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野菜の下拵えをしながらパイについて1人で悶々と考えたが、料金に関わる事なら店主である伯父さんの意見が絶対だ。
これはまず相談しようと思い、昼食時に伯父さんに聞いてみた。
「伯父さん。この前、聞かれたくず肉料理だけど、バターもできたのでそろそろ作ろうと思います」
「おう」
「で、小さなパンみたいな物の中に具を詰めるつもりです」
「ほう」
「そうすると、軽くて、冷めても美味しくて、手を汚さずに食べれるものが出来ると思います。そうなったら、お店で出すだけじゃなくって、先に買っておいて移動中小腹が空いた時に手早くパパッと食べれるので、家でご飯を食べない人にも売れる様になると思います」
「それはすごいな」
「で、作り方を2通り考えたんですが、どっちの方法も良い点と悪い点があります」
「どんな?」
「一つはバターを使って作るパン生地なんですが、これで作るとサクサクのパンになります。でも、天火が必要になります」
「天火かぁ・・・・」
「うん、パン屋さんにお金を払ってでも焼いてもらうか、家の調理場に天火を作るかになると思います」
「う~ん。で、もう一つの方法は?」
「バターは使わないけど、作ったパンを油で揚げます」
「揚げる?」
「そう、あの鍋の上までひまわり油を入れて熱してから、パンを入れて揚げるの」
「ラスクみたいなもんか?」
「いいえ。全然違います。パンはふっくらするし、使うのは動物性の油じゃなくってひまわり油か他の植物性の油になるんです」
「ふ~む。どちらにしても値段が高くなるってことだな」
「そうですね・・・・。でも、どちらの案も、更に発展させればお店の利益になるとは思うんですが・・・・」
「お前・・・・利益なんてよく難しい単語知ってたな」
「リアは難しい本を学校でも読んでるから、いろんな言葉を知ってるよ」と、横からランディが自慢気に口を挟んだ。
「お前の方が年上なんだから、早く同じ様な本を読める様になれよ」と伯父さんに言われ、こりゃ堪らんとランディはすぐに調理場から逃げて行った。
「で、どう発展させるんだ?」
「油を使う方なら、お肉や野菜も油で揚げる事で新しいメニューが出来ます」
「旨いのか?」
「はい。とっても美味しくなると思います」
「で、天火の方は?」
「もし、家の店に天火を作るのなら、それを使った複数のメニューを考えて使用頻度を上げて、投資した額の回収を促す事ができます。その場合も、メニューが増えるのでウチの宣伝にもなります」
「なんか難しい言葉が多くて、良く理解できんが、それはパンも家で焼くということか?」
「パンも焼ける様になるけど、それが目的ではなくて・・・・。つまり、天火を使っていろんなメニューを作って、それで売上げが上がれば、天火の設置に掛かったお金も割合早く取り戻す事が出来ると思います。今のところ天火でつくるなら、お肉料理の代わりになる様な料理とか、甘いおやつならアイデアがあります。あっ!油の方でも材料が揃えば甘いお菓子ができます」
「天火を設置すると、パン屋のガストと揉めそうだなぁ」
「そうじゃのう」と爺さんも思案顔だ。
「油もあの鍋いっぱいにいるのなら、相当な値段になるだろうしなぁ」
「じゃが、一度鍋いっぱいに油を入れておけば、それからはずっとその油を使えばええんじゃないかのぅ?」
「あ、爺さん。油は数日でやり替えないといけないんです。油が空気に・・・・、油をずっと使うと、油が悪くなって、最悪人が死にます」
「なんと!」
「なので、油の方法はずっとその油代がかかります。でも、天火の方も設備だけじゃなくって、薪代がかかります」
「薪は油に比べたらずっと安いから比較にならんが・・・・」
伯父さんはどっちの案にするか、それともどっちの案も採用しないか、じっと考えている様だった。




