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「なぁ、オレの名前何にしたら良いと思う?」と聞かれたけれど、それって私が決めても良いのかしら?


 ゴンスンデへ出張した際、メグん所で待ち合わせて色々打ち合わせた時に闇王様が聞いて来た。

「だってお前、オレを呼ぶ時、アドルフォ様って言い辛そうだしな。多分心の中では闇王とか呼んでそうだがな」とニヤリと笑われた。

 ぎくぎく。

 やっぱり闇王様、ご自分が影で闇王様と呼ばれているのを知っていたのね。

 まぁ、有名なあだ名だからね。


 それにしても未だに私が闇王様と呼び続けているのを知っていたとは・・・・。

「み、短い名前の方が呼びやすいかと・・・・」

「短い名前か・・・・。で、どんな名前が良いと思う?」

 あくまで私に命名させようとしているの?何で?


「これから長い付き合いになるからな。お前が名前を付けてくれ」

 平民になっても相も変わらず上から目線な闇王様。


 最初ヤミから始まる男の子の名前ってないかなぁって考えていたけれど、なかった。Oh my god!

 それ以外で闇王様に合う名前・・・・。

 ボブとかの様な短い名前ではなく、もっと長い名前の方が闇王様に合う気がする。

 かと言って長すぎるのも貴族っぽい。

 自分で言ってる事が矛盾してるなぁ。

 なら比較的長めの名前で、愛称が短いやつ?


 フェリーペくらいの文字数が良いかも? 

 で、突拍子も無い名前だとかえって記憶に残るので、あまり珍しくない名前。

 ウイリアム、ダビッド、オーガスタ、ユリシーズ・・・・ユリシーズ!


 短くもなく、長くもなく、そこまで一般的な名前ではないけれど、珍しい名前でも無い。

 他人に名前を付けるのって何か居心地悪いんだよね。

 責任取れないし・・・・。

 何か謂れがあればいいんだけれど・・・・。


 うんと・・・・ユリシーズの謂れ・・・・。

 ユリシーズと言えば前世の記憶だとトロイの木馬で有名なオデッセイアの主人公の名前。

 闇王様はこれから新聞王となり情報で世界を制す。そして王制を転覆させる心算ならe-mailのトロイの木馬も含めて、闇王様の動きを表している様で良いんじゃない?

 まぁ、かなりのこじ付け、しかも私にしか分からないこじ付けだけど、何の引っ掛かりも無く名前を付けるよりはこじ付けがあった方が私の気分的に安心。


「では、ユリシーズはどうですか?」

「ユリシーズなら愛称はユーリか。まぁ、いいな。じゃあ、それで」

「じゃあ、ダンヒルさんにユリシーズでヤンデーノの市民権とユーリ様の商会立ち上げの手続きをしてもらいます」

「よろしく頼む。必要な費用はもちろん自分で出すから、これ以上お前が出す必要はないぞ」

 闇王様は、もとい、ユーリ様は現金を手にしてから、掛かった費用を全て出そうとする。

 セシリオ様が闇王様へ送った現金の額を知っているので、私も遠慮はしない。

 だって、金額がどうこうではなく、今の闇王様には私たちに負い目を持ちたくないと言う事が大事みたいだから。

 でも、それは私たちを仲間と認めていないと言うわけでは無い。

 ちゃんと仲間として頼るべきは頼るけれど、お金を持っているのに他人に出させるのは心苦しいと言うところなんだと思う。


「あ、それと様付けで呼ばないで欲しい。オレはもう平民なんだし、お前の事業に寄り掛かった形で事業を展開するんだから、こちらがお前をお嬢様呼びするくらいが当たり前だ」

「え?お嬢様呼びは止めて下さい・・・・」

「なら、お前も様付けは無しな」

「・・・・はい・・・・」


 新聞の話が決まってからのユーリの瞳は輝きが違う。

 平民に落ちるのも何とも思っていない感じだ。


「ユ、ユーリ、何時ヤンデーノに引越しますか?それと新聞の事務所、どこにしますか?」

「屋敷が出来上がればすぐにでも引っ越すつもりだ。船を考えている。で、事務所はオレの屋敷にするか、お前ん所のヤンデーノ店の事務所を間借りするか悩んでいる。前にも話した様に、原稿の収集や新聞の搬出は鉄道を使うからな。もしかしたら駅に2階でも作ってそこを事務所って言うのもありかもな。事業が軌道に乗るまではお前の手伝いが重要になるから、お前が移動しやすい場所って言うのも大事だしな」


「ヤンデーノ内であればどこでも大丈夫です。もし、最初だけ王都で色々されるならウチの王都店の従業員寮も使ってもらえます。客室でも良いのですが、あそこは貴族の出入りが多いので・・・・」

「ああ、分かっている。数年後には王都も出入りする心算だけれど、今はまだジェラルド叔父やその関係者にオレの顔を見られる愚は犯したくない。だから今はヤンデーノの中で活動をしたいんだ」

「分かりました。では、記者となる者の面接は王都で私が行います。書かせた記事で雇うかどうかの判断はユーリの方で決めてください」

「ありがとう。ただ、記事の良し悪しはお前も一緒に考えてくれ。オレは新聞と言うものを読んだ事がないし、お前の方がはっきりしたビジョンを持っていそうだしな」

「わかりました」


 闇王様が、あ、いえ、ユーリの目がランランとしてる。

 やる気が出て来たのね。


「それと今夜セシリオがオレのアパートに来るから、お前もランビットあたりを連れて一緒に来い。新聞についてセシリオやランビットの協力を仰ぐ部分について認識の共通化をしたいからな」

「はい」

 メグたんの実家での会合が終ったので、手荷物を纏めていたら「あ、アウレリア。お前、オレの名前を考えたんだから、オレの将来について責任持てよ!」とユーリがニヤリと笑った。

「!」

 ええええええ!

「んじゃぁ、セシリオと会ってくる」

 メグとその家族に挨拶しながら、メグの実家の雑貨屋を後にする闇王様の広い背中が憎い。

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― 新着の感想 ―
これは闇王様の初恋がリアというあややクラブの面々の想像が正しかったということかな アドリアンヌ様には残念なことだけど
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