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「リア。僕に全ホテルの経営を任せても大丈夫だと本当に思っているの?」

「もちろんよ、ランビット。最初からその心算であなたを雇ったんだし、もう可成り経験を積んでもらったのでそろそろ雇われ社長になってもらっても十分任を果たしてくれると私は思っているの」

「でも、リアの場合はダンヒルさんが常にサポートしていたけれど、リアが会長だっけ?その会長になって週1~2日の出勤になったらダンヒルさんも同じ頻度での出社になるだろうし・・・・。僕の秘書はダンヒルさんの様な仕事はまだ出来ないよ・・・・」

 ランビットの最初の秘書はナンクロなんかの出版の方に配置換えになっちゃったから、新しい秘書君はまだまだ経験が足りないのは分かってるんだよね。


 それに私が会長って社内で通達しても、ウチの事業では日本で使われていた役職名を使うから、新しい役職名が出ると、社員みんなそれを覚えないといけない。でも、じゃあ、会長って何をするのって言う説明を私のうろ覚えな知識では十全に説明できなかった様で、ランビットの頭の中ではまだ靄が掛かったイメージなのだと思う。だから私がこの先、何をどの様にしてこの事業に関って行くのか掴めてないんだろうなぁ。ごめんよ!ランビット。


 フローリストガーデンホテル王都店内の私の事務室、大きな窓ガラスから燦々と陽が降り注ぎ、この豪華な革張りのソファにゆったりと座っているとちょっと眠たくなっちゃう・・・・。

 向かいに座るランビットは目の前の紅茶を飲みもせず、少し焦っているみたい。

 膝の上に載せている手指が忙しなく動いている。


「ダンヒルさんは会長秘書だけれど、今迄と同じ様に出勤してくれる約束なの。もちろんランビットが少しくらい仕事を割り振ってもダンヒルさんなら嫌な顔をしないと思うわよ」

「少しくらいってどのくらい?」

「ふふふ。それはダンヒルさんに直に聞いてみて。都度都度抱えている仕事の量も違うでしょうしね」

「むむむ」


 普段ならダンヒルさんは私の事務室の入口付近のデスクで仕事をしているのだけれど、今日はポンタ村まで出張していて王都にはいないのだ。

 私が結婚するまではこういった出張には私が行き、ダンヒルさんと護衛さんたちも私と一緒に移動だったんだけれど、ユーリと結婚してから私の出張の回数を押さえているので、必然的にダンヒルさんがあっちこっちへ視察へ行ってくれている。まぁ、時には父さんが行ってくれる事もあるんだけどね。

 でも、ランビットが雇われ社長に納まってくれれば、ダンヒルさんの出張の機会は減るはず。ってか、ランビットの出張回数が増える?いや、今までも結構あっちこっちへ動いてくれていたから、別段増えるわけではないのかな?

 本当にランビットには最初から色々助けてもらってるなぁ。

 もちろんダンヒルさんも。


 元々何故私が出張のみならず、出社の回数を減らしているかというと、そこにはユーリの発言が大きく関わって来ているのだ。

 結婚して直ぐの頃、「リア、お前の事業に手伝が必要なら出来る範囲で手伝うが、お前が育てて来た部下も結構いるんだろう?お前が仕事を続けるのは体に影響がない範囲でならオレは問題無いと思ってる。思ってはいるが、何時赤ちゃんが出来るか分からないからな。お前が働けなくなる時に任せられる部下の育成を怠らない方がいいぞ」なんて言って来た。

 赤ちゃん。

 結婚すれば当然その可能性が出て来るし、私も赤ちゃんは欲しい。


 前々世では結婚する前に亡くなり、前世では結婚はしたけれど子供は出来なかった。

 あれだけ欲しかった自分の赤ちゃん。私は一度もこの手に抱いた事が無いのだ。

 だからなのか、ユーリの赤ちゃんって言葉を聞くと、小さな赤ちゃんを無性にこの手に抱きかかえたくなる。

 十月十日、お腹の中で大事に大事に育て、生まれてからも一生懸命育てる心算だ。


「ねぇ、ユーリ。ユーリは何人くらい子供が欲しいの?」

「オレ?何人でもいいけど、夫婦水入らずが出来ない様な数は困るかな。子供も大事だが、お前と二人だけの時間も大事だからな。子供は居たら嬉しいし、居なくてもお前が居ればオレはそれで良い」

 必ずしも子宝に恵まれる夫婦ばかりではない。

 だからなのかユーリの言葉は色々と考えて発せられた気がする。

 妻は子供を産むのが当たり前のこの世界で、子供が出来ない場合にまで考えを及ばせてくれるユーリに良い意味で驚くよ。


 彼の大人になってからの言動は、何気にいつも思いやりが込められている気がする。そういう彼だから、あの唐突なプロポーズを受け入れたのだ。

 若干俺様なプロポーズだった気もするけど、私と一緒になりたいという必死さは伝わって来たから、思わずその手を取ったのだ。


 で、私の目の前に、先日ユーリの口から赤ちゃんと言う言葉が出て来て、人参よろしくぶら下がっている状態なのだ。←今ここ!

 何時妊娠しても良い様に、ランビットに準備をしてもらわないとだね。ふふふ。

 その瞬間、私の脳内一人会議でランビットのブートキャンプの開始が決定し、ヘロヘロになっているランビットの像が頭に浮かんだ。そして今正にブートキャンプが開始されているのだ。くふふふ。


 最近は妹のエイファが学年4年目の職場研修をウチのホテル等でやりたいとか言っていて、どのセクションで研修を受けてもらうか悩み中だったのだけれど、それも併せてランビットに任せちゃおうかなぁ~。

 エイファとは私の出張が多く、なかなか姉妹としての団らんの場数は少なかったのだが、小さな時から美味しい物をたらふく口にしており、学園の学食との差や、食器類の華々しさ等、もうウチの食事以外は摂りたくないとまで言っている。

 勿論、クラスのお友達とお茶をする時、他の店に行く事もあるみたいで、それなりに外の味も知っているし、結構な回数他の店にも行っているので、まぁ、他の店の料理は~と言う所は、姉である私へのリップサービスなんだと思うけどね。


 妹には自分がやりたい事を生業として欲しいので、ウチの店のどれかでと言う事であれば、親元から通えるホテルの王都店か、実家の下のレストランになると思う。

 まさか・・・・調味料工業団地とか言わないよね?

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