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「少しだけ泡立てた卵白と塩を混ぜて、こうやって魚や肉の周りを覆って行きます」
ウチの調理人であるスティーブ伯父さん、トム伯父さん、マルタ伯母さんが無言で頷いている。
「塩を塗し始めると、素材に塩が浸み込んでいくので、直ぐに焼いて下さい」
塩釜焼きの作り方を教えながら、注意点を教えて行く。
マルタ伯母さんは以前働いてた庶民的な大型食堂でトム伯父さんと知り合い、職場結婚したらしい。
どっしりした腰の押しの強そうな女性だけど、裏表がなさそうな見るからに肝っ玉母さんだ。
前の店では、スープを作る担当だったらしい。
だからウチでもスープを担当してもらう事にした。
ただ、スープと言っても今までは灰汁取りもした事が無いし、ただ具材を切って煮込んで味付けをするだけだった様で、ポタージュの作り方を教えるのに骨が折れた。
でも、こんな5歳児の言う事も真剣に聞いてくれる。
彼らが王都に着いた夜に出した料理を全て私が一人で作ったと聞いてからは、何かキラキラした目で私を見て来る様になった気がする。
トム伯父さんは兄であるスティーブ伯父さんに頭が上がらないみたいで、私や父さんから何かを言うより、スティーブ伯父さんを介した方が話が早い。
う~む。
私と父さんが雇い主なんだけどなぁ。
年齢や性別が気になるって感じなのかなぁ?
でもこれは早急に何とかしないと指示系統が複雑になり過ぎて問題になると思う。
まぁ、そこのところは父さんに任せるしかないんだけどね。
トム伯父さんはマルタ伯母さんと働いていたお店で肉料理を担当していたらしい。
肉料理と言ってもステーキが殆どだけど、火加減に関しては流石という感じだ。
試しに焼いてもらったステーキは丁度良い焼き加減だった。
話を聞いたら伯父さんたちの店は薄利多売な営業スタイルらしく、ガランとした広場の様な所にテントの布を屋根の様にして、たくさんのテーブルと椅子を並べただけの店らしい。
肉担当だけでも3人で対処するくらいの客の入りだけれど、日雇い労働者でも払えるくらいの安い定食なので、給金も雀の涙だったらしい。
マルタ伯母さんとトム伯父さん二人が揃えば普通の定食屋なら自営できると思うんだけど、ゴンスンデも大都市なので地代が高くて、その安い賃金では伯母さんや給仕として同じ店で働いていた娘2人の給金を合わせても自分たちの店を持つ事ができなかったらしい。
スティーブ伯父さんもゴンスンデの別の宿屋の食堂で働いていたらしい。
宿屋客が主だから、朝早くから朝食を用意し、夜も遅くまで働くのには慣れているらしい。
小さな宿屋だったらしく、調理人はスティーブ伯父さんと宿屋の主だけだったらしい。
なのでオールマイティに何でも作れると言ってもスープとステーキだけどね。
弟である父さんの下で働く事に拘りは無いらしく、どちらかというとこんな綺麗な館に住まわせてもらえてありがたいと良く言っている。
三人共、ここで教えられる料理は今までの料理と全然違うため、とても戸惑っているみたいだけれど、賄いで出される料理は美味しいと思うらしく、貪欲に技術を盗もうとしてくれている。
まぁ、技術を盗まれても私のスキルで作った調理器具が無ければ作るの難しいかもだけど・・・・。
ウチのランチコースメニューはいろんなドレッシングで食べるサラダ、スープはコンソメとポタージュの二種類から選択、メインは塩釜焼きやグラタン、アクアパッツァ、ローストビーフ、から揚げのいずれか。そしてデザートというラインナップだ。
もちろんパンは焼き立てのふわふわ白パンだし、デザートもウチで作ったモノになる。
食事中の飲み物はワインか、フレッシュジュースかお水。
ただしお水はスキルで作りだした浄水器を通し、一度沸騰させた湯冷ましでそれを冷蔵庫に冷やしてある。
最初はお水に温室に植えてある檸檬を入れようかとも思ったのだけれど、それだととてつもなく高価なお水になっちゃうので諦めたのだ。
あまり、メニューを増やしても対応できないので、これだけに絞ったのだ。
今日は、その中の塩釜焼きを教えている。
昨日は、ローストビーフだった。
みんなで作った物を夜一緒に食べたが、とてもウケが良かった。
給仕する皆も味を知っていないと、お客様に説明できないからお客に出す料理を食べる事は大事なのだ。
さて、調理の方がそこそこ出来る様になったら次は給仕だね。




