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「リア!」
「メグ!」
久し振りに会ったメグは以前より可愛いポワンとした雰囲気で、黄色のワンピを着込み、列車から降りるなり早足で私の方に来た。
プラットフォームにはメグの後ろに控えめに立っている男性がいる。
そう、メグの旦那様だ。
でも、私の視線はメグのお腹にいってしまう。
だって・・・・。
「赤ちゃん⁉」
「えへへへ。うん!」
「うわぁ、おめでとう!でも、長距離の旅行なんてして大丈夫なの?」
「うん。安定期に入ったし、アドリエンヌ様に会える機会は限りなく少ないから。デビーが付いて来ることが条件で許してもらったの」
テヘとでも言いだしそうな顔が照れ笑いに変わる。
「デビーさん、お久し振りです」
「お久し振りです」
メグの旦那さんは相変わらずヌボーっとしているように見えるくらい温和だ。
「じゃあ、まず休めるようにお部屋に案内しますね。ウチではなく、本当にホテルの方で良いの?」
「うん!デビーにも高級ホテルっていうのを体験させてあげたいしね」
「でも、夕食は一緒に食べようね」
「うわぁ。もしかしてリアの手作り?」
「うん!よければ夕食は家で食べてほしいの」
「うんうん。リアの料理、美味しいから嬉しいなぁ」
プラットフォームからホテルのレセプションまで建物の外に出ることなく行けるので、二人の荷物をポーターに頼み、小さ目のスイートへ案内した。
「うわぁ。二人だけなのにこんなに部屋数のあるスイート、いいの?」
「うん!もし、必要ならメイドも付けるし、下の薬局も夕方までなら開いているから、体調に不安があったら遠慮なく相談してね」
「うんうん」
「じゃあ、一度お昼寝した方が楽だと思うから、夕方、ここへ迎えに来るね」
「えええ。王都内を散策したかったのにぃ・・・・」
「えっ?」
「あ、ウチのは自分では気付いてないですが、かなり疲労しているので、お言葉に甘えてお昼寝させてもらいますね」
「はい、どうぞ」
「ええええ?」
「メグ、赤ちゃんがお腹にいるんだから、できるだけ体に負担になることは控えて頂戴。こんな長旅、本当に大丈夫だったの?赤ちゃんのこと全然知らせてくれなかったこと、ちょっぴり怒ってるんだよ」
「えへへ。だってそれを言ったら今回は来ない方が良いよって言われそうで・・・・。本当にアドリエンヌ様にも、皆にも会いたかったんだぁ。私の体は大丈夫だよ。でも、リアもデビーも心配するから、ちょっとお昼寝するよぉ」
流石メグ。
久し振りに会うのに爆弾を抱えて登場してくれたよ。もう。
先に手紙とかで知らせてくれれば良かったのに・・・・。本当にもう・・・・。
でも、アドリエンヌ様のところはお父様が厳しくて平民から連絡を取る方法が皆無なんだよね。
しかも、貴族同士のお茶会とかには出席しているのかもしれないけれど、ウチのホテルやレストランにお客として来たことがないんだよね。ユーリ救出作戦以外では。
若い未婚の貴族女性も多数ウチのホテルやレストランにお客として来てくれてるのにねぇ・・・・。
何でも結婚前にあっちこっち出歩くべきじゃないっていう方針だとか何とか。本当にキツイ父親だと思う。
ガーデニングすら許してもらえないんだもんね。
しかし、メグのお腹が大きいなら、長時間立ったままなのは絶対だめだ。
一皿だけ運んでもらって、それ以外は厨房に椅子を用意して座ってもらうしかないよね。
目的はアドリエンヌ様と会うことと、お祝いの気持ちを伝えることだもんね。
さて、今夜は妊婦さんにも良いメニューに変えないとなぁ。
メグには内緒にしていたけど、王都のあややクラブのメンバーが揃うから、賑やかになるだろうなぁ。
あ、メグはお酒はダメだから、何か体に良くて美味しい飲み物を用意しなくちゃ。
悪阻は無いのかな?さっき聞いておかなかった自分の頭をコツンと叩いた。
ウチにメンバーが揃ったので、ウキウキとメグたち夫婦を迎えに行った。
短い距離だけれど妊婦さんだからね、ホテルの庭を長い時間歩いてもらうより、できるだけ揺れの少ない高級馬車で移動が安心だからウチのに乗ってもらった。
「リア、迎えに来てくれて、ありがとう」
「いえいえ。やっぱりお昼寝した方が顔色が良いね」
「そう?」
「うん!ところで悪阻は無いの?」
「悪阻はもう無いの」
「いやぁ、悪阻の頃は大変でしたよ。ウチのは特に酷かったので、食べれる物が無かったんですよ。どうやって悪阻の時期を生き延びたのか不思議なくらい食べれなかったんですよ」
「ありゃぁ」
「でも今日は、久々のリアの手料理なのでめっちゃ楽しみにしてるの。デビー、リアの料理はとぉぉぉっても美味しいのよ!」
「いつもウチのから聞いていたんです。僕も楽しみにしています」
「はい、頑張って料理しました!お口に合えば嬉しいです。ところでホテルのお部屋はどうでしたか?何か足りないものは無かったですか?」
「いやぁぁ。ウチのに聞いてはいましたし、道中で泊ったホテルもビジネスホテルもすごかったけれど、王都の本店はより凄いですね。お客の数が半端ないです。王都なのに庭園も広いし、居心地が良いです」
「なら、良かったです。本当に足りないものがあったら遠慮なく言って下さいね」
こんなやり取りをしながら家の前の馬車寄せに着き、デビーがメグの手を握り、腰に手を当てて降ろしてあげている最中にそっと家からメンバーが全員揃って出てきた。
もちろん、アドリエンヌ様やモンテベルデーノに居るヘルマン様はいないけどね。
「「「「王都へいらっしゃい!」」」」
「ええええ!皆いるの?嬉しいぃ!」
「「「「うわっ!」」」」
ふふふふ。メグたんの妊娠についてはユーリにも教えなかったからねぇ。
私だって散々驚かされたんだから、皆も驚け!ニヤリ。
さぁ、夕食にしましょう!
デビーは家のバールームに入ると口をあんぐりと開けて固まっていたし、メグは足湯を見るなり「足湯がしたい!」と安心の勇者ぶり!
こらこら、そこに料理が並んでるでしょうがぁ・・・・。もう、本当にメグったら。
足湯はちょっぴり我慢してもらい、先に夕食を皆で楽しんだ。
話題はもちろん、それぞれの近況やアドリエンヌ様のお輿入れのこと。
本当にたくさんの話で盛り上がり、メグ夫婦の王都滞在中には皆で何度も集まることを約束して、足湯の後に解散した。
勇者メグは足湯をいたく気に入り、「明日も入れて~」と言いつつホテルへ戻って行った。




