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「よぉ!久し振り」
「うん、久し振り~。元気だった?」
「何とかな。今日はコンビニの件は俺が話を聞いて来る様に父さんに言われたんだ」
「うん、それは聞いているよ」
「おっ!ランビットも出席するのか?」
「おう、久し振り!」
男子2人で何か複雑な指タッチをして挨拶している。
コンビニでの売り上げや、テナント代、これから新規に売りに出したい物なんかについての話し合いの席なのだが、今回はフェリーペの父親ではなく、フェリーぺと王都にあるフェリーペん所の本店の支配人の2人で参加するとのこと。
こちら側は、私とランビット、ダンヒルさんが出席する。
ここは王都のホテル内にある私専用の事務所だ。
ふかふかのソファに座ってもらい、早速紅茶とちょっと摘まむためのチョコチップクッキーをラウンジ担当の給仕が持って来てくれた。
「これこれ!あややクラブを出てからはリアの作るお菓子、食べられなくなってたからなぁ」とフェリーペは言うが、実はこのクッキーは私が焼いたのではない。
普通にウチのグランドキッチンでデザート担当君が焼いてくれたものだ。
まぁ、言わぬが花なので、敢えて訂正は入れない。
「ぽりぽり。さくっ」
みんなでしばしクッキーを楽しんだ後、会議に入った。
フェリーペは実家から持って来た紙を見ながら報告してくれる。
「ゴンスンデのデパートで売り出している絵皿、あれと同じ感じの物を各地で作って、ウチのコンビニで売り出したいと思ってる」
「いいんじゃないかなぁ」
「デ・フピテル工房に聞いたら、元々のアイデアはリアだって言ってたので、ウチでそういう商品を扱っても良いのかどうか知りたいんだ」
「いいよ。ゴンスンデに関してはウチで独占するけど、それ以外の町や村の絵皿を作って売るのはそっちでやってもらって構わないよ」
「そっか」
「バスタオルとかバスローブ、スリッパは今まで通りの売れ筋商品なので、数は増やしこそすれ、減らす事は無い予定なんだ。後、馬車型の皿もまだまだ需要があるので、卸してもらいたいんだけれど、やっぱり数を増やす事は難しいのかな?」
「う~~~ん」
バスタオルとかはウチがリネン工房と契約して作ってもらっているものをコンビニに卸して売って貰っているのだが、どのくらいの数、どのタイミングで、どのコンビニで仕入れるとかはフェリーペんところで管理してもらってるんだよね。
お子様ランチ皿は私のスキルで呼び出しているから、今の所そんなに数を作りたくないんだよね。
「各コンビニで月数個でいいんだ。できたら頼むよ」
「う~~~ん。まぁ、それについては追々考えてみるよ」
OKした訳じゃないけど、断っているわけでもないのでフェリーペの顔色は良い。
その後は、ウチの調理場から卸している軽食なんかの数や値段の話になり、最後にテナント料と鉄道を使った商品の搬入などの確認をして話が終るかと思ったら、「パズルの売れ行きが頗る良いんだよね。もっと種類を増やして欲しいという声もウチの店で良く聞くらしいよ」と言って来た。
コンビニにとって新しい売れ筋商品だ。
「種類って言うと?」
「今、出ているのはお絵描きロジックが5種類、ナンプレが8種類なんだけれど、どれもやり終わったお客もいて、早く別の問題を出版してくれって言われてるんだ」
「そっかぁぁ」
ランビットの方を見ると、大きく頷いている。
別の全く新しい種類のパズルの事かと思ったら、既存のパズルの問題の種類を増やして欲しいという意味らしく、こっそり胸をなでおろした。
『間違い探し』とか『クロスワード』とか新しいタイプのパズルを追加しないといけないのかと戦々恐々としちゃったよ。
初級のパズルはランビットの秘書サミュエル君が作っているので、恐らくそろそろ新しい問題が出来上がるのだろう。
ランビットが頷いているというのはそういう意味だ。
「しかし相変わらずお前は面白いモン作るの天才的だなぁ。俺もお絵描きロジックは大好きだ」
「ありがとう」
「ところでペペの話は聞いているか?」
「ん?会合を持ちたいって話?今はちょっと時間が取れないかなぁ・・・・」
若干身を乗り出して2人の方を見つめたら、フェリーペが「アイツ、商会を立ち上げたんだけど、卒園後は本格的に活動するからお前んところでも使って欲しいとよ」と残りのクッキーをポンポンと口に入れては食べ、入れては食べしながら教えてくれた。
「どんな商会なの?」
「なんでもお前が昔言ってたタレント?そういうのを集めて色々する商会らしいぞ」
「ええええ!タレントぉ?」
「なんだっけ、アナウンスとか演技とか何とかだっけ?今だって王都には劇場があるから俳優はいるけど、そういうのを集めてるらしいぞ」
「え?俳優って劇場付きじゃなかったの?」
「売れっ子はそうみたいだけど、ペペが言うには端役専門のは仕事がある時だけの契約みたいでさぁ、そういうの集めて各地で巡業って言ったっけ?ほら、お前が前にあややクラブで言ってたやつ、あれをやるんだそうだ。それで相談したいって言ってたぞ」
「俺ん所には結構前からお嬢様に会わせて欲しいって依頼は来てたんだ」
ランビットがそう言うと、「ぷふっ」とフェリーペが噴出して「お前、お嬢様なんて呼ばれてるのぉ?」と素っ頓狂な声を出した。
それを見て、フェリーペんところの支配人が慌ててフェリーペの袖を引っ張ってるけれど、フェリーペの態度は変わらない。
「ここは仕事場だからな。雇い主であるお嬢様を友達として呼ぶ事は出来ないんだ。ウチは大所帯で、どこに耳があるか分からないから、仕事時間は常に敬語だ」とランビットが少し憮然としてフェリーペを睨んでいる。
「そうですよ、お坊ちゃま。アウレリア様は国内有数の施設を多数お持ちで、貴族の皆さまに対してもある程度発言権をお持ちでいらっしゃいます。いくら同級生で仲良しであっても、商談中はちゃんと敬って下さい」
支配人さんも顔を青くしてフェリーペの袖を引っ張ていた手を今度は肩に置いた。
手にググっと力を入れているのか、掌に少し血管が浮かんでいる様に見えるのは気のせいだろうか?
商談は無事に終わったけれど、多分、お店に帰ってから叱られるパターンじゃないだろうか?
それはフェリーペ自身も予想しているみたいで、最後には借りて来た猫の様に大人しくなり、ウチの事務所を出て行った。




