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 昨日何か気に掛かったんだけれど、それが何か気付かないまま、喉に小骨が刺さった様な居心地の悪さを感じつつ、日々の仕事を片付けて行った。

 なんとかその日の仕事も終わり、帰宅し、家族で夕食を摂り、その後、お風呂に入る事にした。


 ぽちゃん。

 石鹸入れに入れておいた石鹸にいつの間にか手がかすったのか、湯船の中に石鹸が落ちた。

 一生懸命顔をお湯に浸けない様に片手で探っていた時、何の脈絡もなく小骨の正体が分かってしまった。


 前の宰相!

 そうだ、代替わりはしたけど王様との縁はまだ続いているはず。

 体調が悪くて引退したとかでなければ、前宰相にお願いすれば良いのではないか?

 そう思い付いたら、普段だったらゆっくり入っているお風呂をザザっと音を立てて出て、自分の部屋へ。


 明日、ダンヒルさんにどの様に説明するかを考え始めた。

 レストランが帝国との宮廷晩餐会で料理を提供した事をダンヒルさんは知っているだろうか?

 あの時は当時の料理長に意地悪されて、豚肉料理はご法度と言う事がウチの店まで伝わってなくて、急遽メインのメニューを変えて大慌てした記憶が・・・・。

 それを知った宰相さんは御詫びとしてウチに可成りの便宜を図ってくれたのだ。

 覚えていてもいなくても、無事、晩餐会を成功に導いたウチに対して、当時、好印象を持ってくれているはずだ。

 その証拠に、時々ウチのレストランに食事に来てくれているらしいと聞いた事がある。


 寝る時になってもちょっと興奮してしまい、中々寝つけなかったが、寝坊しちゃうとそれだけ対処が遅くなるので、無理やり目を瞑った。

 ベッドの中で目を瞑ると子供ボディの私は直ぐ寝ちゃった様だ。

 あれだけ眠れなくて四苦八苦したのに、素直に目を瞑れば良いだけだったなんて・・・・。


 事務所に着くなりダンヒルさんに前宰相について話したら、「これはギジェルモ様にお願いした方が良いかもしれませんね」と言われた。

 当時はまだダンヒルさんは私たちと働いておらず、店の代表の父さんとの方が面識があるだろうし、ダンヒルさんの言う通りだと思った。

 

 私は事務所に到着したばかりだったが急いで家まで戻った。


「父さん!」

 食材用の温室に居た父さんを見つけ、大きな声を出して駆け寄った。

「アウレリア、どうしたんだい?」

「あのね、カジノの事で相談があるの」

 そう言うと、園芸道具を一つに纏め、見習いのドムに声を掛けて所定の場所に仕舞う様に言い付け、私と一緒にウッドデッキにある席に座った。


 カジノに関する新しい法律とそれがウチにもたらした問題については父さんも知っているので、話が早かった。

 前宰相には父さんが話をしてくれる事になった。

 ありがたい事に前宰相は王都に住んでいて、年重ねているけどまだ矍鑠としているそうだ。


 前宰相が本当にこの問題の解決の糸口になるかどうかは分からないけれど、今の私たちにはこれくらいしかやり様が無いのだ。

 ただ、お貴族様と言うのは会いたいから直ぐに会えると言うものではなく、事前に根回しが必要になってくるらしく、父さんだけでは心もとないのでダンテスさんにも協力を仰ぐ事になるのだが、ダンテスさんが前面に出てしまうと、この一連の動きが大公様のお願いと取られる可能性がある。

 だって高位貴族である前宰相なら、ダンテスさんが大公様の執事の一人である事は知っているだろうしね。

 だからダンテスさんからは助言を得るだけに留める事になった。


 私たちは大公様のトラの威を借る形で要望を通したいのではなく、如何に法律に沿いながら、その定められた範疇の中で、自分たちが望んだものを保ち続けるかに力を入れたいのだ。


 その為の一日当たりの遊興費上限だし、必要であれば月当たりの入場制限を設ける事だって視野に入れているのだ。


 今、ウチの店のカジノは閉店しており、高級ホテルとしてだけ営業しているが、どこやらの侯爵様の所の賭場は、法律無視でまだ営業しているらしい。

 それもあって、話がややこしくなっているのだ。

 法律に定められているにも関わらず、それを無視して営業を続ければ、そりゃぁ、それを取り締まる側にとって心象は悪くなる一方のはずだ。

 ウチはそんな事していなくても、今、この国でカジノという言葉はトレンドだし、カジノイコール賭け事って言うのも社会の中に定着してしまっているものね。

 だからウチが営業していなくても件の侯爵のせいで、賭け事のイメージはどんどん悪くなってる気がする。


 そんなこんなでダンテスさんは表に出ないまま、父さんにあれこれ指図・・・・助言をしてくれ、それを元に父さんが動く事で、前宰相との会食の約束を取り付けようと動いているのだ。


 矍鑠としていらっしゃるとしても長距離の移動は面倒なはず。

 となると自然と王都内で接待となる。

 レストランか高級ホテルのどっちかだけど、なんなら王都ホテルの一室を会議室として誂え、そこで夕食を食べながらって言うのも良いかも。


「会食に向けて、メニューはお前が考えておくれよ」と私の頭を父さんが撫でた。

 成功させるための会食・・・・。

 前宰相様の好物は何だろう?

 薄味が好き?それともしっかりした味付けの方が好み?

 好きな食材は何かな?

 固いものよりも柔らかいものの方が良いかしら?

 何より苦手な食材って無いのかな?


 私はこれらの事をダンテスさんに調べてもらう様にお願いした。

 やっぱりそこは日本人のお・も・て・な・しを元にしちゃうよね。

 心行くまで堪能してもらいたいので、事前に調べられる事は全部調べて貰わないとだね。

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