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闇王もといユーリの新聞王への道20

 サッカー観戦?

 もちろんそんなのキャンセルだよ。だから、リアがアーベルに伝える前に、オレ様直々にアーベルのアパートまで出向いて決定打を放っておかないとな。

 婚約者のいる女性が婚約者以外の異性と二人きりでデートするなんてのは平民の世界でもタブーだからな。

 まだ正式な婚約の儀を取り行った訳では無いが、口約束だとしても昨夜リアはちゃんとオレの婚約者となった。

 まぁ、元々平民の間では婚約の儀なんて執り行わないから、口約束で十分なんだけどな。


「と言う訳で、リアはお前とはデートしない」

 態々告白の翌日、朝一番で朝食を食べている最中の此奴に向かって勝利宣言をしてやった。

 ふふん。


 そうすると何故か此奴はクスクスと笑い始めた。

 リアん所から入手したであろうベーコンを使ったベーコンエッグに手を伸ばしながら、「漸くですか」としたり顔。解せぬ。

 所詮こいつのリアへの気持ちなんてデートできなくなっても気にならないくらいのいい加減な物だったのか?それとも雇い主であるオレには敵わないと早々に白旗を上げただけなのか?

 此奴の顔に穴が開けとばかりに睨んでやっているのに、平然とビスケットにバターを塗りつけ、それを温かい紅茶へ浸して口に入れている。

 行儀の悪い食べ方だけれど、紅茶の表面に浮かんだバターの薄い膜。アレを飲むと美味しいんだよなぁ。平民になってから覚えた悪い癖だが、此奴も同じような事をしているんだな。


「まだ気づきませんか?ユーリ様?」

 呑気な顔してクスクス笑いを止めない。それに普段は様付けしないのに、明らかに煽る様に様を付けて来る。此奴なんなんだ?


 一通りテーブルの上にあった朝食を食べ終えたアーベルは「ふぅ~」と大きな溜息を吐いてハタとオレを見つめた。

「セシリオ様ですよ。セシリオ様」

「???」

「だからセシリオ様なんですって、このシナリオを考え付いたのは」

「シナリオ?」


 アーベルはまたクスクスと憎らし気な顔で笑い、「俺がアウレリア様に気があるのは本当ですよ。頭も良いし、顔も良い。何より国有数の宿屋等をたくさん持っている資産家でもありますしね。でも、セシリオ様は、アウレリア様はあなたと結ばれるべきとお考えでしたよ」と悪びれずに言う。


 オレの顔が憮然とした表情になるのは致し方無いと言えるだろう。

 此奴はライバルが上司だとしても遠慮なんてする玉じゃない。それどころか喜び勇んで闘いを仕掛けてくる奴だ。オレ様が上司なのにな。

 両腕を胸の前で組み、アーベルの向かいの椅子の背もたれに思いっきり背中を預けてちょっと仰け反るくらいの姿勢になる。


「お二人ともお互いがお互いの側にいたいと思っているのに、どちらも何のリアクションも取っていなかったじゃないですかぁ。アウレリア様は適齢期なんですよぉ。このまま放っておけば、大公様の精鋭の一人でもあるアウレリア様を自家の利益の為に取り込みたい貴族や、嫁にもらって自分たちの事業の幅を広げたい商人、純粋に彼女の容姿や性格に惚れ込んで求婚してくる若者が出て来てもおかしくないって分かりませんか?」


 アーベルの言っている事は間違っていない。

 リアが男性にとって魅力的なのは事実だ。

 学園の中でも一番の美人だった。学年一位を入園から卒園までキープし続けた頭脳の持ち主でもある。

 料理だってうまいし、イベントやレストランなんかを起業する発想や手腕だって持っている。

 世界中の男が彼女の指に自分の指輪を嵌めたいと思ってもおかしくないくらいだっ!

 でも反対にこれだけ色んな能力を持ち、それを支える財力まで自分で用意できるアイツに引け目を感じず付き合える男もそんなにはいないと思うがな。


 オレが無言で考えを纏めている時間が長かったのだろう、オレの返事を待たずにアーベルは続けた。

「だから、セシリオ様が俺に二人の縁を取り持つ様に頼んで来たのさ。まぁ、アウレリア様があなたに気が無いのなら、俺と結婚してもらえたらとは思っていたけどね。まぁ、あれだけ甲斐甲斐しく料理をしに通って来て二人で一緒に楽しそうに食事しているのを見たら、彼女が断るとは思えなかったがね。ただ、彼女自身がまだ恋愛をする態勢になっていないみたいだから、あんたが彼女にプロポーズしても断られるのにワンチャン掛けてはいたんだけどねぇ。無事、婚約できたみたいだから、おめでとうと言っておきますよ」


 何かセシリオと此奴の掌の上で・・・・って感じで癪に障るけど、オレの王家への復讐も終わったし、一段落着いたっちゃ着いたしな。リアが適齢期って事も考えると今がベストタイミングである事は否めないなぁ・・・・。


「まぁ、兎に角、今夜のサッカー観戦はお前一人で行け!」と気恥ずかしさを隠しながら言い、アーベルの返事を待たずに、奴のアパートから出た。

 閉じた玄関扉の向こうから「クククク」と言う密やかな笑い声が小さく聞こえた。


 まぁ、良い。

 今夜のデート、否、デートなんて言葉使いたくない。

 お出かけの約束?

 まぁ、それが無くなっただけで御の字だ。


 今日はリアに似合う婚約指輪を買って、出来るだけ早い時期にアイツの両親に許しを得なければいけない。

 指輪は2軒目に入った宝石店で大粒の星にも花にも見えるカットのダイヤを真ん中に据え、両脇を小ぶりのエメラルドとダイヤが連なりながら彩っている上品なデザインの物を選んだ。全部で5粒の宝石を一つの指輪に並べた感じだ。

 土台のプラチナリングも大粒ダイヤの両脇でくるんと囲った様な洒落たデザインだ。

 この指輪の調整が終ったら、リアの御両親への挨拶だな。


 プロポーズは勢いでしたけど、ご挨拶はちゃんと準備万端で行いたい。

 手土産を今から色々考えておかないとなぁ。


 リアの妹にはチョコレートなんかどうだろうと思ったけど、結局はフローリストガーデンで作っている物になってしまう。それなら家でいくらでも食べられるだろう。

 なら、身に付ける物が良いかな?

 綺麗なワンピースとかどうかな?学園に通っているはずだから制服替わりの白の綺麗なワンピース。

 うん!良いかも知れない。サイズはリアに聞けばいいか。


 ご両親には消え物が良いのは分かっているんだけど、チョコやアイス等のお菓子にしても、お酒にしてもフローリストガーデンで作っている以上の物は無いしなぁ・・・・。フルーツにしたってあそこの温室で作ってる物より上等なモノは無いし・・・・。

 ものすご~く悩む・・・・。

 でも、結局、フローリストガーデンのチョコ詰め合わせと茶葉になってしまった。

 せめてもと言う事で、チョコと茶葉が詰められた箱には王都の老舗で購入した綺麗なティーカップセット、5セットを一緒に詰めて持って行くことにした。


 リアの指輪と妹さんのドレスが仕上がり、前以て訪問の約束を取り付けたのがそれから4日後。

 多少緊張気味のオレに優しく寄り添うリアと共にレストランの上にあるリアの実家を訪れた。

 先に訪問の目的をリアからご家族へ伝えてもらっていたので、玄関でのお出迎えの時点から大歓迎された。


 綺麗なワンピースを箱から出してクルクル回っているエイファ。

 豪奢なティーセットまで入った箱に驚きつつも良い感触の御両親。

 これは反対されずに認めてもらえるかなと顔色を窺っていたら、「ユーリ君とウチのアウレリアがいつ一緒になるか、ウチの家族も固唾を飲んで見守っていたんだよ」とギジェルモさんに言われたのには驚いた。

 リアもオレも恋愛はまだ先って思っていたけれど、周りは生暖かくオレたちを見守ってくれていたんだな。

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― 新着の感想 ―
婚約発表からやたら闇王に未練がましいの不穏だなと思ったら気のせいじゃなかったのかよ… 他人のもの好きになっちゃうから裏切られてきた結果があらわになってしまった主人公の性癖、結局繰り返すならオチも察する…
子供(学生)時代が終わって、新聞王偏は大人(社会人)偏とも言えるので、物語の雰囲気が変わったと感じる人がいるのは仕方ないです。社会人の私としては学生時代と違うのは現実で実感しているから違和感はないので…
新聞王編になってから、この物語が全く違う話に感じて正直本当につまらなくなった。それでもそれまでは面白かったこともあり、読み続けたが苦痛しか感じなくなったのでこれ以上は読む気にもならず、ここでやめます。…
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