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「では、みんな揃ったな。まず一番大切な事は、この店はアウレリアを後見してくれている大公様の出資で開業する事になっている。だから細かな事は、私よりアウレリアの方が何かと詳しいので、家の娘が説明をする。が、アウレリアが説明を始める前に、私から一つだけ説明したい。この店はアウレリアのスキルで成り立っている」
父さんは二家族全員の顔を順番に確認して徐に続けた。
「アウレリアは料理魔法という魔法スキルを持っている」
「ええ!?魔法スキルぅ?」
「トム兄さん、まだ説明中なので発言は控えて」
「わ、わかった」弟である父さんからすかさず指摘され、トム伯父さんはすぐに黙った。
「料理魔法という魔法も、大公様でさえ初めて聞いたそうだ。とても珍しい魔法らしい」
「えええ!?」
「兄さん・・・・」
「あ、いや、すまん。だけど、魔法スキル持ちでもすごいのに、しかも珍しい魔法スキルと聞いちゃぁ驚くだろうがぁ」
「まぁ、そうなんだが・・・・。で、みんなにアウレリアの特異性について説明したのは、この店はアウレリアのスキルで出来ていて、他の店ではない道具や食材がてんこ盛りなのでそれに慣れてもらう必要があるということと、大公様よりできるだけアウレリアのスキルについては外に漏らさない様にと言われているからだ。最初にこの子のスキルについて説明しないと何が特別なのか分からず、あちらこちらに漏れてしまっても困るから説明させてもらった」と、父さんがまた私の頭を撫でた。
「「「ごくり」」」
みんなが固唾をのんだ。
私は一歩前に出て、みんなの視線を父さんから自分に集めた。
「こんにちは。ギジェルモとレティシアの娘のアウレリアです。もうすぐ6歳になります。先日までポンタ村のマノロ伯父さんの所で料理の修行をしていました。その時、『熊のまどろみ亭』でお食事をされた大公様が、私の魔法スキルに気付かれ、恐れ多くも学園への入学にお力添えを頂く事になりました。王都に戻るにあたって両親と一緒に暮らせる様、大公様にこの物件を購入して頂き、私たちに払い下げして頂きました。と言っても、まだ名義は大公様で、父さんたちは毎月利益の中から決まった額のお金を返して、最終的には自分たちの資産にする予定なので、本当の意味ではまだ大公様所有のお店ということになります」
「「「ごくり」」」
「で、私の魔法スキルは私自身もまだ良く分かっていません。入学試験に合格すれば通う事になっている学園で色々学ぶ予定です。で、今出来ると確認できているのが、食材そのものやその元となる植物の種を呼び出したり、調理する器具を作る事がある程度できると言う事です。なので店の中のモノについては、調理器具も食材も私のスキルが関係していると思って頂いて結構です。言い換えれば、この店がどんな方法で調理器具や食材を手に入れているかを他に漏らさないで頂きたいと言う事です」
一気に言い終えて皆の顔を見回すと、一様に緊張している様子。
「私のスキルに関しては大公様から秘匿する様にと言われているので、これに反すると相応の罰が下ると思って下さいね」
大人から子供まで家の親戚は全員無言で頭を縦に振っている。
ちゃんと釘を刺したので、次はその緊張を解す為に、「大事な話は以上です。では、これからみなさんの寝室と、1階の調理場と店舗、そして半地下の施設、最後に温室を案内します。では、ここから一番近い寝室へ行きましょう」と言うと、二家族がゾロゾロと背の低い5歳の女の子の後ろに続いた。




