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メグたんからも返事が来た。
結局、留学組とアドリエンヌ様を除いた全員で、ウチの王都店の貸会議室で同窓会をする事にした。
ヘルマン様は王都に館があるので良いが、勇者様は王都に自宅が無いのでウチのホテルに泊まってもらおうかとも思ったけれど、同窓会とは別に女子会もしたいので、ウチの家に泊まってもらう事にした。
貸会議室、料理、ヘルマン様と勇者様の移動費は私が持つ事にした。
「え?費用を全部リアが持つの?俺たちもいくらか負担するぞ」
「ありがとう、フェリーペ。でも、全部ウチの持ち物だから手配も簡単だし、費用も原価分くらいなので問題ないよ」
「そうかぁ?でも原価は掛かってるだろう?」
「大丈夫!来年以降に同窓会する場合は皆から費用を徴収するから。初年度だけ、ウチのホテルや鉄道の感想を聞きたいから私が持つね」
「まぁ、リアがそう言うのならいいけど・・・・でも、いつでも費用は負担する気があるから、気が変わったら声を掛けてくれよ」
「うん、ありがとう」
私は貸会議室と食事の手配をダンヒルさんにお願いし、ヘルマン様と勇者様には鉄道の往復切符を送った。
そろそろ冬も終わり、春先になって来たから花もいっぱい咲いているだろう。
会場は大きな丸テーブルを入れたら部屋の半分が埋まってしまうくらいの小さな会議室を押さえてもらった。
6人で食事だから精々が大きな丸テーブルと椅子が6脚、飲み物を置いておく脇机があれば十分。
巷で咲き誇る色とりどりの花を買ってあっちこっちに飾る様に指示を出した。
同窓会は来週だから、それまでに細かい所も決めておきたい。
テーブルクロスは黒の上に、落ち着いた黄色の二枚重ね。
食器は真ん中が白で、外側の縁5センツ程度がぐるっとキラキラした黒灰色。
その上にテーブルクロスと同色の黄色のナプキン。
テーブルの上にはクロスの色と併せてオレンジ色、白、黄色と艶々の葉っぱなどを混ぜたブーケを飾ってもらおう。
メニューの指定はしているけど、今回実際に調理するのはホテル王都店の調理場だ。
春先で気持ちの良いお天気が続くはずだからメインは白身のお魚。
これはなんとなく私個人のイメージなのだ。
春先の白身魚や春キャベツは何故か青空とセットでイメージしちゃうんだよね。ふふふ。
春先の白身魚とくれば、以前、レストラン開業2年目以降でないと客に出せなかったポワレだ。
アミューズは見た目が可愛く綺麗な方が良いよね?
春っぽい感じで桜色と若草色のジュレのグラデーション。
後は、食欲を刺激する様に一口グラタン、小さなミートボール1つで3種のアミューズになるね。
続いてサラダはレタス、玉ねぎ、トマト、キュウリ、黒いオリーブと言ったごく普通のサラダ。
これはいつもの小皿ではなく、がっつりとサラダだけの一皿にして、お野菜食べたぞ!感を出したいなぁ。
そしてスープは春キャベツと自家製ウィンナーのコンソメスープ。
色的に赤のパプリカのさいの目切りを浮かべてもカワイイかも。
デザートはチョコレートパイはどうだろう。
今までチョコレートケーキは出して来たけど、デザートパイは『熊のまどろみ亭』で出している様な一人分の大きさで焼いたものがほとんどだ。
ここはホール1つ分の大きさで焼いて、目の前で切り分けたら新しさが強調できるかな?
少し量が少な目かなとも思ったけれど、白身魚のポワレにはじゃがいもや人参のグラッセ付けちゃうから大丈夫でしょう。
バターたっぷりで太りそうだけれど美味しそうなお皿になるはず。
食事が終ったらホテル内の見学でもいいし、ホテルの庭の散策でもいいかも。
あ、学園に交渉して、元あややクラブの部室を見学させてもらうって言うのもありかも?
その辺はフェリーペに頼んでみようかな?
それともヘルマン様経由で、お貴族様からの要請として学園にお願いした方が話が早いかな?
同窓会まで2週間しかない。
学園に話を通すなら、早めに動いてもらわないとだね。
早くみんなに会いたくてしょうがない。
メグん所のお店は繁盛してるかな?
ボブやフェリーペは実家の商売に慣れて来たかな?
ヘルマン様はお子様が生まれたんだっけ?どうだったっけ?
ああ、会ったら聞きたい事だらけだ。
フェリーペが学園と話しを付けてくれて、元あややクラブの部室見学も問題無くアレンジでき、後数日で同窓会という日、父さんが態々ホテルの私専用の事務室に顔を覗かせた。
「アウレリア、カジノの事だけど新しい動きがあったのを知っているかい?」
「新しい動き?」
「そうだ。賭け事全面禁止は厳しすぎると多くの貴族と一部の平民が立ち上がったんだ」
「えええっ!?」
「まぁ、立ち上がったと言っても武力行使とかでは無くて、陳情書を山ほど提出したらしい」
「ああ、ギジェルモ様、たった今私の手元にもその情報が届きました」と手紙らしい紙を手にダンヒルさんも会話に参加して来た。
「ダンヒルさん、そっちの報告書にはどの様に書かれているのですか?」
父さんは自分の持って来た情報との乖離があるかどうか気になった様だ。
「えっと、陳情書を数名で同時に提出して、その数が30件以上とのことです」
「そうか。私の方は前宰相様からの情報で、同じ内容でしたよ。流石に王様も今回の事は行き過ぎたかもと悩んでいらっしゃるらしい。賭け事もある程度の規制を設けつつ、解放して頂けるかもとのことです」
「おおお!それは良かったです」
私もダンヒルさんと一緒にうんうんと頭を縦に振っていた。
元々ウチはカジノに自己規制を掛けて経営していたわけで、今回の問題で更に規制を掛ける事も視野に入れていると報告しているので、問題なく営業再開できる様になるのではないか?
私たち3人の期待はぐんぐん上がって行く。