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アドリエンヌ様のお輿入れで、卒園後やっとアドリエンヌ様の姿をこの目にし、ユーリと結婚したことも責められなかった。あの晩は家に帰ってからもなかなか涙が止まらず、ユーリがめちゃくちゃ焦っていたけど、指輪の話をしたらユーリもほっとした顔になった。
そうだよね。ユーリも私も、アドリエンヌ様に謝りたかったけれど会う手段がなかったものね。
晩餐会の翌日にはメグ夫婦は鉄道に乗ってゴンスンデに帰っていき、その後、アドリエンヌの妹さんの晩餐会も無事終わり、ほっと一息ついていたら、あっという間に三か月半が経っていた。
「リア!ホテルの方にメグからの手紙が届いてたぞ」
ランビットが仕事終わりにいつもの元あややクラブ王都メンバーの集いに参加がてら、メグの手紙を持ってきてくれた。
「ありがとう!」
ガサガサ。
まだ他のメンバーが来ていないので、ランビットには悪いけど彼そっちのけで手紙を読ませてもらった。
「うわぁ。メグの赤ちゃん生まれたんだって!」
「へぇ。どっちが生まれたの?」
「え?どっちって?」
「男の子?それとも女の子?」
「女の子だって!」
「皆でお祝いを贈る?」
「そうね、いいわねぇ。ランビット、私、もし自分に女の子が生まれたら作りたいものがあるんだけれど、それをメグに贈りたいの」
「どんなのも?」
「健康的な食事についての知識を子供たちに持ってもらいたいのね」
「ん?勉強道具?それとも教科書?」
「おもちゃなの。ドールハウス覚えてる?」
「そりゃもう。俺は馬車の方が好きだったけど、売れ行きはドールハウスの方が爆発的だったし、小物作りは大変だったからなぁ」
「あははは。ランビットは細かい作業も嫌がらないから、本当にたくさんの小物作りをしてもらったものね」
「まぁ、楽しかったからいいんだけどね。で、どんなおもちゃ?」
「ああ、おままごとの道具を作りたいの。高さ1mくらいの木製の台所と木とか布で野菜とか肉なんかの食材を作って、作りもののナイフで切ったり、作り物の鍋で調理ごっごするものを考えているんだぁ」
前世でIKE〇に買い物へ行く度、大きなおままごと用の炊事セットが欲しくて、毎回マジマジと見てたんだよねぇ。
「でもさぁ、リアが言うのっておもちゃで、健康的な食事について知識を得るって感じじゃないよね?」
「ああ、実はね、野菜は緑色、肉や魚は赤色、穀物なんかは黄色って具合に、食材を切ると、切り口に色を塗っておくの。で、緑は体の調子を整える食材、赤は体をつくる食材、そして黄色はエネルギーになるって教えておけば、遊びながら覚えてもらえるじゃない?」
「何、それ?俺そういうの初耳なんだけど・・・・」
そうかぁ。食育は前世のもので、現世ではまだ無いものねぇ。
そこでランビットに説明してみるが、理解してくれたような・・・・できてないような・・・・。
「体を作るっていうのが理解できないよ」
「ランビット。私たちの体は普段食べているもので作られているってのは分かる?」
「ん?」
「赤ちゃんが幼児に、幼児が大人の体になるのに必要な物は何?」
「あれ?好き嫌いせずに何でも食べないと大人になれないよって言うアレか?」
「そう。ちゃんと安全な食材で作られた、体に良い食事を摂らないと、健康な体を作るのは難しいのよ」
「それで体を作るのが赤色?」
「そう、赤色」
「じゃあ、いつも肉や魚を食べてれば良いってこと?」
「そうだけど、体を作っても動かせないとダメでしょ?それで体を動かすのに必要なのが黄色なのよ」
「へぇぇ。じゃあ、緑は?」
「人間は食事をすると最後はどうなる?」
「ん?最後?」
「そう、最後。食べて、体の中で体が必要とする物を取り込んだ後、その残り、言い換えればカスはどうなる?」
「トイレで出す?」
「そう!でも、トイレで用を足すにしても緑を食べないと中々お通じが来ないのよ。他にも体調を整えるのに活躍するのが緑の食材なの」
「う~ん、分かるようで分からないなぁ」
栄養素とか食物繊維とか、そういう考えが無い世界で、それを説明することの何と難しいことかっ!
「兎に角、私が作りたいのはおままごとの道具なの。皆で一緒に作る?それとも別々に用意して、一緒にゴンスンデへ送る?」
「そうだなぁ……。今夜皆で話し合って決めよう!」
そう思って他のメンバーが来るのを待っていたら、最後に来たのはセシリオ様で、着くなり爆弾を落としてくれた。
「え?アドリエンヌ様もなの?」
「何?誰か他にも妊娠した人がいるのか?」
メグが妊娠していたのを知っているはずなのに、セシリオ様はきょとんとした顔をした。
「えっと、メグから手紙が来て、女の子が生まれたって」
「ああ、妊娠じゃなくて出産の方かぁ」
なるほど!セシリオ様は新たに妊婦さんがって思ったのね。
「で、メグの産んだ子供は男の子?女の子?」と横からユーリが皆のカクテルを手渡しながら聞いてきた。
「女の子なんだって。それでね、ランビットとね……。」
皆でお祝いを贈ろうってことと、私はおままごとセットを作りたいと打ち明けてみた。
「オレはそれぞれで贈り物を用意して、一緒に送るで良いと思うぞ」
「そうだな。僕もそれが無難な気がする」
ユーリは何か贈りたいものが別にあるのかな?セシリオ様もそんな感じ?
っていうかこの二人、錬金術とかしたことがないから、別途購入したものを贈りたいのかもしれない。
「リア、錬金術が必要なら声を掛けてくれ。手伝う……」
「ありがとう、ボブ。是非、手伝って欲しい」
「何かドールハウスの時を思い出すなぁ」
フェリーペが遠い目をした後に、ワクワクした目になり、何気にやる気を纏っていた。
「じゃあ、錬金術クラブだったものは一緒におままごとセットを、ユーリとセシリオ様はそれぞれに用意するで良いんじゃねぇ?」
結局、この案に決まり、私たちはどんな物を作るか、イラストを描きながら話が盛り上がり、そろそろお開きかなと思った時にセシリオ様が新たな提案をして来た。
「アドリエンヌのところにも、同じ物を用意して贈ったら良いんじゃないかなぁ?」
「それ良いな!」
セシリオ様の案にユーリも乗り気で、私たちはアドリエンヌ様の子供が女の子ならおままごとセット、男の子なら何を贈るか、出産前までに決めようと話が纏まり、お開きになった。
うふふふ。今から腕が鳴るねぇ~。




