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 打合せは私の事務所ではなく、ホテル内の会議室の一つで行う事にした。

 ランビットがアドリエンヌ様の妹さんの披露宴だけでなく、アドリエンヌ様のお輿入れの晩餐も担当させてもらう事を条件にケータリングを引き受けることに成功したのだ。

 で、今日は城からの担当者がこちらに来て、メニューの方向性など細かなことについての話し合いが行われるのだ。


 普段、豪華な城で働いている方たち相手なので、ウチのホテルのいろんなランクの会議室の中、最上級の部屋を用意した。

 調度品も、絨毯も、カーテンも、ファブリックも一流品で固めてある。

 こげ茶とクリーム色が基調となった落ち着いた部屋でもある。

 

 私がこの会議室で拘ったのは、一流の調度品だが金ぴかではないこと!だ。

 金や銀が差し色で入れば、ゴージャスにはなる。

 でも、それらを一切使わず、落ち着いた雰囲気なのに、実は名品が並べられている。そんなコンセプトの部屋なのだ。


 流石に城でも上の方の人々なだけあって、金ぴかでなくても手間や金がふんだんにかけられた部屋である事は一目で分かった様だ。

 会議室に入るなり、満足気な表情になった。


「サージル子爵様、モートン料理長様、こちらの席へどうぞ」

 ランビットの誘導で、私たちは二人対二人で向かい合わせの席に座った。

 彼らの護衛は彼らの後ろや入口の横に立っているので、実際にこの部屋にいる人数は結構な数に上る。


 ソファーではなく、会議室仕様なので、ドーナッツ型のテーブルと8脚ある椅子の部屋で、メモ等が取りやすくなっている。

 黒板もあり、皆で同時に情報を認識でき、会議しやすい部屋なのだ。


「いやぁ、ここは落ち着きますな。それにメモを取りやすいように筆記用具全般も整えてあるし、何より、そこの黒板がいいですね。これは城でも取り入れたいですね」

「サージル子爵様、お褒め頂き、ありがとうございます。また、本日はようこそいらっしゃいました。当ホテルのオーナーのアウレリアと申します。近い内に行われる祝い事に私共の料理を選んで下さり、誠にありがとうございます。モートン料理長におかれましても、城の調理場を御貸し頂けるとのご配慮、ありがたく存じます。今日は忌憚のない意見を交わし、お祝い事を後世に残るくらい素晴らしいものにしたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます」


「いやいや、こちらこそ。貴殿の事業では出張料理はされないと伺っておりますが、今回は王子のみならず、王の側室の輿入れにまでご尽力頂けるとのこと、王からくれぐれも謝意を示して欲しいと承っております」

「私も美味で有名なフローリストガーデンの料理をどの様に作っているのか間近で拝見させて頂けると伺っておりますので、今から早く見学したくてワクワクしております」

「そう言って頂けると、調理場を御貸し頂く心苦しさも、多少緩和されます。ありがとうございます」


 そこからはメニューと皿などは城のものを使うのか、こちらが用意するのか、人数はどれくらいか。食材の仕入れはどちらがするのか。食の安全性の確認は何時のタイミングで誰がどのように行うのかなど、話し合いは多岐に渡った。


「では、メニューはそちらで考えて頂いたものを、来週までに城へ提出して下さい。私と宰相とこのモートンで検討致します。食材はそちらで仕入れて頂き、給仕は城の者が。但し、王の側室のお輿入れでは人数がぐんと減りますので、給仕もそちらにお任せでよろしいですね?」

「はい。サージル様」

「ただ、そちらの要望の中で1点だけ変更をお願いしたいのが、皇子と王の晩餐では同じメニューではなく、別のメニューにして頂きたいのです」

「え?でも、それだと優劣が出ませんか?」

「いえ、一人辺りの料金は同じにして頂きたいのですが、メニューは変えて頂かないと、王や王子は両方の晩餐に出席するので、短い期間で同じ料理と言うのはちょっと・・・・」

「はい。そういう事なら・・・・メニューは変えますが、ウェディングケーキだけは同じものをご用意させて下さい」

 私にとってアウレリア様のウェディングケーキが妹さんのと比べで見劣りするのだけは許せないのだ。

 料理は一人辺りの値段が一緒で良いのなら、如何様にも調節できる。

 というか、こっそりアウレリア様の晩餐の方をウチの持ち出しで高級な物にだって出来る。

 だって、アウレリア様のは私からのお祝いの心算だから、儲けは度外視でいいもんね。

 あ、勿論、妹さんの方はしっかり儲けさせてもらうけどね。


 子爵は少し困惑しているみたいだけれど、きっとこれはウェディングケーキがどんな物なのか知らないのだろう。

 私は黒板に絵を描きはじめた。もちろん3段のウェディングケーキの。


「こんな感じで、大きさはこのくらいになると思って下さい」と両手を広げで高さや幅を示した。

 絵に描いてもイメージが掴めない様なので、レストランからデザート用のケーキを少し持って来てもらい、試食してもらった。


「!美味しいですね。甘いけど、甘すぎない」

「フルーツがふんだんに使われている・・・・こっちのオレンジ色の甘酸っぱいのがあるので、甘さがクドイと感じないなぁ・・・・」

 料理長は材料とその配分などに気を取られているみたい。


「3段になると、華やかになります。下から大中小の大きさを重ねますから。シャンパンという飲み物を用意させて頂きます。ケーキカットをご両人にして頂く前に乾杯をし、ケーキが配られたら紅茶で召し上がっていただく感じになります。使うフルーツは装飾にマスカット、ブルーベリー、スポンジの間にはイチゴやパイナップル等を考えています」

「マスカット?パイナップル?聞いたことのないフルーツだな・・・・」

 料理長が不思議そうにしているが、そりゃそうだ。だってマスカットとパイナップルはウチの温室で育てているので市場には回っていないからね。

 生クリームの上に、マスカットとブルーベリーをちりばめて、マジパンで作った薄いピンクと黄色、オレンジのガーベラに似た花で飾り立てて、味の補強でふんだんなイチゴをスポンジの間に挟む。これで決まりだね!

 

 お食事のメニューも色々と考えるのが今から楽しみ!

 子爵に参加者の苦手料理や食材の聞き取りをお願いし、今日の会議は終了となった。

 アドリエンヌ様はあややクラブの部室でも甘いものはお好きだったので、ウェディングケーキは喜んでくれるんじゃないかなぁ。

 ケーキカットは披露宴が無いアドリエンヌ様のお輿入れの思い出として残るといいなぁと思いつつ、カクテルに花火を付けてもいいかもとか、あのアドリエンヌ様が淹れて下さった美味しい紅茶を王様に淹れて差し上げるパフォーマンスとかできないかなぁ?と頭の中はフル回転!

 絶対!絶対!記念になる、そして美味しい晩餐にするからねっ!待ってて、アドリエンヌ様っ!

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― 新着の感想 ―
序列は大事なのでせめて見劣りするもの作れよ… この対応は下手すると正妻や王太子から睨まれて王家内で元々ない居場所がさらに無くなったりしそうだし… せめて事前にアドリエンヌに確認とってからやってくれ 糞…
途中アドリエンヌ様がアウレリア様になってる…?
生け贄のような地獄の結婚。それをお祝いムードで喜ぶ主人公。 普通にひどくね?何かから回ってる気がしてんらない。 自分がアドリエンヌ様なら自分の愛する人を奪って、幸せ顔で生け贄結婚を祝福されたら病みそう…
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