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結局、賭け事は制約が設けられ、それが遵守されている場合は営業がOKになった。
そしてその制約も全てこちらが以前提示した1日あたりの上限額設定や、1か月中の上限日数だったりするので、あまり痛くもかゆくもない。
上限日数も月7日間はカジノへ顔出し出来ないってだけで、それも賭場が変わるとチャラになるらしい。
つまり、一か所での入場日数制限なのだ。
なのでウチのカジノでは会員証を作って来場した日を記入している。
もし誰かが会員証を忘れたフリをしたら、来場控えを渡した上で、来場台帳の方にしっかり記入する。
だって会員だから個人情報はこっちにちゃんとあるしね。
誤魔化し様が無いんだよ。ふふふふ。
今までカジノで遊ぶためにずっと宿泊していた貴族の中には月の内、7日間カジノが出来なくなるので、その間はウチのホテルを離れる事になるだろうけど、例えば10月25日から11月の7日まで続けてカジノに行かない事にすれば、何度もウチのホテルを出たり入ったりする必要が無いので、楽だしね。
ウチとしても大して痛手ではない。
ダンヒルさんはほくほくしている。
だってこれで資金繰りがとぉぉっても楽になるんだからね。
と言っても資金繰りに関しては父さんやダンヒルさんが中心に管理してくれていて、私は彼らが提出した帳簿や資料を見ているだけなんだよね。
だって正直言って、私はどんぶり勘定なのだよ。
もちろん帳簿付けなんかは私の発案で実施されているんだけれど、ちゃんとした帳簿の形とか、複数ある支店なんかの帳簿付のシステムなんかはダンヒルさんが考えてくれたんだよね。
私が前世で複式簿記を知っていたら良かったんだけど、そうじゃないのでお小遣い帳の様な感じではあるのだけれど、他の商店が江戸時代の大福帳の様な1冊の帳簿で管理しているところ、ウチでは現金取引と掛買い売りの帳簿は別々にしているし、各施設や支店で管理台帳を各自で作っている。
多くの商会や商店などでは、支店があっても全体のどんぶり勘定を行っている所、ウチの場合はどの施設がどれくらい稼いでいて、どれくらい稼いでないかを把握できる様になっているのだ。
何度も言うけど把握しているのは父さんとダンヒルさんね。
私は把握できないよぉ~。
だからいつもダンヒルさんの報告だけが頼りなんだよ。
それと掛買いをさせてもらっている農家や牧場等には、仕入れ先ごとの帳簿を付けてもらっている。
小麦とか豆とか直ぐには腐らない物はグランドキッチンで一旦全ての店舗で必要な量を購入してもらい、利益を上乗せせず、運送料のみを上乗せして同じ会社内で取引し、各施設や店舗に配布してもらっている。
その方が仕入れの代金が安く済むのと、品質の管理が一括して出来るので楽なのだ。
だって大量買いすれば大抵の農家やお店は安くしてくれるもんね。
もちろん各レストランや食堂でも調理長が食材の品質などはチェックするのだが、一度グランドキッチンで確認しているのでダブルチェックになり、品質の管理がしっかりするので良いシステムだと思う。
で、購入した食材は比較的土地の余っているポンタ村郊外のグランドキッチンに併設されているいくつもの倉庫で保管しつつ、ゼットの配送計画に従って鉄道で各店舗に輸送されるのだ。
帳簿の問題は、ウチはレストランだけ、宿だけという訳ではなく、製造業である調味料や酒の醸造や、グランドキッチン等があるので結構複雑なのだ。
梅園は委託農業の扱いだしね。
営業形態も様々なんだよ。
店舗毎に複数の台帳がある。
仕入台帳、売上台帳、買掛金台帳、売掛金台帳、出納帳、顧客台帳、従業員台帳など結構な数の台帳があるんだよね~。
私プロデュースでランビットに穴あけパンチとか、2穴ファイルとか、ファイルのタイトルを書き込み貼るためのシールなんかも錬金術で作ってもらっているのが台帳や帳簿を付けるのに大活躍している。
元々、紙を大量に使うので、紙の大きさも統一しているからね。
最初、紙などは外部の紙工房から購入していたんだぁ。
紙工房さんは、ウチの仕事は面倒くさいと注文の度に愚痴を言っていたらしい。
だって納品するモノ全部、凡そA4の大きさにカットして納品しなくてはいけないのが面倒なんだそうだ。
羊皮紙なんかはカットが難しいからね。
だから最近はウチで使う分はランビットに錬金術で植物紙を作ってもらっている。
設計図さえちゃんとあれば、全部同じ大きさになるし、魔力はサミュエル君のだしね。
最近はゼムクリップやダブルクリップも作ってもらってるよ。
色んな大きさのカラフルなゼムクリップや、ダブルクリップの方は水玉模様とか花柄とか色々デザインで遊んでたりする。
もちろんこれは私の趣味だから、実務的には必要の無い工程なんだけどね。
ランビット、サミュエル、私の我儘に付き合ってくれてありがとう。
今度はホワイトボードとかマグネットも作ってもらいたいなぁ~。
事務所や貸会議室にあったら便利じゃん?
まぁ、文房具品が揃っているから、各支店などでも管理台帳を作るのが楽なんだよね。
だって、紙の大きさを揃えるだけでなく、台帳の表枠なんかも錬金術で紙を作る時に入れる事ができるから、例えば買掛金台帳ならば統一の書式を作っておけば、ファイルに入れて、全店舗で同じ様式で記入できるから、私や父さんが内容を把握したい時、どこに何が書いてあるか直ぐに分かるんだ。
で半年に一度、全ての店舗の管理台帳を王都店の事務所に運び入れ、数か月かけて帳簿に書きかえる。
まぁ、書きかえると言ってもコピーするのではなく、各管理台帳の合計金額とかを帳簿に転記し、管理台帳は今の所王都店の倉庫に保管している。
でも、この先何年も営業すれば管理台帳も帳簿も数が増えて行くのは明らかなので、グランドキッチンの横に新しい倉庫でも作ってそこで保管しようかなぁ~。
ありがたいのは鉄道は一応別会社で所有者が大公様の精鋭全員なので、私が経営の管理をしなくて良い事だ。
とは言っても鉄道は旅客輸送以外では殆どの場合、ウチの食材や料理なんかの搬送に使っているので、大口顧客はウチなんだよねぇ。おほほほ。
ペドロさんが魚を運ぶのに鉄道が欲しいと言われている様なんだけど、港町まで鉄道を敷く程大規模な量で漁をしていないとのことで、ガルフィールドさんが未だGOサインを出していない。
だから殆ど私が私物化しちゃっていると言っても過言では無いのに、帳簿は付けなくていいんだよね。
いやぁ~、楽ちん楽ちん!




