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第19話 殴り合い

 レベルアップした母さんとエリーのステータスはこうなった。


『サラ:レベル6

 HP:85

 体力:45  

 魔力:48

 筋力:42

 敏捷:38

 頑強:43

 知能:45

 感覚:51

 スキル∶【精密】、【物理耐性】、【空間魔法】、【火魔法】、【水魔法】、【光魔法】、【風魔法】、【魔力感知】、【魔力操作】、【雷魔法】、【重力魔法】、【氷魔法】、【雷耐性】、【身体強化】、【魔法耐性】、【毒耐性】、【回復魔法】

 称号∶【絶望を超えし者】』


『エリー:レベル16

 HP:188

 体力:74  

 魔力:86

 筋力:72

 敏捷:68

 頑強:75

 知能:82

 感覚:69

 スキル∶【鼓舞】、【物理耐性】、【空間魔法】、【火魔法】、【水魔法】、【光魔法】、【風魔法】、【魔力感知】、【魔力操作】、【雷魔法】、【重力魔法】、【氷魔法】、【雷耐性】、【身体強化】、【魔法耐性】、【毒耐性】、【回復魔法】

 称号∶【絶望を超えし者】』


 二人とも毒耐性と回復魔法を新たに修得していた。

 それは良かったのだが、ステータスの上がり幅が前回と比べて小さかった。


 いや、普通のレベルアップと比べれば相当上昇しているのだが、前回と比べるとどうしても幅が小さい。


「やっぱりもっと下に潜るしかないか」

「ま、元々そういう話だったしね」

「そうね。どんどん下に行っちゃいましょう」


 今は打ち上げも兼ねた豪勢な昼食を食べながら三人で話し合っているところだ。


 今回の二人のレベルアップでステータスを上げるには下の階層、それもかなり下に行く必要があると感じた。 

 どのくらい潜るかは報告がてら司祭様に相談して決めようと思っている


「でも、本当にサラさん若返りましたね。ビックリです」

「そうね。それほどでもあるかもね。おーっほっほっほ」


 母さんは上機嫌になりすぎて変なテンションになっている。


 レベルアップして、更に若々しくなったのもあるが、ステータスを【固定】する前に新しく覚えた回復魔法を試してみたのだ。

 すると髪がツヤツヤになり、肌がスベスベになった。正直俺も見違えるほどだった。


 多分、回復魔法を施術するだけで母さんは食べていけると思う。


 ステータスは想定よりも低かったが、下層へ向かう判断をしたのはこの回復魔法を二人が覚えたからだ。

 ダンジョンは下の階層に行くほどモンスターが強くなる。1〜3階は十級、3〜5階は九級、5〜8階は八級、8〜10階は七級、10〜13階は六級······と言った感じでギルドは目安を設けている。

 あくまでギルドが定めた目安であって、そのランクのモンスターが出現するというわけではない。


 例えばオークのランクは六級だが、15階に出現する。15階はギルドは四級・五級に定めている。これはオークを倒すには五級以上の実力がないと厳しいということでもある。実はオークはランク以上に強敵なのだ。


 では、モンスターのランクは何によって定められているかと言うと、そのモンスターを倒してレベルの壁を超えられるかどうかで決められている。

 オークで言うと、七級のレベル19の人がオークを倒すとレベルの壁を越えてレベル20になる。しかし、六級のレベル24の人がどれだけオークを倒してもレベルの壁を超えることは出来ないのだ。

 そのためオークは六級として定められている。


 相性もあるため冒険者にとって倒しやすいモンスターとそうでないモンスターはいるが、下の階層に行くほどモンスターが強くなるのは間違いない。


 また下の階層には罠も仕掛けられるようになる。その罠も下の階層に行くほど凶悪になっていくらしい。


 もしかしたら罠にかかってはぐれてしまうこともあるかもしれない。はぐれるだけならまだましで、俺の魔力が枯渇したり、死んでしまって二人の【固定】が外れる可能性もゼロではない。


 そんな時でも回復魔法があれば生存率は格段に上がるはずだ。


 俺がこんな心配をしているのも、俺達が目指しているのは20階。ザーレダンジョンの最終階層だからだ。


 勿論一気にそこまで行けるとは思っていないが、20階はギルドで二級・三級に定められている。最終階にはボスが存在し、そのボスのランクは二級だが、他は三級以下のモンスターしか出ない。

 つまり、今の段階でもボスに挑戦しなければ十分通用すると思われるのだ。


 二人のレベルアップで、分かったのは三級のモンスターを倒すとステータスにかけた【固定】が外れてしまうということだ。2回も続けば次もそうなる可能性は高い。


 より良いステータスを得るためにどうすればいいか、それは勿論レベルアップのときまでに沢山経験値を得ることだが、そのためには格上のモンスターを沢山倒す必要がある。

 少なくとも六級以上、出来れば五級以上のモンスターを倒したい。そうなると下層に挑戦する必要があるのだ。


 上層で宝箱だけゲットして格上のモンスターを倒さずに帰ることも出来るが、それだと俺のレベルアップがより遠のいてしまう。

 二人のステータスの向上や、俺のレベルアップ、安全性、色々考えて出した結論が15階以下の下層への挑戦だ。


◇翌日◇

「悪いね、シル」

「いえ、俺は全然構いませんよ」


 俺はギドさんに訓練場に呼び出された。

 呼び出されたと言うよりは、今日はエリーとギドさんが一緒にギルドに来ていて、ギドさんから「ちょっと訓練場に来てくれ」となった次第だ。


 聞かなくても理由は分かる。

 ギドさんはエリーを溺愛してるからな。


「いやぁ、まさかエリーがいつの間にか受付嬢を辞めてシルとパーティを組んでるとは思わなかった」

「すいません。何か成り行きでそうなっちゃいました」


「いや、いいんだ。シルとパーティを組むのはいい。僕はシルを信用しているからね。だが下層に挑むとなったら話は変わってくる。シルの実力を確かめさせてもらいたくてね」

「はい。いいですよ」


 こう言ってるが、本当はエリーに冒険者になってもらいたくないと思ってる人だからな。


「悪いが僕に勝てなかったら下層に挑むのは諦めてくれ」

「勿論です」


「その代わり、シルが勝ったら僕が君のパーティに加わろう」

「いや、それは別に······」


 何でそうなる?


 断ろうと思ったが、それも悪くないかも知れない。俺もギドさんは信頼できるからな。


「分かりました。それでお願いします」


 まぁ、ギドさんにしてみれば勝っても負けてもいい勝負になったわけだ。


 あれ?

 でも、ギドさんが抜けてもパーティメンバーはいいんだろうか?


 うん。絶対にいいわけ無い。

 これは負けるとは思ってないな?


「勿論手加減はする。僕はスキルを使わないから安心してくれ」


 飛剣のギド。

 二つ名にされるくらいギドさんのスキルは有名だ。

 その名の通りギドさんの剣閃は飛ぶ。

 物理系のスキルだが、遠距離でも放てるため四級の実力者になった。


 下手したら俺の【固定】を貫通してくるかもしれない。

 使われないならそっちのほうが助かる。手の内もバラさないで済むし。


「えっと、俺もスキルを使わないって言えたらカッコ良かったんですけど、そういう訳にもいかなくて······」


 【固定】を外すわけにはいかないからな。


「いいよいいよ。気にしなくて。じゃんじゃん使ってくれていいから。エリーがね、シルは僕よりも強いって言うからさ。それが本当かどうかも気になってるんだ」


 あぁ、なるほどね。


 エリーの方を見ると気不味そうに目を逸らして、吹けもしない口笛を吹いている。


「そうですか。でも、あんまり手の内は晒したくないんで攻撃にスキルは使いません。コイツで勝負します」


 グッと握った拳を持ち上げる。


「いいねぇ、そういうの嫌いじゃないよ。シルも良い男になったね。その自信······本当にレベル2なの?」

「はい、レベル2です。でも俺勝ちますよ?」


「僕のレベル······34なんだけどね。まいいや、始めようか」


 スキルはレベル差を覆す事がある。

 だからレベルが低いからと言って相手を侮ることは出来ない。


 でも、レベルが低い相手がスキルを使わないと言うなら、勝敗は明らかだ。

 ギドさんもそう思ったのかもしれない。


 ギドさんのステータスの基準値が高いのか低いのかは分からないが、多分総合的には俺よりも上だと思う。


 でも、ごめんねギドさん。

 ステータス【固定】してるから俺負けないと思うんだよね。


「よし、お互い取り決めは守れよ。じゃ、始め」

 突然始まったギドさんとの決闘だが、審判はギルドマスターが行ってくれている。


 別に因縁があるわけでもないし、決着がついた後も揉めないと思ってか、開始の合図は適当だった。


「さぁ、シル。来い」


 どうやら本当に実力を見てくれるようで受けてくれるようだ。

 でも決闘とは言え何の恨みもないしやりにくいんだよなぁ。


 俺はスタスタと間合いを詰めていく。

 

「ええっと、やっぱりギドさんは殴りにくいんで、一発ずつ交互に殴って先に立てなくなるか音を上げた方の負けってルールにしませんか? 拳を避けても負けです」

「へぇ、面白いね。いいよ。先手は譲る」


 ギドさんも笑っているが、横でギルドマスターもニマニマしている。


「行きます!」


 よし、これで少しやりやすくなったな。

 思いっきりいこう。


――ボゴッ――

「ぐっ」


 思いっきり鳩尾に撃ち込んだ。


「シルって本当にレベル2かい?」

「そうですね。確かにレベル2です」

 余程驚いたのかまた同じ質問をしてきた。


「正直予想外に強くて、僕としては合格でいいかな」

「ありがとうございます」

 ギドさん、判断が早くて助かります。


「でも負けたら移籍する約束しちゃったし······今更決闘を無かったことには出来ないよね?」

「俺はどっちでも良いですよ」


「無理だな。決闘を穢すのは許さん。それじゃ面白くないだろ?」


 おいおいギルドマスター、本音が漏れてるぞ?


「バーンズさん?」

「シルフィスはどっちでもいいと言ったんだぞ? 決闘をなかったことにしても、続けても不都合はないと言ってるんだ。十級のガキが四級のお前に対してだぞ? 大人なのはいいが少し大人しすぎじゃねえか?」


「まぁ、僕としてもシルに嫌われたくないんだけど······バーンズさんにここまで言われたら引けないか」

「俺は構いませんよ。仕方ない事情があって防御にはスキルを使ってるんで遠慮なくどうぞ。恨みっこなしでやりましょう」


 ギドさんはきっと俺に対して申し訳なく思ってるんだろうな。自分の方が圧倒的にレベルが上だから。


 その気持はよく分かる。

 俺もステータス【固定】してるから申し訳ないんだよね。


「そう言ってもらえると助かるよ。じゃあ僕も遠慮なく行かせてもらう。······フンッ」


――ボガッ――

「ぐはっ」


 いってぇ。

 拳が鳩尾に刺さり突き上げられる。


 あまりの衝撃にふっ飛ばされた。

 速いし、重い。


 ははっ、流石ギドさんだ。

 

「おいおい、今のをくらって立てる······だけじゃない。笑うのかい?」


 起き上がりゆっくりと距離を詰める。


「いやぁ、いいのもらいました。次は俺ですね」

「はは、本当に遠慮は要らないようだ」


――ボゴッ――


 また鳩尾に突き入れる。


 俺のパンチは多分そこそこ効いてるはずだ。だがあくまでそこそこ。この勝負、結構時間がかかるかもしれない。


「シル。やるじゃないか」


――ボガッ――


「そっちこそ」


――ボゴッ――


「シルはちょっと遠慮してもいいんじゃないか?」


――ボガッ――


「下層のモンスターに通用するってことを見てもらわないといけないんで」


――ボゴッ――


「それはもう分かったって言ってるだろ」


――ボガッ――


「じゃあ、降参してくださいよ」


――ボゴッ――


「こっちにも面子があってね」


――ボガッ――


·········

······

···


「へばってきてますよ」


――ボゴッ――


「シルだけスキル使って······ズルいぞ」


――ボガッ――


「最初に了承したでしょ」


――ボゴッ――


「スキル強すぎじゃないか?」


――ボガッ――


 何発殴ったか分からないけど流石のギドさんも目に見えて弱ってきていた。


 ギドさんも明らかに俺がダメージを負ってないのは分かってるはずだ。


 パンチも明らかに弱くなってきたし、下手したら拳も痛めてるかもしれない。


「ギルドマスター。ちょっとこっちに来てもらえますか?」

「ん? どうした?」


「ちょっとここに立ってください」

「ふむ」


 ギドさんもギルドマスターも何をするんだという目で俺を見ている。


「ステータスオープン」


「なっ」

「おいおい、これは聞いてねぇぞ」


 ギドさんにステータスを見せる。

 俺のHPも体力も減ってない事を見てもらいたかった。


 ギルドマスターには観客に俺のステータスが見えないように体で隠してもらったのだが、当然ギルドマスターも見るよね。


 まぁ、ギルドマスターに見られても構わないから出したわけだけど、俺のステータスの高さとスキルの多さに驚いているようだ。


「見ての通り、ギドさんの攻撃をくらってもHPも減ってませんし体力も減ってません。途中俺もノリノリで殴ってましたけど、これ以上は忍びないので降参してくれませんか?」


「はははっ、気を遣われたか。参った。降参だ」


「勝者シルフィス!」


――Booooooooooooooooo――


 微妙な決着に観客は納得がいってないようだが、そんな事はどうでもいい。


 ギドさんがパーティに入ってくれるのはかなりいいぞ。


「シル、一ついいかい?」

「何ですか?」


「僕は君のステータスを見て降参したけど、諦めて降参したわけじゃない。君がどんな冒険者になるのか一緒に見てみたくなったから降参したんだ。僕をパーティに入れてくれるかい?」


 そう言ってギドさんは手を差し出してきた。


 その手をぐっと握る。


「はい、歓迎します」


 試合が終わったら恨みっこ無し。

 その言葉の通りハグをして、バンバンと背中をたたき合い、互いに健闘を称えたのだった。

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