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闇王もといユーリの新聞王への道6

「デルさんがやっているのは営業でもあるけれど、コンサルタントみたいねぇ」とリアが言いクスクスと笑う。

 オレの事務部屋にあるソファにゆったりと座っている。

 しかし、コンサルタントとはなんぞや?

 学園時代にも聞いた事あったっけ?


 デルも知らない言葉の様で、リアが「顧客の抱える問題を明らかにし、その解決方法を模索し、提示する事を生業にしてる人のことよ」と説明してくれるが、提示ってなんぞや?

「相手に示す事よ。言葉でだったり、書面でだったり、図だったりと示す方法はたくさんあるけどね」


 此奴の頭の中、どうなっているんだろう?

 そして何と魅力的な発想だろう。

 此奴の見た目は母親譲りらしく頗る良いが、本当の彼女の魅力はこの発想力だと思う。

 そして言葉を道具として使う能力も魅力的だ。


 言葉を作っているのかどこかの文献から引っ張りだしているのか知らないが、ただの考えが言葉で表されると、とたんにくっきりとした形を持つ様になる。

 ホテルと言う言葉然り。

 こいつが作ったホテルと言う言葉で、それはただの宿屋ではなく、合理的な設計をされた最新型の宿屋だと国中が既にイメージしている。

 それだけでなく高級感や安全性も含んでいるイメージを客たちに与えているのだ。

 一つの言葉だけで此奴が言う営業?広告?の効果があるのが凄いんだ。

 言葉を運用する方法が秀逸なんだろうなぁ。

 そこは此奴がデルに施した研修の中で言っていた、キャッチフレーズみたいなもんかな?いや、それはちょっと違うかな?


 デルの営業も順調で、新聞記事もそこそこ周りの信用を得て来ているし、何より娯楽の無い世界だからこういう情報にみんな飢えているとはリアの言だ。

 本当に此奴の頭の中を覗いてみたいよ。 


 後半年で此奴は自分の生業に戻って行く。

 って、まぁ、今も半分以上はホテルやレストラン事業をやっていて、あっちが本筋なんだけどな。

 新聞事業はオレの事業でもあるが、此奴も一枚噛んでいるので半年後も色々と相談に乗ってはくれるだろうが、今の様に2週間に一度会うと言うのは難しいだろう。

 今だってきっと無理をして協力してくれているんだろうから。

 でも、この手を離したくはない。


 新聞事業の方は相談はするだろうが、オレだけでもなんとか経営できる自信はある。

 でも、此奴の顔を見る機会が減るのは嫌だ。

 それに此奴がウチに来る度に作ってくれる美味しい料理も食べたい。出来れば毎日でも。

 どうすれば此奴をずっとそばに置けるだろうか?


「あ、ユーリ、次回なんだけれど大きなイベントをテーマパークでやるので、ちょっとこっちへ来る事が難しいの。ユーリがナイトル村まで来てもらえるならなんとか時間を作る事もできるけど、でもわざわざヤンデーノから移動してもらっても割ける時間はあまりないと思うから、次回はパスでいいかな?」

 此奴が心配そうな顔をしていないと言うことは、此奴から見てもオレの新聞づくりは及第点を貰えてるって事だろう。


「それって先月言ってたひよこイベント商会のやつか?」

「そうなの。今までやった事のないイベントだから、やっぱり最初は張り付いていた方が良いと思うし、何よりペペ君に頼まれちゃったんだよね。あっ、イベントの記事は私が書いて送るね。イベントの広告もイベント終了までは毎号載せてね」

「ああ、それはもちろん良いけど、オレもイベントを見てみたいな。テーマパークもまだ一度も行った事ないしなぁ」

「今からだとホテルに部屋を用意する事は難しいけれど、社員寮でよければ一部屋くらいは用意できると思うよ。だけど、イベントには多くの貴族も来るから・・・・」

「おい、リア、もうオレの面が割れても叔父も失脚したし、クラッツオ家の領地を要求するなどしなければ何も起こらないと思うぞ」

「あっ、そうかぁ。もう大丈夫なのね」

「まぁ、そうは言っても痛くもない腹を探られるのも業腹なので、行くなら比較的人が少なめの時が良いかもな」

「あ、それならイベント期間のちょうど真ん中くらいだったら初日や最終日にくらべ比較的人は少なくなってると思う」

「おおう」


 こいつが持ってる全ての事業をオレは把握していない。

 いや、名前や大体何の商売なのかは知っているが、詳細を知らないのだ。

 塔からの脱出や新聞事業など、此奴には本当に色々と助けてもらった分、オレも此奴の力になりたいものだ。

 それには此奴の多岐に渡る仕事を把握しておきたい。

 これはランビットに頼るしかないかな?

 此奴がこっちに来ていない時に会えないか、こっそりランビットに尋ねてみよう。


「ユーリ様、後発のスキャンダル専門紙、結構売上げを伸ばして来ていますよ」

 デルは広告の効果を謳って営業をしているので、他社の売り上げもちゃんと頭に入っているみたいだ。

 普通紙だけじゃなく、スキャンダル誌にも広告は載せているからな。

「ウチの半分くらいは売れる様になったのか?」

「いえ、まだ1/4くらいですが、2社を合わせれば結構な売上げになってると思います。元々ウチの読者となり得る人たちを持っていかれているってことですし・・・・」

「でも、それって、もしかしたらウチの読者が同時に他社のスキャンダル紙も買っている可能性はあるんじゃないかしら?販売経路が違うから、他社のデータが無いのが難点よね」

 リアの言う事も一理あると思う。

 スキャンダルが好きな者は似た様な新聞でも、値段が安ければ複数の新聞を買っている可能性はあると思うぞ。

「まぁ、ウチの新聞やスキャンダル誌は物凄い数の読者を抱えていますからねぇ。新しい新聞社が出てきても、やっぱり信用度が違いますから」とデルもウチに絶大な信頼を置いてくれているらしい。

 社員が会社を信頼しているっていうのは、デルの様な仕事をしている者にとって大事な要素の一つだと思う。

 社員すら信頼しない新聞に、誰が高い広告を載せたがるのかってことさ。

 

 後、後発組として2つのスキャンダル専門の新聞社が出て来たのも、経営者として何とかしないとな。

 2社の内1つは最初普通の新聞も出していたのだが、売れ行きが悪かったらしく、早々に手を引いて今やスキャンダル一本に絞っているみたいだ。まぁ、経営者としてはそういう判断もありだと思う。

 リアが言うには他社が出していた普通の新聞は客観的な文章で書いてない記事の見本の様なものだから、読者は小説を読んでる気になり、記事に信ぴょう性が薄れていたから売れないんだとか言ってたな。

 研修の時も厳しくウチの記者たちに教え込んだ様だが、客観的文章と言うのが大事らしい。

 

 最初、オレはそこまで客観的な印象を与える事が大事だとは思っていなかったが、こうやって悪い見本があると、此奴が言っていた事を漸く理解する事ができたよ。

 美文過ぎると脚色が入ってる印象になるんだな。


 でも、スキャンダルの方は文章よりもスキャンダルそのものが魅力なので、証拠の画像やネタを拾って来る事こそが大事になる。

 そういう意味ではウチのスキャンダル専門の記者2名はとても優秀だ。

 粘り強く取材をしてくれて、時々ではあるが特ダネを持って帰ってくれる。

 それをセシリオが王都で纏めてくれているから、ありがたい限りだ。

 

 こんな風に新聞業が順調だと、そろそろ念願の王家転覆に着手したいが、まぁそれも、テーマパークのイベントが終ってからだな。

 此奴が離れて行ってしまう半年後までには、何とか形にしたいものだ。

 これに関してもセシリオに協力を仰ぎたいし、ランビットの手助けも必要だ。

 よし、取り敢えずはランビットとセシリオに連絡しておこう。

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