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「ねぇ、サマンサ。それ、私がこの前の休みに買ったスカートじゃない?」
「違うよ。私がこの前の休み買ったやつだよ」
「いやぁ、嘘だぁ。だって、サマンサが買ったのは柄が黄色で、それは私が買ったオレンジ色じゃないの」
「違うよ。これは黄色だよ」
「何言ってるのよ」
トム伯父さんのところのサブリナとサマンサっていつも喧嘩しているなぁ・・・・。
何でか分からないけど、二人の洋服の趣味とかサイズも全く同じなんだから、別々に買わずに1枚を二人で使いまわしすれば、もう1枚全く別のスカートが買えて着られる洋服の種類が増えるのにね。
「うるさいっ!」
あ、とうとうトム伯父さんの雷が落ちたよ。
「お前らはいつもいつも引っ付いては喧嘩し、喧嘩しては引っ付いて、よく飽きないな。とにかくお前らは五月蠅いんだよ」
トム伯父さんの雷にサブリナたち以外は全員頷いている。
本当にこの二人は五月蠅いんだよね。
それに比べスティーブ伯父さんのところのパンクは無口。
よくクロークで仕事が出来るなと思うくらい無口だよ。
休みの日も部屋に籠って何かしているみたいで、王都見学すらしてないみたい・・・・。
それぞれが我が道を行くって性格の従姉たちは学校へは通っていない。
だって大公様が私の受験のために手配して下さったランミス先生がお店に来て夜教えてくれるので学校へ行く必要がないんだよね。
大人たちや孤児院出身のハムたちも一緒に店で勉強している。つまり私と父さん以外はってことね。
ハム、ドム、ナスカの孤児院組の3人は互いに仲良しだけど、彼らと従姉たちは何故か馴染めないみたいなんだよね。
私とは結構お話するのにね。
孤児院組は初月給が出た時、それぞれ何かを買って孤児院に寄付したみたいで、見た目は子供だけど中身は結構大人なんだよね。
まぁ、ここでは成人年齢が10歳という事なので、10歳以上の彼らはもう大人ではあるんだけどね。
幼い時から苦労しているからか、人間が出来ているというか・・・・。
あ、いや、従姉妹たちの人間が出来ていないってことじゃないんだよ。おほほほほ。
今日は週一回の定休日。
孤児院組は孤児院へ奉仕活動へ行く予定なのだが、トム伯父さんの一言で顔色が変わってしまった。
だって伯父さんったら「お前らは少しこいつらを見習え!お前らも今日は孤児院で奉仕活動して来い」なんて言うから、我儘いっぱいの従姉たちを押し付けられた形になったからだ。
孤児院には幼い子たちも結構いるだろうし、やんちゃな子たちもいるだろう。
忍耐力という言葉とは無縁の従姉たちがちゃんと奉仕活動が出来るとは思えない・・・・。
ハムたちもそう思ったのだろう。
口が「え?」の形に開いたまま声を発する事もなく固まっていたから。
「「ええええーーー!父さん、それは勘弁してーーー」」
サマンサとサブリナが同時に叫んだ。
でも、恐らくだけど、その台詞はハムたちの方が言いたかったと思うよ・・・・。
結局、パンクや私も含めてザ・従姉ズもハムたちと一緒に孤児院へ行く事になった。
私はストレージにじゃがいもとか鶏肉とかを少し入れてみんなと王都の反対側にある孤児院へ向けてトボトボ歩く。
へぇ~、平民街はこんな感じなんだ。
レンガや石造りの建物がなくなり、平屋が多くなった。
石畳の道が途切れてからはずっと土を踏み固めた道になった。
大聖堂あたりにはお店がたくさんあったけど、この辺りはお店がなくって、みんな筵を直に道に広げ、その上に商品を並べている。
あ、あそこの公園、人工的なのかな?小川が流れてるけど、汚水も混ざっているみたい。
色が茶色と灰色の中間の色になってる・・・・。
臭いは言わずもがなだよね。
あああ、サマンサが大きく顔を顰めて、小川から離れたな。
でも、あそこ、この辺の主婦だと思うけど鍋にその水を汲んでいるんだから、多分その水で料理をするつもりなんだと思うよ。とっても不衛生だとは思うけどね。
あ、やっぱりあの主婦さん、サマンサをすんごく睨んでる。
そりゃそうだよね。自分たちが飲み食いするのに使ってる水をあからさまに嫌うって、お金持ち地区から来てるって宣伝している様なもんだよね。
折角みんな、トラブルを避けるため服はヨレヨレのをワザと着て来たのに、これって危なくないのかな?
私達の後ろから付いて来ているトム伯父さんが、サマンサの右耳をぎゅっと掴んじゃった。
「痛い!痛い!」
サマンサの大きな声で、辺りの人の耳目を集めちゃったよ。
トム伯父さん、やっちまったな。
平民街の住民の耳目を集めたまま、私たちは伯父さんに家畜小屋の鶏の様に追い立てられて孤児院に着いた。
はてさて、サブリナたちは孤児院でちゃんと奉仕活動が出来るかな?




