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 結局ラーラの迎えは来なかった。

 ガストからの返事もなかった。

 追い出すわけにもいかず、引き続き調理場で洗い物と雑用をしてもらっている。

 本人はウエイトレスになりたいらしいが、とてもではないがまだまだ貴族への給仕はさせられない。

 あの方言もどうにかしないとなので、本音を言うとラーラに給仕は無理だと思う。

 そんな時、父さん経由でモンテベルデ家の貸し切りの予約が入った。


「あなた・・・・咎められないかしら・・・・」

 母さんの顔色は頗る悪い。

「うむ。大公様が後ろ盾になって下さっているから、大丈夫だとは思うが・・・・」

 父さんとしては色々とモンテベルデ家に対して申し訳なさを感じている様で、元主家が今人気の『フローリストガーデン 光』に貸し切り予約を割り込ませて来たら、断るなんて頭を過ぎりもしなかったんだろう。

 モンテベルデ家の方は父や母が辞職した事や私が魔法スキル持ちなのを隠した事に対して思う所があったのかどうかは知らないけれど、ウチの店へ予約を捻じ込むのに躊躇はなかった。

 まぁ、一応私のスキルはポンタ村で鑑定の儀を受けて判明したってことにしているんだけどね。


 夜は2日に1度の割合でしか予約を受けていなかったんだけど、モンテベルデ家の予約を受けることによって3日連続で夜の営業となる。


「当日、アウレリアを大公様の館から出さなければ問題は無いと思う・・・・」

「そうねぇ。アウレリアが伯爵家の人たちと直接会わなければ何とかなるかも・・・・」

 もうモンテベルデ家の使用人ではないので、元使用人の子供に過ぎない私を見かけたとしても向こうとしても何も言えないんだろうけど、今回の予約の様に強く言われたら断りづらいので、私を隠す事により要らぬゴタゴタを避けるに限る。


 両親のそんなやり取りの末、モンテベルデ家の貸し切りの日となり、私はしばらく振りに大公家の屋敷にお邪魔している。

 学園への入学試験対策と称しお泊り予定だ。まぁ、これまでの復習勉強が中心だけどね。


 大公館の家族が使う居間の暖炉の前で大公様がお酒を飲みながら「お前は非常に優秀な学生だと村の教師から聞いている」と私に話し掛けた。

「パルマン神父の事ですか?」これは初耳だ。

「名前は知らんが、家の執事がお前の事を調べた時そう聞いて来たそうだ。ランミスからも優秀だと聞いているしな。だから普通なら数か月かかる受験勉強が数週間で済んでしまったしな」

 さすが大公様、援助する前に人物についての調査もキチンとしてるんだなというのが私の感想だった。

 私の事を調べるなんて!と怒る気持ちはこれっぽちもなかった。

 大公様は他人の魔力を感知できるので、珍しい魔力や大量の魔力持ちの平民や下級貴族を援助為慣(しな)れているのだ。

 もちろん、今までも紆余曲折があったのだと簡単に想像がつく。

 だって、平民の子が学校へ通う様になったのはここ数年の事だし、読み書き計算が出来ず躾のなってない平民を魔力が珍しいというだけで援助すれば、突然の出世に浮かれて色んな事をやらかす輩もいただろうし、魔力はあっても勉強する意欲がない者だっていただろうし、大公様側が事前に色々調べるのは当たり前の事だとちょっと考えたら分かる。


「ほう、お前の事を調べたというのに怒らないんだな」

「はい」

「何故だ?」という大公様の問に、私は素直に答えた。


「うむ。村の教師が言った通りだったな。地頭が良いだけでなく分別がある。お前は磨けば磨くだけ輝く原石だな」

 お礼を言うのも変なので、深々と頭を下げるだけに留めておいた。

 それを見て大公様は満足気に頷いた。


「今日と明日、教師を複数用意しておいた。しっかり勉強して良い成績で学園に入学する様に」という入学するだけでなく、良い成績でという大きな宿題を大公様から言い渡された。


 儀典や貴族家についてはいつものランミス先生だ。 

 王都に戻った当初、この科目が一番難しく退屈な授業になるだろうなぁって思ってた。

 だって国内の主な貴族家の名前や家族構成、姻戚関係、領地の特産品や弱点、そんな事を覚えるのは大変そうだもの。


「顔も見た事のない貴族の名前や家族構成を覚えるのは難しい。だが!」

 おじいさん先生のランミスは、ニヤリと笑った。

「井戸端会議の様にして覚えれば簡単、簡単」と宣った。


 例えば私も良く知っているモンテベルデ伯爵家については、魔法スキルを持つ子供が一人もいない。

 なら、どうなるか。

 その問題を解決するにはどうすれば良いか。

 もし、長男に嫁を娶らせて孫に期待するならば、どこの貴族家の娘が理想的かなどを貴族年鑑のページを繰りながら、おもしろおかしく話してくれるランミス先生はパルマン神父のカテキズムに通ずるものがあり、飽きることなんて一瞬たりともなかった。


 ワイドショーの様なノリで、各貴族家の事を滔々と話してくれるのだ。

 楽しすぎた!

 もちろん各家が必死で隠している秘密なんかは知る術もないが、一般的な情報、例えば年頃の子供がいる家や、行き遅れがいる家、仕事で大失敗した家、先祖が何かをやらかした家とかは、ランミス先生の授業の良い餌食になっていた。

 この世界の先生は俳優的な才能がなければ仕事にありつけないのかもしれない・・・・。

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― 新着の感想 ―
ランミス先生みたいな歴史の先生が居たなぁ。 突然、『信長は家康に電話をかけてこう言いました。』とか始まって笑 楽しい授業はよく覚えているものですね!
まだ教師って職業が金持ちの子弟メインだったろうから興味を持たせてちゃんと教え込むためのプロ意識が高いんだろう。そしてそのノウハウを多分教会も流用してるとかもともと説法に必要とかで話術はみんな上手いのか…
ランミスは 良キャラね
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