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闇王もといユーリの新聞王への道7

 秘密結社を組んだ。

 オレとセシリオ、ランビットがメンバーだ。

 今日は新聞社がお休みなので、ウチのプライベートビーチのボートハウス内に係留してあるヨットの中にオレたち3人とリアだけで集合した。

 ヨットを沖に出せばより秘密を守れるのだろうけれど、ヨットを動かすにはクルーが必要になる。

 必要な時に契約できるクルーは居るのだけれど、彼らにオレたちの活動を知られたくないので、密談はボートハウス内のヨットの中だ。


 リアに聞いた所、労働者なる者たちを呼び込んで簡単な扇動を数年継続して行えば、王制転覆も可能だとのこと。

 つまり『お前たちは王家や貴族に搾取されている。このままで良いのか?お前たちの子供たちも不当に搾取され続け貧しさから抜け出せないぞ?何故王家があり、何故貴族があるのか?彼らがお前たちに何をしてくれたか?いや、何もしてくれないどころか、お前たちの産み出した資産を横取りしているじゃないか。それだけじゃなく、あいつらはお前たちを虐げているではないか!』と言った内容のビラを配れば良いと言っていた。


 その際、どこにその様なビラを配るかに気を付けないと、ビラを配った者の命がなくなると忠告された。

 もちろんビラを作った者も。

 そうリアに脅されたが、為政者の立場で見るとビラ関係者は自分たちの有利を覆す火種になりかねないので、見つけたら潰すだろうなと言うのは容易に想像できる。

 伊達に貴族だったわけじゃない。

 貴族たちの考えそうなことは分かる。それはセシリオも同じだろう。


「となると、アディ、ビラを配る者とビラを作る者は出来るだけお互いを知らない様にした方が安全だな」

 セシリオは仕組みを考えるのが好きなので、ビラについてもすぐさま考えを巡らせた様だ。


「だって考えてもみてよ。衛兵とかに捕まりやすいのはビラを配布する者で、作る者ではないと思うんだ。捕まった者は拷問を受けるだろうから、ビラを作ってる者や場所を知っていたらゲロってしまうかもしれないだろう?後、新聞で使っている活字は使っちゃだめだ。同じ活字だとすぐ足が付く」

「なるほど」


 結局、ビラ配りはスラム街にいる様な者で、今の生活に不満を抱いており、自分の生活のためには荒っぽい事も辞さない者を使う事にする。


「でも、何か隠れ蓑が欲しいなぁ・・・・」

 セシリオのその一言で、リアが「じゃあ、プロスポーツを展開したらどうかな?それも新聞社主催で」と身を乗り出した。


「スポーツ?」

「うん。スポーツ。ドッジボールみたいな試合をするの。それもプロのチームを作って」

「ドッジボールかぁ。人気出ると思うよ」とランビットは乗り気だ。

「えっとね、ドッジボールはルールが簡単な分、盛り上がりに欠けるから、そうねぇ・・・・野球?ボールとバットとベース、あ、グローブもかぁ。ちょっと必要な道具が多すぎるかな?う~ん、サッカーならゴールポストとボールだけで出来るかぁ。じゃあ、サッカーにするかぁ」とまたまたオレたちには理解できない事をブツブツ言うリア。

 一生懸命考え込んでいる時は眉が八の字になる。

 これは学園時代からの此奴の癖だ。

 普通、眉が八の字になると険しい顔になるのに、此奴の場合はちょっとすっとぼけた顔になる。

 ヨットに持ち込んだ中くらいの石板にチョークで長方形を書き始め、真ん中に縦線、長方形の両脇に小さな長方形を描いて納得したみたいだ。今、此奴、自画自賛中の様だ。こういうの偶にあるんだよな、此奴は。


「例えばなんだけれど、これは、そうねぇ、仮にサッカーと言う名にしましょうか。各チーム11名でやるスポーツ・・・・遊びなんだけれどね、ここ」と言って、長方形の両脇の小さな長方形をチョークで指した。

「ここがゴールでね、こんな風に網が張っていると思って」とゴールとか言うものの絵を描き始めた。


 そして事細かにサッカーとやらの説明を始めた。

 確かにドッジボールよりも複雑で、一度の説明だけじゃ理解できない。


「一番良いのは実際に一回やってみる事なんだけれどね、まぁ、それは追々。でね、例えば王都とゴンスンデにプロチームを1組づつ作るの。で、ヤンデーノやモンテベルデーノなんかにもサッカー場を作って、各地で試合をさせるの。で、1年間に何回か試合してより多く勝った方が優勝するの。で、その大会を新聞社が開催するの」

「で、そのプロチームはどこの誰が作るの?」

 ランビットは懐疑的な顔だ。ドッジボールは知っているから想像できるみたいだけれど、サッカーはまだ良く理解できていないらしいし、ただボール遊びをしてるだけの人の生活を支える奇特な人なんているの?って感じだろうなぁ。

 オレだってそう思うからな。それにコレがどうビラ配りと関係しているのかも想像も付かない。


「そこはみんなに一緒に考えて欲しいんだけれど、例えば最初はウチのホテルチェーンとユーリん所の新聞社がそれぞれチームを作っても良いけれど、できれば大会を主催する新聞社でない方が良いかもね。補欠も入れて20人くらいをただただサッカーをやる為に雇うって事は相当のお金が必要だから大きな商店とか貴族にチームを作ってもらえると嬉しいんだけれどね」

「それってお金が出て行くだけでは?」

 仕組みを考えるのが習い性になっているのかセシリオは直ぐに問題点に気付いた様だ。


「だから、試合は入場料を取るのよ。もちろんサッカー場内には飲み物や食べ物を売る店も併設するから、そっちからもお金は入るわね」

「なるほど!入場料かぁ」

「そう。で、新聞社は賞金を優勝チームに出すと謳って両方のチームに年間決まった数、試合させるのよ。もちろん賞金は勝った方のチームだけに払うんだよ。でも、試合の都度、入場料の何割かを両チームへ支払えば、チームも運営できると思うの。で、これが流行れば他の商店なんかも独自のチームを作ってくれる様になると思うので、そういうチームも参加させるの。元々大きな町で巡業する為に新聞社でサッカー場を作るから、そう言うチームにサッカー場の貸し出しも出来ると新聞社の方にも収入が増えるわね」

「おおおお!」


「同じチームの選手は同じユニフォーム、つまり服を着せるんだけれど、例えばウチのホテルチェーンのチームとすると王都フローリストガーデンチームとかって名前にして、背中とか胸にフローリストガーデンって文字やマークを入れて宣伝を兼ねる事もできるわねぇ。で、王都とかゴンスンデとか町の名前を冠に付けるとその町の人は自分の町のチームを応援するでしょう?だからその町で試合をすれば、応援する人がたくさん試合を見に来てくれて、入場料でもたくさん儲かるって寸法なの」

「「「おおおお!」」」

「相変わらずお前は凄いなぁ。発想が普通じゃないよ」

「うん。アディの言う通り。昔からアウレリアのアイデアは凄いよな」

「うん!ですね。でも、これがどうビラ配りと関係するの?」


「このサッカーチームがあっちこっちの町に遠征をする時、ボールとか選手の荷物とか鉄道を使って運ぶと思うので、その時を利用してビラを運ぶのよ」

「「「なるほど!」」」

「複数のチームが居ると言うことはどこのチームが運んでいるか分からないだろうし、そもそもビラはサッカー場では配らない様にすれば、娯楽とビラが繋がっているなんて誰も思わないでしょうしね」


 マジで此奴なんなんだ。ビラについてもスゴイと思ったけど、プロのサッカーチームにしたってルールを既に頭に思い浮かべているらしい。

 細かい所はみんなで考えようとか言っているけど、ほぼほぼルールなどはもう頭に浮かんでいる様だ。

 いつになったらオレは此奴を越えられるのか!

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