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結局、テーマパークを作るにしてもしないにしても土地だけは購入しておこうというダンヒルさんの意見に沿う形で、ウチのナイトル店側とは反対側の湖畔一帯とナイトル店を繋ぐ道を作る土地も購入した。
近隣に宿を建てられると元々のナイトル店への集客という目的から外れてしまうので、近隣の麦畑も広く購入した。
ナイトル村は元々麦の生産地なので、テーマパーク予定地の周りも麦畑なのだ。
テーマパークそのものが建つ土地だけでなくその周辺の土地まで購入しているため、遊ばせてしまう土地が結構な広さになる。
それらの土地を遊ばせないため、その区画の元々の持ち主であれば土地使用料を取らない形で作付けが可能と言う条件を保証した。
しかも該当の土地で収穫する麦が規定の品質と安全性をクリアしていれば、ウチのホテルチェーンで適正価格で買い取ると約束したので、元々の持ち主たちも土地を売り渋ると言う事は無かった。
私ならお金を積まれても土地を売りたいとは思わないけれど、支払った金額が法外に高い金額だったのと、テーマパークとその境の土地以外は作付け可としたので売ってくれたんだろうなぁ。
「リアお嬢様。これってペペと会合を持った方が良いと思いますよ」とランビットが言う。
「何故?」と聞くと、「ペペの商会は私達が学園でやっていた様なイベントをやりたいから立ち上げたって言っていたので」との回答が帰って来た。
おおお!それは今、正に私たちに一番必要なサービスじゃないの。
と言う事で、ペペ、ベレン、父さん、ダンヒルさん、ランビット、私の5人で会合を持つ事にした。
何と、ベレンちゃんはペペと結婚の約束をした婚約者兼商会の共同経営者なんだそうだ。
まだ幼いのにと思っていたら、婚約くらいならこのくらいの年で珍しくも無いって言われちゃったよ。
そうか、そうなんだ・・・・。
まぁ、二人とも下級と言えど貴族家の子だもんね。
庶民とはやっぱりこういう所が違うのかもね。
「これ、是非、ウチの商会でやらせて下さい!」
一通り説明したり、私の描いたラフ画を見たペペは一も二も無く机の上に身を乗り出した。
「ええ。ペペ君所にお任せしたいと思ったので今日お呼びしたんですけど、結構な規模になりますが大丈夫ですか?」
「テーマパーク内の人の手配と、イベントの企画運営だけでいいんですよね?」
「と言うと?」
「土地の購入はもうそちらで済ませている」
「はい」
「建物もそちらで建てられる」
「その心算ですね」
「とすると、園内で働く人をこちらで雇って、リア先輩の言うところの研修をしてから働かせるのがウチの仕事で、もう一つはイベントの企画を定期的にリア先輩たちに提示して、それで許可が出たらイベントをウチで運営すればいいんですよね?」
「うん」
ペペはにまぁっと笑った。
「これってウチにとってはとっても美味しい仕事です。リア先輩、ありがとうございます」
ぺぺが頭を深々と下げると、ベレンちゃんもその横で一緒に頭を下げた。
こちらの世界では頭を下げる事は習慣としては無いのだが、感謝する気持ちが強いと自然に頭って下がるもんなんだなぁとポケぇッとしてペペたちを見ていたら、父さんが私の二の腕をちょんちょんと突いた。
はっとして、ペペたちに頭を上げる様に言った。
「園内で働く人と言うのは、清掃の担当もいれば、入場時に切符を売る人だったり、園内で案内する人だったり色々です。動物のふれあい広場なんて動物の世話なんかも入ります。そういう種種雑多な業務全部に研修を施すって大変ですよ」
私はちょっと心配になってペペにこの仕事を請けてもらいたいのに、相手を尻込みさせる様な事を言ってしまった。
それでもペペはニヤっと笑って、「でも、リア先輩はどんな係が必要で、それぞれの係にどんな業務をしてもらうとか、そのやり方までアイデアがもう浮かんでいますよね?」と悪代官みたいになってるよ。
まぁ、ねぇ。施設は地球で出来た初期の遊園地、係の人達の動きはネズミーランドの様に掃除の時まで踊る様に魅せる演技をしながらしてもらおうとは思ってるよ。
ただ、ネズミーランドの様に従業員の移動の為に地下通路まではちょっと作れないかなぁ~。
「ジェットコースターと言うのが、アトラクションとしては一番安全に気を使う所なんだけど、定期的な安全点検は鉄道会社にお願いしようと思っているので、他のアトラクションの技術面もこちらで手配します。なので、ペペ君たちの商会では接客や掃除を担当する人の手配と、その教育、実際に開園してからもちゃんと彼らが働いているかの確認、イベントの企画提案。そしてイベントで必要な告知活動、それと人手もそちらで用意して欲しいの。園内で売る食事等はウチのホテルで用意するので、ペペ君所はそれを園内で売るのが仕事になるわね。もしかしたらちょっとだけ温めたり、焼いたりくらいはしてもらうかもしれません。後、そちらの従業員の寝泊まりする所はウチでは用意しないので、そちらで用意してください」
「リア先輩。従業員寮を作るのは分かるのですが、そのぉ・・・・」
「ペペ君。元手が足りない場合には、私に相談して下さい。出来るだけ要望に応える心算です」と父さんがペペの言いたい事を汲取って先に貸し付けの申し出をしてくれた。
私は大公様のお陰で、今まで一度も資金の事を心配した事がなかったので、そこまで考えが及ばなかったけど、父さんはちゃんとわかったみたいだ。
「「ありがとうございますっ」」
ペペとベレンちゃんは今度は父さんに深々と頭を下げた。




