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「問題は王妃がウチのグループを押さえている点なんだよな?」
ランビットの言葉に、ユーリが眉根を寄せた。
「そうだな……。ホテルグループじゃなくて、フローリストガーデングループとして押さえられているなら、レストランまで一括でって事だしなぁ……」
「要するに、アドリエンヌ様の指名をアウレリアにできればいいんだよね?」
セシリオ様が静かに確認する。
「セシリオ様はそう仰いますけど、新しくレストランをグループ外に作るとして、今から建物を建てていたんじゃ、コンテストに間に合いませんよ?」
ランビットは焦っているのか、多少言葉が乱暴になっちゃってるよ。
「今売り出している店なら、どこでも良いんじゃないか? 買わなくても借りるだけでもいいし。極端なことを言えば、営業しなくても、店さえあればいいんじゃないか?」
フェリーペがさも良い事思いついたと言わんばかりの顔をした。
「それで通るかどうかは主催者のジャッジによるんじゃないかなぁ……」
無口なボブが偶に言う意見て、正論が多いだけに、ぐさっとくることがあるんだよね。
案の定、フェリーペが「うっ」と言葉に詰まっちゃったよ。
他の店かぁ……。
知り合いの店ってなかったっけ?
食べ物屋さんで……。
「ねぇ、食堂って王都にある食堂だけなのかな?」
「その辺はまだ正式に発表されていないから、分からんなぁ。でも、王都の方が参加は確実だと思うよ」
「やっぱりそうよね……。今、一番情報を持ってるはずのランビットでさえ分からないんじゃぁ、王都の店の方が確実かもねぇ」
「なぁ、思い出したんだが……」
フェリーペが指を鳴らした。
「ん?何?フェリーペ」
「リアって、学生時代に孤児院の子たちのホットドックの店、手伝ってなかったか?」
「「「!」」」
「その手があったね!うんうん、今も昔も手伝っているよ」
「なら、そこの名義を貸してもらったらいいんじゃないのか?」
「!その手があったね。早速、明日にでも相談してみるよ。私はこっちの方に全力投球するつもり!」
「え?待って、リア。ということは、ウチの料理は誰にやらせたらいいんだい?」
焦ったランビットが身を乗り出した。
「それはやっぱりランビットが考えてくれたらいいんじゃない?」
「ええええ?料理のことは、俺よりリアの方が詳しいだろう?せめて、ウチの料理人を誰にするかはリアが考えてくれよぉ」
「なら、フローリストガーデンのウチの伯父さんたちのどっちかにする?」
「う~ん。親戚同士でバトルってリアは構わないの?」
「えっ?」
最初は何とも思っていなかったんだけれど、改めてそんな風に聞かれると……複雑な気分。
結局、ホテルの王都店のメインレストランのシェフの方がシガラミが無いだろうと言うことになり、ランビットの名前でコックを指名してもらうことにした。
「でもさぁ、縛りのあるコンテストってどんなのかなぁ?」
フェリーペの言葉に皆が一斉に私の方を見た。
「えっ?」
「いやぁ、だってさ、昔からイベントはリアが考えてたからな。皆、お前の意見を聞きたがるのは当たり前だろう?」
「そうねぇ……。使える食材や調理法が限定されているとか、調理する時間が極端に短いとか、見本があって、その通りに作らせたり、あり得ない食材を組み合わせて全く新しい料理を作らせて競わせるってのもありかも?」
「よくもまぁ、ポンポンと色々出てくるなぁ……」
無口のボブにそう言われてしまうと、自分の異様さを指摘されたようで苦笑が浮かんでしまう。
「時間が極端に短いとは?」
フェリーペは私が挙げた例が気になるみたいだ。
「例えば、魚のスープがお題として、順調に調理したら50分かかるとするでしょ?」
「「「うんうん」」」
「で、制限時間が55分と決められていたら、一回でもミスとかトラブルがあると致命傷になるでしょう?かと言って慎重すぎても時間切れになるしね。まぁ、見てる方はハラハラドキドキはするけど、面白いでしょうねぇ」
「そりゃぁ、作る方は地獄だな」
「セシリオ様。これはあくまで私が想像しただけなので、実際にそんな風に競わせるかどうかは分からないですよ」
「いやあ、リアにはまだ言ってなかったけど、今回の料理コンテスト、ペペんところが企画を運営するらしいよ。愛弟子なら師匠と同じくらいの事は思いつきそうだぞ」
「げげっ!」
ランビットからの爆弾で、男性陣の前でしてはいけない表現が口から飛び出てしまったではないかっ!
ほら、セシリオ様が呆れた顔でこっちを見てるよ……。
「兎に角、リアは明日、ホットドックの店と話し合って欲しい。俺の方もコックを指名するから。それと、セシリオ様」
「ん?」
「俺たちだと、直にアドリエンヌ様にコンタクトを取るのが難しいので、デザイナー経由で構わないので、リアがアドリエンヌ様に指名してもらえるように、こちらでも動いているって伝えてもらえませんか?」
「ああ、直ぐの事になるかどうかは分からないけど、できるだけ早く連絡するよ。そっちもホットドック屋の協力が得られたら、直ぐに知らせてくれ」
「はい。そうしますね」
一通りの懸案事項が一段落を見たので、ホッとした顔のランビットがまとめに入った。
「これで、少しでもアドリエンヌ様の助けになれれば良いけど……」
うんうん、皆、アドリエンヌ様を応援したいものね。
よし!明日は頑張って孤児院との話し合いをしなくっちゃ。




