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闇王もといユーリの新聞王への道15

 この交通機関が万全ではない時期に、セシリオが態々オレの様子を見にヤンデーノに来てくれた。

「アディ、元気だったかい?」

 此奴は未だにオレを昔のアディ呼びして来る。

 前にそれを指摘したら、「最初は僕も気を付けていたんだけどね、もう前程アディにとって危険な世の中でもなくなって来たし、ついつい前の愛称が口を突いて出ちゃうんだよね。まぁ、愛称だから問題ないかと思って。ねっ?」と悪びれずふふふと笑ってたよ。


「しかし、アウレリアの言った通りになったね」

「うん、そうだな。相変わらずアイツの発想とかどうやって湧いているのか不思議だよ」

「発想もだけれど、未来を知っているかの様に時々予言みたいな感じで話したことが的中するよね」

「まぁ・・・・傍から見たらそう思えるだろうなぁ」

「と言うと、アディから見たらアウレリアの予言的中率は低いと?」

「いやぁ・・・・。低いか高いかは分からないけれど、予言と言うよりは流れの読みとか仕組みを考えたりとか、そういう能力が異常に発達しているんだと思う。ちゃんと未来を知ってると言うよりは、そんな感じに見えるなぁ」

「なるほど。イベント企画の時も先にあれこれ考えて予防策を練ってたりしてたもんね。学園の先生方でさえ思い付かない様な予防策とかをね」とセシリオは目の前に置かれたティーカップでゆっくりと紅茶を飲んだ。

「ん?これってアウレリアの手作り?美味しいなぁ」と、お茶請けにと出されたリア手作りのクッキーを齧っている。これはフローリストガーデンでも売ってないから、あそこの商品に詳しければ直ぐにリアの手作りだと分かるだろうなぁ。

 まぁ、普段なら此奴は酒を所望するだろうが、こっちはまだ仕事の時間だから紅茶にさせてもらったので、せめて茶請けはリアの手作りをというオレの心遣いだよ。


「で、アディ。アウレリアとはどうなんだい?最近、君の部下が彼女の周りをウロチョロしているみたいだけど?」

 セシリオはこういう情報をどこから得ているんだろう?

「約1名いるな」

「元貴族の総領息子だけあって頭の回転も良いし、容姿だってお前ほどでなくても相当良いからな」

「・・・・」

「あれは女にモテるぞぉ。で、アディとしてはそれを放置するの?」

「なわけないだろう」

 リアに助けられて、そして事業が順調に行き始めてからずっと、オレは結婚するならリアだと心に決めている。

 それなのに彼女を口説いていないのは、仕事で忙しい彼女にまだ恋をする準備が整っていない様に見えたからだ。

 セシリオが「フフフフ」と意味ありげな笑いをし、懐から取り出したタバコに火をつけ、「ぷはぁ~」と煙を吐いた。

 ここ最近セシリオが覚えた新しい習慣だ。


「あっ、煙ダメ?」

「一応、ここでは誰もタバコは吸わないから禁煙とか考えてなかったよ。まぁ、後で窓を開けて空気を入れ替えれば良いだけだから吸っていいぞ」

「アディも吸う?」と新しい紙巻タバコを作ろうとしてくれたけど、前にリアがタバコは体に悪いと言っていたので断った。

 まぁ、タバコって高価な物なのでウチの国では貴族や大商人くらいしか吸わないから、タバコを吸える貴重な機会ではあったんだけれど、リアが嫌がる事をやる事もないかなぁ。


「しかし今回の鉄道襲撃事件で思ったが、原稿のやり取りを鉄道だけに頼るのは些か不安があるなぁ・・・・」

「あっ、それ、僕も思ってた事なんだよね。アディってさぁ、各支所で鳥のテイマーと錬金術師を雇う気はあるかい?」

「ん?何か案があるみたいだな」

「うん。鳥に原稿の送付をやってもらうんだよ」

「でも、それって途中でもっと大きな猛禽類なんかに襲われたら原稿が届かなくなるのでは?」

「うん、だからちょっと時間をズラして2羽飛ばしてもらうことにしたら?」

「なるほど!でも、一つの支所で扱っている複数の原稿を一度に送付するから結構重たくなるぞ。大型の鳥でないとダメだろうし、そうなると各支店毎にそんな人員用意できるかなぁ?テイマーってめったにいないだろう?」

「小型の鳥だったら結構いると思うよ」

「だとすると原稿の重さが・・・・」

「ふふふふ。アディ、どうして僕が各支局に錬金術師をって言ったと思う?」

「ん?」

「投影機を使うんだよ。投影しなければ判読できないくらいの小さな文字で書き込んだ出来るだけ軽量化した極小の映像板なら小型の鳥でも運べるじゃないか。で、元々の原稿を小さくするのは錬金術で出来るだろう?」

「おお!なるほど!一つの紙面の中でそれぞれの画像や文字の縮尺を変えるのは錬金術では無理だけど、一律同じ縮尺にして縮めるのは出来るなぁ」

「だろう?」

「凄いぞ。セシリオ、お前冴えているなぁ」

「ふふふふ」


 早速、隣の大部屋で記事の推敲のため自分のデスクに座ってウンウン唸っていたマルクスを呼んで、この話を進めるように指示を出した。

 リアもそうだけれど、セシリオやボブの仕組みを考える力は凄い。こういう案が出て来る事もスゴイが、案だけで終わらず、その案を実施するには何が必要かまでちゃんと考えてくれるところが更にスゴイんだよなぁ。机上の空論では終わらせない手腕と言ったところか・・・・。

 

「ところで今、王都に居る貴族たちは王家にどんな対応をしているのか、知ってたら教えて欲しいんだ」

「うん。アディがそういうの知りたいだろうと思ってここまで来たんだ。勿論教えるよ」


 セシリオがプカリプカリとタバコの煙を燻らせながら教えてくれた事によると、王子たちの逃亡については白い目で見つつも、王位継承権上位の者の安全を図るための行動と言うことで比較的受け入れられているらしい。まぁ、それも貴族の間ではと言う事で、平民はまた別だそうだ。まぁ、そりゃそうだろう。

 しかし、貴族の間でも国を捨て逃亡しようとした王子二人については王位継承権をはく奪する方が良いと言う意見が主流らしい。


 逃亡も成功していたならもっと違った扱いになったのだろうが、失敗してしまうと責任を負う気概の無い王族と言う扱いになる。

 魔法スキル持ちの王子が二人しかいない現王は直系の継承者を失った事になる。

 この国の王族、貴族はその地位を魔法スキル持ちの男子に継承させるのが普通だ。

 全く男子の継承者が途絶えてしまうと、娘に婿を取らせて継がせると言う事例も無いわけではないが、一夫多妻制を良しとしているこの国で男子の継承者が一人もいない貴族家と言うのは珍しい。

 普通、その様な状態になる前に側室を迎えるからだ。

 ましてや王家になると男子の後継ぎをもうけるのが仕事の一つとも言えるから、側室を大量に侍らせる事が当たり前になっている。

 それなのに王女が多く、魔法スキル持ちの王子は二人しかいないのが現王で、その王子二人が揃って国外逃亡に失敗したのだ。

 これはもう王の弟たちかその子の王位継承権の順位が上がると言うことだ。

 まぁ、オレの狙いはそれさえもはく奪させて、王家を潰す事だけどな。


 セシリオは1週間オレの家に滞在した後、今後の王都の動きを教えてくれると約束して王都へ帰って行った。

 最後に、「急がないとアウレリアを他の奴に取られるよ」としっかりオレに釘を刺してだけどな。

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