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「こんちは~」
「あ、ボブ、いらっしゃい」
「いらしゃーい!待ってたぞっ」
ここはホテル内の私の事務室。
溜まっている決済書類の山を無視して、今はおままごとセット作成の会議中。
フェリーペはいないけれど錬金術の部分についての話題だから、ボブとランビットが居てくれれば事足りるからねぇ。
ペンキの手配とかが決まったら、フェリーペにも来てもらおう。
「で、何が問題なんだ?」
「オレが食材の設計図を引いているんだけど、リアが軽い木でないと落とした時に子供が怪我をするからってんで、柔らかくて軽い木にしたところ、左右の部品を嵌め込む時、スリットが容易く折れちゃうんだよねぇ。どうにかならんかなぁって、お前のアイデアを教えてもらいたい」
「軽くて柔らかい木かぁ……」
「うん」
「軽いのは良いとして、柔らかいから折れちゃうんだよな?」
ランビットは無言で頷いている。
「実はスリット部分だけ金属にってのも考えたんだけど、それだと分解した状態で子供の上に落ちたら怪我の原因になるかなぁって」
「……」
「何か方法が無いかなぁ……」
私は二人の会話を聞いているだけだけど、このおもちゃを考えたのは私なので、ランビットに同席を求められたんだよね。
断面に食育の色を塗るのは譲れ無いし、安全なおもちゃであって欲しいしね。それに、前世の記憶などでこの世界にない発想を持ってるので、何かの役に立つかもしれないから頼まれなくても同席するけどね。
前世や前々世の記憶を手繰ってみる。
前々世のおもちゃって日本もまだ世界の最貧国の一つだったから種類や数は少なかったけれど、そんなに柔らかい木材では作ってなかった気がする。
竹が多用されてた気がする。
竹トンボも、竹馬も、凧だって骨組みは竹だったんだよね。でも、こちらでは竹は見たことがないんだよね。竹って優秀な素材なんだよねぇ。
それと前々世のおもちゃにはニスなんかが塗ってあって、あれって保護剤の意味もあったのかな?
「……スリットの所だけもう少し固めの木材にするとか?」
「おお!それいいね。流石ボブ!でも、どうやって材質が変わるところの接着をする心算だい?」
「う~ん。樹脂みたいなもので固めたり、接着剤みたいなもの?スリットだと柔らかい方の木材が耐えられないだろうし……」
私の頭の中にはさっき思い浮かんだニスが居座っている。
ボブが言う樹脂、これを塗る事でスリットを頑丈にできないかな?
なんならスリットの幅を変えたり、そもそも形を変えるのもあり?
「ボブに何かアイデアがあると嬉しいんだが、俺が考えているのはスリットの形状を変える事なんだけれど……。じゃあ、形状を変えるとして、いざ考えてみるとどんな形のスリットが良いのかが分からん!」
「別にスリットとかいらないんじゃ……」
「え?スリット以外のやり方があるってことか?」
「いや。別に食材が半分に割れなくてもおもちゃとしてはいいんじゃないかなぁ……」
やばい!このままだと食育とは全然関係ないおままごとが出来ちゃうじゃん!
それはそれでも良いんだけれど、この世界、万遍ない栄養を考慮した定食とかあんまりないんだよねぇ。
空腹を兎に角誤魔化すのが主題のものが多いから、しょうがないと言えばしょうがないんだけどね。
ウチのホテルやレストランは高級志向だから、ちょっと違うんだけどね……。
お腹いっぱい食べるのに必死な世界で、食育はまだ早い!私もそう思うけれど、アドリエンヌ様のところは王族だし、メグんところも食べるものに困るような家ではないから、そうなると次に考えるのはこの医療の発達していない世界で、如何に長く健康でいられるかなんだよね。
そしたら医食同源とか、食育とか、色々考えちゃうんだよね。
友達やその家族には、私の家族と同じように長生きしてもらいたいし、一旦食育が広まれば、知らない誰かさん達の健康も護れるかもしれない。壮大な夢みたいなもんだね。
でも、できることなら健康な食生活ってやつをこの世界にも根付かせてあげたいなぁ……。
ま、兎に角今は、二人の考えをなんとか軌道修正しないと、折角の食育っていう考えが無に帰しちゃうよ!
「何?リア。何を思いついたの?」
「へ?」
ランビットがそう言うからか、ボブもこちらを見た。
食育の部分を削られるかもと焦りまくっていたのが表情にでちゃってたのかも?
「学園時代、何かを思いつくとそういう顔をしてたからさぁ。何か思い付いたのかと」
ボブも無言で頷いている。
私はここぞとばかり、樹脂でスリット部を固くする案とスリットの形を変える案、両方について説明した。
「相変わらず発想が豊かだなぁ」
ランビットの言葉に再度ボブが無言で頷いている。それを見たランビットは今度はボブに尋ねた。
「樹脂で固くできそうかな?」
「どうだろう……。探してみる価値はあると思う。フェリーペんところに聞いてみよう」
「こんなことなら、今日、フェリーペも呼べば良かったなぁ。だけど……ここの所、あいつあっちこっちのコンビニに視察に行っているみたいだから、もっと手透きになってからって思ってたんだよなぁ」
鉄道の各駅に備えられたコンビニは人気で、最近は駅のない町や大きめの村にも進出をはじめたみたいで、フェリーペも忙しそうだったんだよね。
ランビットなりに、フェリーペの都合を考えて今日の会合には呼ばないことに決めたんだよ。
まぁ、また別の日に皆で集まれば良いよ。
結局、その日、三人でウチのホテルの食堂で昼食を摂った後、解散となった。
私は週二で出社しているので溜まりに溜まった仕事を片付けないといけないし、ランビットはランビットで私の仕事を引き継いでくれているので仕事量は驚異的な量になっているしね。
それでも錬金術はやりたいみたいだから、何とか時間をやりくりしておままごと作りに参加してくれるのが、とってもありがたい。本当に錬金術が好きなんだと思う。
はぁぁぁ。
明日は家だから、一日ぬいぐるみ作りだぁぁぁ。
いろんな指に軟膏を塗った上に、絆創膏変わりの細く切ったリネンを巻き付けているんだけれど、誰が見ても痛々しいらしく、ユーリだけじゃなく、ホテルの従業員たちも私の手指を見るなり、ぎょっとしているのが面白い。
でもね、指を犠牲にした甲斐あって、玉ねぎのぬいぐるみは出来たんだよ。
まん丸くて、柔らかくて、赤ちゃんがぎゅっと抱きしめても大丈夫な感じ。
実は夜、寝室に入った後にメイドのタバサがちょくちょく手を入れてくれているっぽいのだ。
だから、最初はちょっと歪だったんだけれど、いつの間にかちゃんと玉ねぎに見えるんだよね。
ありがたや~。
明日からは魚のぬいぐるみだから、タバサは夜なべで修正してくれるかなぁ?




