51
その日の昼食時マノロ伯父さんはガストさんと話し合った内容をみんながいる前で教えてくれた。
「天火は毎日夕方使わせてもらえる事になった。時間にしたら、夕食の馬車の到着1時間前くらいになる。徒歩のお客が来始める時間帯だな。だから、最初の内は店に残った1人、つまり俺だな。俺がめちゃめちゃ忙しくなるので、できるだけ早い時間に天火を使って戻って来て欲しい。それとアウレリアはパイを焼いたらそこで仕事が終了だ。いつもの様に家に帰ってくれていい。最悪、すぐにサーブできる煮豚を多めに作るっていうのも考えているが、まずはステーキで様子見だな」と、伯父さんは真直ぐに私を見た。
「材料は、このままフリアンの所にも頼むが、卵はバンディの所と、カマチョの所にも頼んでみようと思う。まぁ、値段にもよるがな。どっちにしてもフリアンの所と値段は違ってくるが、フリアンの所は鶏の購入時にウチから金を出してるから、他の所と値段が違っても文句は言わないだろう。バンディたちの所へは、この後俺が行っていろいろ決めて来る。まぁ、今は一回しか焼く事ができないから、俺や爺さんが慣れるまでは、フリアンの所のだけでいいと思うが、まぁ、先々の事を考えると今から話をつけていた方がいいだろう。パイづくりは明日から本格的に始めたいと思っている。みんなそれでいいな」
全員が頷いてパイを作るぞー!という機運が盛り上がって来た。
やるぞー!おー!
夜の部の野菜の下拵えについては爺ちゃんも手伝ってくれると自分から申し出てくれたので、その分、パイを作る時間が確保できるはずだ。
私に関しては今までも、夜の営業が始まったら仕事を切り上げて家の方に帰ってたんだけど、パイを焼く時間だけ仕事の時間が増えた形だ。
その事にクリスティーナ伯母さんが気づいてくれて、お昼寝の時間をもう少し長めに取る事で仕事の時間と体力の調整をすることになった。
「ウチの名物料理は全部アウレリアが開発してくれたが、今度からは俺や爺さんも案を出して行こうと思う。料理人三人でしっかり話し合いながら新製品をドンドン作って行こう!」
マノロ伯父さんのいつにないやる気に満ちたコメントで家族会議が終了し、夜の営業になった。
伯父さん、私の事もちゃんと料理人に数えてくれたんだねぇ。
それが何気に嬉しくて、ついついにやけてしまう。
こうやってパイ製造についていろいろ話が固まった今夜、最初のお客さんは『麦畑の誓』の面々だ。
「アウレリア~」とランディが家まで呼びに来てくれたので、一緒に食堂まで行くと「お久し振り。頼まれた物色々持って帰ったよ。渡すのは夕食が終ってからでいいかい?」とミルコさんが口一杯に煮豚を入れたまましゃべって来たので、唾を避けながら頭だけで相槌を打った。
ありがたいことに『麦畑の誓』は多くの植物を持って帰ってくれた。
夕食の後、みんなで冒険者ギルドへ行き、報酬額の確定と支払いをすることにした。
料金は、私のお小遣いで十分足りた。
珍しいと思える物は2つだけで、残りはこの辺でも手に入る物が多かった。
トウモロコシとレモングラスの葉がこの辺で見かけない物だったが、穀物とハーブという嬉しい収穫だった。
『麦畑の誓』のみんなが持って来てくれた戦利品、何が嬉しいかと言うと、これらの植物に私がスキルで作りだしたいろんな種や苗を交ぜて、伯母さんの許可を得て裏庭で好きな物を育てる事ができる様になった事だ。
明日の朝、いろいろと植えてみよう!
あ、寝る前に畑に2つくらい畝を増やしておこう。




