ、2組目に攻撃してもらう。


 二組目はオーガと相性がいいのか比較的短い時間で倒せていた。


 オーガは次々と寄ってきてくれるので全員がオーガを相手にするのはそう時間がかからなかった。

 無事に全員がレベルの壁を突破でき、喜びを分かち合っていたが、以降オーガの寄ってくるペースが明らかに早くなった。


 俺達はあくまで動きを封じるという役割に徹しているがそれなりに戦闘に貢献しているのでそこそこ経験値は得られているのではと思う。


 今のところ四組のパーティで戦っているが、オーガを倒すよりもオーガが寄ってくるペースの方が早く、順番待ちのオーガが出始めている。


「大将、ヤバいですよ。こんなに囲まれて、魔力が切れたら全滅しますよ」

「そうですね。さっさと倒してくれないとどんどん増えてきますよ。頑張ってください」


 俺の励ましも大して効果はないようで、殆どの冒険者は増え続けるオーガに恐怖を感じているようだった。


 暫くするとオーガウォーリアが現れた。

 オーガウォーリアは三級のモンスターだ。


「オーガウォーリアまで出やがった」

「ここでレアが出るのか」

「終わった」

「16階でレベルアップしようなんて無茶だったんだ。壁を越えたら逃げるべきだった」

「死にたくねぇ。俺は死にたくねえよ」

「もう、体力もねぇ、魔力も残り少ない」

「はあ、はあ、大将、どうするんですか!?」


 どうやら冒険者達は思ったより追い詰められていたようだ。

 そうか、ステータス固定してないとこうなるのか。ちょっと厳しくし過ぎたかも知れない。


「【固定】」


 ひとまずオーガ達を全て固定する。

「はい、全員集まってください」


 オーガウォーリアの出現とオーガ達に囲まれているという恐怖、加えて体力が限界に近いせいか冒険者は動こうとしない。


「集合!!!」

 ギルドマスターのマネをして声に魔力を込めて見た。


 全員がビクンとしてこちらを振り返ると直ぐに集まってきた。

 厳しくしすぎたかも知れないけどここは叱ってもいい場面だろう。


「オーガウォーリアぐらいでビビるな!! 今日は三級を目指すと言っただろ! 何体か三級を倒すということだ。ビビったやつはもう帰れ!!」


 冒険者達は萎縮して誰も何も言わない。

 当然帰る者はいないが、オーガウォーリアの迫力に当てられて恐怖が拭えないのか目に光がない。


 とは言えここで時間を無駄にするつもりはないので希望を持たせるとしますか。


「エリー、オーガを一体倒して」

「分かったわ。あんたら耳塞ぎなさい。【落雷サンダーボルト】」


 因みに俺はエリーに言われる前から耳を塞いでいた。

――ドガァァァァァァァン――


 その一発でオーガ一体が絶命する。


「母さんも別の魔法で倒してみて」

「いいわよ。【氷結フリージング】」


――パキィィィィィン――


 オーガ一体が氷に包まれた。

 直ぐに絶命した訳では無いが、直に死ぬのは明らかだった。


「見たか? 俺達はオーガくらいいつでも倒せる。倒さないのはお前等の経験値にするためだ。ビビるんじゃねぇ」

――はいっ――


「とは言え体力と魔力の消耗は何とかしないとな」


 俺は回復の魔石に魔力を込める。

 全員が緑の光が包まれた。


 多分、この魔法で解決できるんじゃないかと思うんだけど······。


「誰かステータスを確認してみてくれ」


 直ぐに全員がステータスを開いた。

「おお、これは······」

「体力と魔力が回復している!」

「スゲェ······これならイケる」


 お、やっぱりか。

 この魔法って、魔力の流れをみる限り注いだ魔力のうちの何割かが魔力や体力の補充に当てられてるんじゃないかと思ってたんだよね。ステータスのブレ幅の動きも少しおかしくなるし。

 だから怪我を治すだけじゃなく、魔力や体力も回復してるんじゃないかと思ってた。

 ステータスを【固定】してたから確かめようがなかったけど今回試してみて推測が正しかったことが証明された。


 そして本来なら魔力の充填に魔力を使えば、いつかは魔力が枯渇してしまうが【固定】のお陰でいくらでも魔力を充填できる。


 これはいい発見だった。


「じゃあ、問題ないな」

――はいっ!!――


「そしたらオーガウォーリア以外を倒せ。この魔法は発動し続けるから魔力を出し惜しみせず倒せよ」


――はいっ!!――


 体力と魔力の心配が無くなった冒険者達はオーガを倒し続け順調にレベルを上げていった。


 そこから一刻程オーガを倒し続けた。

 オーガウォーリアが3体溜まる頃には全員がレベルの壁に差し掛かっていた。


「全員集合!!」


 今度は全員がさっと集まってきた。


「よし、全員レベルの壁に差し掛かったようだし、これからオーガウォーリアを倒す。少し移動する」


 オーガウォーリア達から40歩程離れた所に移動する。


 1体だけ【固定】を解除してこちらに誘き寄せる。ある程度近寄ってきたらそこでまた固定する。

「よし、一組ずつオーガウォーリアを倒すぞ。一組分足りないがそこは心配するな。三級モンスターはまたしばらくしたら出るからな。で、倒す際にこの魔石を使ってもいいぞ。魔力を込めれば俺達が使っていた雷、氷、重力の魔法が使える。ただ、広範囲に無差別に魔法が発動するから味方も自分も魔法を食らうことになる。回復はし続けてやるから自爆覚悟で魔法を使う覚悟があるなら使うといい。可能性は低いが上手く行けば俺達が使っていた魔法を覚える可能性もある。使うか使わないかは好きにしていい」


「使います」

 一組目のパーティは使うことにしたようだ。


 それを聞いて他の冒険者達は距離を取ったが俺は回復させないといけないから離れなかった。


「大将は離れなくていいんですか?」

「ああ、俺は魔法を受け続けて耐性ができてるから心配しなくていい」


 その言葉を聞いて他の冒険者達も戻ってきた。中々根性はあるようだ。


――バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ――

「アギャギャギャギャ」

――バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ――

「オオオオオオオオ」

――バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ――

「ババビビビビビビバ」

――バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ――

「ガガガガガガガガガ」


 一組目は交代で魔法を発動させていた。一応マジックバッグも含めて貸し出して自由に使わせている。

 俺と一緒に回復の魔石に魔力を込めて使ったりもしていたが、スキルは覚えるだろうか?


 それなりに時間はかかったが、無事にオーガウォーリアを倒し、一組目はレベルの壁を越えた。


「うおおおおおおおおお」

「倒したあぁぁぁぁ!」

「やったぞオラァ」

「しゃああああああ」


 その結果、一人一つずつ魔法を覚えていた。二人が雷魔法を覚え、残りの二人が氷魔法と重力魔法を覚えていた。


 四人は大歓喜だった。


 オーガウォーリアも中々しぶとくそれなりに魔法を使っていたのが良かったのだろうか? 

 一つとは言え魔法を覚えられたのは良かったと思う。

 それとやはり戦闘に貢献した魔法に経験値がたくさん入っているように思う。


 次の組も当然魔法を覚えるべく魔石を使用した。次の組は一人一つに絞って魔法を使い続けた。おそらくパーティの役割に応じて覚える魔法を選んだのかも知れない。


 すると驚いたことに、レベルアップ後に狙った魔法をそれぞれ習得したのだ。


 三組目もそれに習いそれぞれが狙った魔法を取得して無事にレベルの壁を越えた。


 この間、母さんとエリーには次々と寄ってくるオーガを始末してもらっていた。

 二人の魔法の威力は正直俺よりも強い。

 今なら三級のモンスターもソロで倒せるのではないかと思う。


 オーガウォーリアを倒すのに時間がかかったせいかそう間を置くことなく宝箱が出た。


「大将、宝箱が出ました」

「マジで出たのか?」

「スゲェ、初めて見た」

「大将、早く開けて下さいよ!」


 当然、皆驚いた。

 前もって宝箱が出た時は俺の報酬とすることを伝えておいたので揉めはしなかった。


 中から出てきたのは杖だった。

 鑑定の魔導具を使ったら『石壁の杖』と表示された。


 使ってみると【石壁ストーンウォール】の魔法が使えた。文字通り注いだ魔力に応じて石の壁を出現する魔法だ。形状や大きさもある程度変えられるようだ。


 土属性系の魔法は今まで修得出来てなかったのでこれは普通に嬉しかった。


 ただ、この魔法は使い過ぎには気をつけないといけない。出現した石壁はすぐには消えなかったからだ。

 出し過ぎると身動きが取れなくなる。

 ダンジョンが吸収するのを待つか、収納するしかない。収納出来るため床と一体化しているわけではないことが分かった。その辺を考慮しないと石壁は倒れてしまうので使う時は形状を考慮しないといけない。


 これを見て四組目のリーダーが相談してきた。

「大将、こういうことって出来ますか?······」

「へぇ、面白いな。多分上手くいくと思う。やってみろよ」

「はい、ありがとうございます」


 前の三組はそれぞれ魔法を覚えることに成功したが、覚えたのはいずれも雷、氷、重力、回復のどれかだ。他の魔法も試しはしたが戦闘への貢献度が低いせいか修得は出来なかった。


 これは彼の発想の勝利かも知れない。

 上手く行けば悠久の皆もきっと喜ぶだろう。


 暫くして格上のモンスターが3体出現した。

 現れたのはファイアウルフ。体高は俺と同じくらいの巨狼だ。

 魔法を使ってくる三級モンスターに初めて遭遇した。


「【重力グラビティ】」

 取り敢えず動きを封じる。


「【石壁ストーンウォール】」

 3頭のファイアウルフを1頭ずつ隔離するように壁を出す。


 俺も何かあった時に割って入れるように近くで待機する。多分【魔法耐性】があるから火魔法にも幾分か耐えられるはずだ。


「【水操作ウォーターコントロール】」

 またいつでも火を消せるように水の塊を出しておく。


「気を付けろよ。魔法を使ってくるぞ」

「はい、大丈夫です。やってやりますよ!」

「よし、行って来い」


 四組目のリーダー、名前はバッジというらしい。バッジ達は派閥の中でも1番の古参でパーティ名は『悠久の炎』。

 パーティ名からしてギドさん達への憧れが見える。リーダーのバッジは火魔法の使い手だ。パーティの人数も5人でそれも悠久の剣と一緒だ。


 ギドさん達も次の派閥を担ってくれるパーティとして期待している。

 だが、ファイアウルフ相手に火魔法は相性が悪すぎる。それでも自信はあるようだ。

 

 パーティメンバーは雷、氷、重力、石壁と魔法を使っていく。そしてバッジ自身が選んだ魔法は空間魔法。

 マジックバッグを使った。


 中には俺が出した石壁が入っている。

 質量の大きな物を出し入れするとそれなりに魔力を消費してしまうが、今は魔力を気にせず使える。


――ズゴォォォォン――


 ファイアウルフの上に重石の様な形の石壁を出現させた。

 石壁は凄まじい衝突音と共に見事ファイアウルフを押し潰して仕留めてみせた。


「うおおおおおおおおおおおお、おっしゃああああああああああああ」


 悠久の炎の面々は皆喜んでいたが、バッジは一際喜んでいた。


「大将、空間魔法を覚えました!!」


 まぁ、この喜びようはそういうことだろうな。

 他の冒険者達も驚いている。


 バッジが元々魔法の使い手で素養があったのかも知れないが、空間魔法の貢献度を上げたことで覚えられたと考えることも出来る。

 これは今度試してみよう。


 残った2頭のファイアウルフは二組のパーティでそれぞれ倒してもらった。

 しかし、残念ながら誰もレベルは上がらず新たに魔法を覚えた人はいなかった。


 母さんとエリーもそれなりにオーガを倒し、経験値を得られたし、防具や武器の素材も大量に得られたので良しとしよう。


 最初の約束とは異なるが、報酬はオーガを一人一体。あとはファイアウルフ3体の売却金額を人数で割ることで皆了承してくれた。


 オーガは一体当たり金棒も売れば金貨20枚になる。十分な報酬になるのだ。

 他のオーガの素材は派閥のメンバーの防具と武器を作る素材、資金にしていいか尋ねたら了承してくれた。


 それぞれが満足する結果を得て帰路につくことが出来たのだった。

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