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 王都の中に教会はいくつかあるが、大聖堂は一つだけで、モンテベルデ伯爵家から3つ離れた区画にある。

 司教区の中心となる教会であり、司教が常在しているのだ。

 当然、国の中で一番大きな教会で、貴族街と平民地区の中間にあり、伯爵筋の話によると、天井近くに王家の方々のみが入室を許された小さな礼拝堂があるらしい。

 どうして小さいかというと、そこから下を見れば、1階の大部分を見渡すことが出来るので、平民に知られない様に観察するために小さな礼拝堂にしたとのこと。


 もちろん平民である私は1階の部分で鑑定の儀を受けるのだが、1階は祭壇と信者が座る椅子や、壁にズラッと神々の像が並んでいるだけだ。

 ステンドグラスくらいあったら華やかさが出るのだろうが、この世界ではまだ無いそうだ。

 どちらかというと質素な印象なんだけど、天井から吊るされた大きな香炉が薄く煙を吐きながら右に左に揺らされている様は圧巻だった。

 香炉の中身は殺虫剤になる薬草らしい。

 こうやって不特定多数が集まる所では、伝染病が発生する可能性があるので、平民も入れる1階はこの香炉がまき散らす煙が薄く広がっている。

 それもこれもお風呂という文化がないせいだ。衛生状態がすこぶる悪いのだ。

 まぁ、煙たいという程ではないのでその点は問題ではないのだけれど、殺虫剤独特の臭いがするので、そっちの方が気になる感じだ。


 5歳の子供が受ける鑑定の儀は、教会の仕事が少ない冬の間に行うのが通例だ。

 もちろん、貴族の子供の中には、わざわざ自分の子供だけの為に儀式を行ってもらう事もあるので冬とは限らないが、平民の子は冬の週末、朝8時から纏めて儀式を受ける。

 親の仕事の都合なんかも考えられていて、冬の間の週末であれば、どの週末を選んでも問題はない。

 でも、子供たちもその親たちも、どんなスキルを授かるのか早く知りたいので、かなりの家族が冬の初めに教会に殺到するらしい。


 今朝は冬も終わりに近い週末なので、教会には5歳になった子供と、その親たちが数十名いるものの、冬の初めの週末に比べればかなり寂しい人数だと母さんが言っていた。

 私達が冬のこんな時期に鑑定の儀を受けたのには訳がある。

 伯爵家の人たちが全員、領地へ戻られるのを待っていたのだ。


 伯爵家の人たちが王都の館にいるのは、社交界が華やかな春なのだ。

 なので夏には伯爵と側室様たちは国の北西にある領地に戻っているのだが、王都の学校に通っている長男のヘルマン様が寮に入っていたので、奥様は王都に残っていたのだ。

 先日、漸く学校も冬休みに入り、お二人とも領地へ移動されたのだ。

 今日はお二人が王都を出立されてから最初の週末なのだ。


 大聖堂は初めて来たので、キョロキョロと周りを見ていると、金縁の白のトーガを着た司祭が黒いトーガを着た見習い2名を連れて礼拝堂に入って来た。

 なんかローマ帝国の人たちが着ていた服に似ている。

 司祭の歩みに合わせて「チリンチリン」と手に持ったベルを鳴らしているのは、見習いの一人だ。


「これより鑑定の儀を始める。最前列右に座っている子から順番に祭壇前まで(いで)よ」

 司祭様の良く通る声がピリっとした雰囲気を醸し出した。


 今日、最初の子供が親から握らされた銀貨1枚を大事そうに握って祭壇手前に座っている見習いに近寄り、手数料として銀貨を渡した。

 見習いが頷くと、さっきまでベルを鳴らしていた見習いがその子を祭壇前にデーンと置いてある大きな黒い木箱まで連れて行った。

「この穴の中に利き手を入れなさい」

 司祭様に言われると、その子は恐る恐る木箱の真ん中に開けられた穴に片手を突っ込んだ。

 映画『ローマの〇日』で真実の口に手を突っ込んだ王女様とおんなじ様なリアクションだ。

 すると、箱が微妙に揺れ、その揺れが収まると、箱の上に透明なガラス板の様なものが浮かびあがり、神より授けられたスキルが文字として浮かび上がった。

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