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テーマパークが建ち、ナイトル村店の営業も安定してから早くも2年が経った。
ひよこ商会のペペ君ががんばってくれて、相変わらず客の入りがすごいのだ。
子供がたくさん来るのかなと思ってたら、結構大人が来園してくれている。
観覧車で愛の告白っていう宣伝を王都で打ったら、あっと言うまにプロポーズをする定番の場所になってしまったし、『悪霊の館』では未婚の貴族の男女が手を繋げられる数少ないチャンスと言う事で、これまた大人気。
それでペペ君ところでは複数の豪商の子息とご令嬢を王都から特別列車に乗せてテーマパークまでのツアーを組み、彼らの人間模様をずっと映像に収め、その後編集してテーマパーク内で放映をしている。
人気番組だ。
こういうイベントって参加者が少ないかと思いきや、もしこのイベントがキッカケで半年以内に結婚する場合は、ウチの高級ホテルチェーンのいずれかの店舗で披露宴を半額で行う事が出来るって銘打ったら、大人気なのだ。
中には下級貴族の子女も参加したいと言われるが、流石に貴族の人間模様を映像に撮って放映する訳にはいかないので、ウチやペペ君ところにとっては旨味が無いのでやっていない。
もちろん、このイベントツアーの参加者はウチのホテルに宿泊なので、そういう意味でもウチとしては美味しい。
まぁ、これは私が考えたジェスチャーゲームというプチイベントを不定期にテーマパークで行い、その一部始終を映像として撮り、数本の番組としてパーク内で放映して好評を博しているのがヒントになったんだと思う。
映像保存機は大活躍で、イベントがある度にちゃんと記録しており、イベントが無い時にはイベント会場で映像を放映しているのだが、弁士制度を取ったので、ひよこ商会の所の弁士が大人気になっている。
弁士は今や憧れの職業の一つと言える。
開演してから2年、開催したイベントと言うイベントは全部記録を取っていて、しかも映像保存機2台で撮影しているので、映像を時々切り替え繋ぎ合わせて1本の記録映像に仕上げているので、かなり面白いモノになっている。
最近のペペ君は、この撮影技術や編集技術を学びたいって言ってるよ。
テーマパークの夜の電飾パレードを見たいがために、ウチのホテルに泊まる人も多いし、イベントの時は大勢の人が押し寄せるので、そういう時はウチのホテルから臨時で軽食スタンドなども出している。
お陰様で宿泊だけでなくケータリングでもかなり儲けさせてもらっている。
ビジネスホテルも高級ホテルもとっても順調だ。
もちろん王都のレストランも、調味料工業団地もだ。
工業団地で作られる調味料には最近干ししいたけの粉や、鰹節の粉、ウスターソース、マスタード、ケチャップ、バター、焼肉のたれ等、ラインナップが増えまくった。
これも私のスキルとノエミの探求心のお陰だ。
私がスキルで呼び出し、鑑定した調味料を、新たなラインを立ち上げたり、既存のラインの切り替えをしたりして、ノエミが効率良く作ってくれる。
ステーキ醤油なんて4種類も作っているし、焼肉のたれも3種類あるよ。
すきやきの割下もあるし、最近はこれって調味料?と思ってしまうフリカケまで作っている。
ホースラディッシュでワサビ擬きもあるしね。
本当に充実して来たよ、調味料!
ホテルの方も王都は客室フロアの内、2フロアはコンドミニアムにして、全室埋まっている。
王都での宿泊施設の稼働率が少し低かったので、苦肉の策だよ。
でも、コンドミニアムは貴族の子弟に大人気で即完売。
今や他にもコンドミニアムを建ててくれって要望があるけど、もう造らないよ。
ポンタ村の『熊のまどろみ亭』もランディが結婚し、家族も増え、駅前と言うこともあり今やとても大きな食堂になっているし、モンテベルデーノへも鉄道を繋げたので、『熊のまどろみ亭』の客も鰻登りらしい。
父さんはお世話になったモンテベルデ伯爵へ鉄道敷設で恩返しが出来たと、とても喜んでいた。
もちろんヘルマン様もね。
そうそう、ヘルマン様が紹介してくれたパズル職人の2人は学園卒の秀才さんたちだった。
頭が良いからパズル作りもお手の物だ。
ヤンデーノの大先輩やサミュエルと一緒にウチの出版部門を纏めてくれているので大助かりだ。
サミュエルのパズル作りの作業量の多さを見て配置移動をし、ランビットの秘書は別の人になった。
今度はランビットより年上の男性なんだけれど、とても気さくな人なのでランビットもすぐに彼と打ち解けた様だった。
卒園してから3年以上経って、漸く留学組がバカンスに戻って来る。
アドリエンヌ様もお喜びだろう。
早速、同窓会をしないとだね。
バカンスと言っても移動に相当時間が掛かるらしく、王都滞在期間は2週間と言う短さなんだそうだ。
フェリーペがそう教えてくれた。
果たして例の2人に、同窓会に参加する時間はあるのだろうか?
それにしてもアドリエンヌ様とは卒園以来お会いした事がないので、是非お会いしたい。
ウチのホテルやレストランにも来られないって、お貴族様の御令嬢って家から一歩も出してもらえないのが普通なのか、それともアドリエンヌ様の家がちょっと特別なのか・・・・。
まぁ、それも闇王様たちが一時帰国して、みんなで集まれば会えると思う。
そうそう、フェリーペ、婚約したんだよ。
親戚の女の子で、やっぱり商人の子なんだって。
「僕は、フェリーペはリアと結婚するものと思ってたよ」とボブに言われたけれど、私は学生時代の時から彼に異性を感じた事はないんだよね。
まぁ、中身が大人なのに、子供に恋をするかというと、ちょっとね。
メグたんも例のゴンスンデの幼馴染とそろそろゴールインするんじゃないかなぁ。
あ、ノエミ、結局ゼットとくっついちゃったんだよね。
私がしょっちゅう見掛けていたランビットとのランチ風景、あれ、ノエミが開発中の調味料の味見をお願いしていたらしい。
ちぇっ!恋愛だったら面白かったのに・・・・。
ダンヒルさんがノエミの事をどう思っていたのかは未だに分からないんだけれど、ダンヒルさんも結婚したんだよね。
まぁ、彼の年からしたら当然結婚している年なので、珍しい事では無いんだけれど、まずダンヒルさんが結婚して、その後でノエミが結婚したので、2人の間に何かあったのか、はたまた何もなかったのかは永遠に謎だ。
ちなみにダンヒルさんのお相手は、大公様のところのメイドさんなんだって。
こうしてみると、私たちももう結婚してもおかしくない年頃なのかもしれない。
現代日本では考えられないくらい早いけれど、こっちは平均寿命が短いからね。
まぁ、この年で結婚してもおかしくはないよ。
ただ、まだ私自身には結婚のケの字もないけどねっ!




