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給仕の方は、母さんが皆に教えている。
モンテベルデ家でパーラーメイドをしていたので、お茶の子さいさいだ。
ただ、フェイ伯母さんもトム伯父さんところの2姉妹も大衆向けの店でしか働いた事がないので、お貴族様相手では不安だ。
料理の出し方や、口の利き方、それを母さんが徹底的に教え込んでいる最中だ。
兎に角、ちゃんと慣れるまでは自分で受け答えせず、都度母さんを呼ぶ様にと繰り返し教えているので、教育はこれから時間を掛けてじっくりやるのだろう。
父さんは庭と温室の手入れをしてくれている。
庭が結構広いのと温室まであるので、ハムに続いて孤児院出身の男の子1人を手伝いとして新たに雇う事にした。
痩せて背の低いハムと、同じく痩せているけど少し筋肉のついているドム。
身元保証人のいない孤児院の子を雇うのはどうか?と悩んだけど、試しに雇ったハムがとても良い子だったので、同じ孤児院のドムも雇ったのだ。
もちろんドムのスキルも園芸だ。
彼らの住居はウチの半地下で、見習いなので給料はスズメの涙だが、衣食住が賄われるので本人たちは喜んでいる。
高価な植物のある温室にはまだ入れる事はできないが、庭では父さんに教わりながら、朝から晩までちゃんと働いてくれている。
それとは別に裏庭で作っている畑の面倒も見てもらっている。
安全で新鮮な野菜はサラダに必要不可欠なので、この畑の重要性は高いのだ。
「ここの食事は本当に旨い!」と力説してくれたのは、初めてウチの賄いを食べた時のドムだ。
「自分だけの部屋を貰えたっす」と喜んでいるのはハムだ。
孤児院では大部屋に雑魚寝だったらしく、自分だけの部屋というだけで贅沢と感じている様だ。
「体が資本の仕事だから、遠慮せずに食え」といつも父さんがみんなに遠慮せずにお腹いっぱい食べる様に気を配ってくれるので、ドムもハムもここへ来たばかりの時と比べ直ぐにふっくらとし始めたし、もしかしたら背も伸びているのかもしれない。
スティーブ伯父さんのところのパンクは彼らより少しだけ年下だが、孤児院出ということが引っかかるのか今の所二人とまだ会話らしい会話はしていない様だった。
一緒に生活して働くのだから、仲良くしてくれるといいなぁと思っている。
パンクはクロークを担当してもらう心算なので、ハムたちと直接関る事は少ないかもしれないけど・・・・。
「お嬢様。店長からシナモンを持って来る様に言われたっす」と、木のバスケットに入ったシナモンを調理場に持って来てくれたハムは、調理場に来る度に目がキラキラしていて、一旦調理場に入るとなかなか外へ出ない。
お腹が空いているのかと思ったが、「いえ、ここにある調理器具が好きなんです」なんて言って、あっちこっちの道具を嬉しそうに見つめている。
冷蔵庫に冷凍庫、魔石で火が点く大型コンロやオーブン、様々な大きさと形の鍋やフライパン、お玉やトングが並ぶ調理場を嬉しそうに見つめるハム。
実は地球の調理器具を完全再現したかったのだけれど、電気で動いていたものをそのまま再現しても電気が無いので使えない。
元々この世界にあった魔石で動く道具をスキルで改造したり、手動の道具をスキルで作り出しているので、私にとってはまだ満足できる出来ではないのだけれど、こちらの人間にしたら最先端技術に見えるらしい。
冷蔵庫や冷凍庫はこちらの世界で売っている高価なモノを大公様の伝手で購入。
バーに設置している小さ目の冷蔵庫と冷凍庫も合わせるととんでもない金額になったけど、あるだけで料理の幅が広がるので絶対に必要な物だ。
オーブンは熊のまどろみ亭で天火を設置してくれた業者に頼んだが、マノロ伯父さんの所とは違い薪ではなく魔石で加熱する最新式を作ってもらった。
オーブンに関してはそれだけでなく、スキルで作ったガラス扉を付け替えたり、温度計を付けたりと魔改造を施している。
フライヤーも既存の魔石タイプの調理台にスキルでフライヤー部分や、温度計、タイマーを付け加えた。
ミンサーもミキサーもスキルで作ったけど、ハンドルを回して使う手動タイプだ。
壁にある棚には全てシンボルカラーの紫のラインの入ったいろんな食器やカトラリーがあるので、私が見ていても楽しい。
家電タイプの調理器具については、いずれスキルで魔石を使った調理器具を作り出せる様にならないととは思っているのだが、とりあえず今はやり方が分からない・・・・。
ハムに関しては、そんなに調理器具や食器が好きなら調理場で働いてもらうというのもありかと思ったけど、ただ単に機械が好きで料理は食べる事はしても作る事は苦手らしいとの事。
それに彼のスキルは『園芸』なので、やはり庭いじりをしてもらった方が建設的だ。
徐々に店員も増え、夫々の研修が終わる頃、頼んでいた洋装店からみんなの制服が届いた。




