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まだまだあややクラブの同窓会に関しては悶々としていた。
だってヘルマン様だけがお貴族様枠の出席者になりそうなので、お互いに気を使いながら会うよりも、闇王様をはじめとしたお貴族様メンバーがある程度揃う状態の方が話題に困らないだろうし・・・・。
でも、メグたんには会いたいなぁ。
今度、デパートの状況を確認しに行く時、訪ねてみようかなぁ。
もし今参加できる者だけで同窓会をする場合は、ヘルマン様はモンテベルデーノからになるので、王都でないとヘルマン様か勇者様が国内をぐるっと移動しなくちゃいけなるなるよね。
う~ん。ヘルマン様は多分出席されるだろうなぁ。
だって鉄道をモンテベルデーノまで敷設して欲しいだろうし、同窓会イコール鉄道会社関係者の私としっかり話が出来るって事だしね。
う~ん。同窓会の件は、まだまだペンディングだねぇ。
一方、他の事は結構順調だ。
ビジネスホテルは順調で、調味料工業団地の方はまだ本格的な生産はハーブソルトやカレー粉くらいしかないけれど、どこの蔵も順調に仕込みをしていたり、寝かせの工程に入っているからいいと思う。
ノエミが作ってくれた作業指示書は職員に大好評で、作業ミスもかなり減った。
実はそれには作業指示書の存在だけでなく、ノエミが作った作業チェック表も大いに貢献している。
誰にも何にも教えられていないのに、作業指示書に出てくる工程を蔵毎、セクション毎に一覧表にして、実際に作業をした職人が一つの手順が終る度に作業員のサインを書き入れるというシステムを考えてくれた。
これは一見手間が増える様に思えるが、作業ミスがぐ~~んと減ったので、経営面から見てもとても優れたツールだと言える。
この世界にはグラフとか表という発想がなかったのだが、ウチのレストランやホテルでは大分前から導入したため、ノエミが考え出したこのシステムを実際に表にしたのはダンヒルさんだ。
ノエミが例のキラキラ輝く瞳で、「ダンヒルさん、すごいっす!流石っす!」と大絶賛していたので、普段は無表情なダンヒルさんが顔を若干赤くして照れたとか、照れなかったとか・・・・。
鉄道は便数を増やして欲しいという要望が強く出ていたので、ケヴィンが頑張ってダイヤグラムを作成してくれた。
今では王都-ゴンスンデも王都-ヤンデーノも日に2便ずつ出ている。
現代日本人の感覚だと、日に2便は少ないと思うかもしれないが、この2便の間にウチのホテルやレストラン、グランドキッチン、調味料工業団地への搬入搬出の便も結構あるのだ。
「単線なので、駅での切り替えを考慮するのが結構大変でした」と、ケヴィンは言っていたけれど、いつも材料などの搬入便もちゃんと問題なく組み込んでくれるので、私は彼が鉄道会社に入ってくれてすごくありがたいと思っている。
まぁ、他の人たちはケヴィンの有難味を理解していなかったりするんだけれどね。
実際に自分でダイヤグラムを組んでみるといいよ。
日本の鉄道と違って時間に若干ルーズな運行だから組むのが楽かと思いきや、秒単位で管理出来ない分、安全マージンにゆとりがないと事故に繋がるので、これはこれで難しいのだ。
まぁ、私にダイヤグラムを組む才能は無いから、この知識はケヴィンの受け売りなんだけね。
ポンタ村のグランドキッチンは、実はポンタ村と言いつつ、ポンタ村から少し外れた所に建ててある。
そしてグランドキッチン駅という駅が密かに造られているのだ。
密かにと言うのは一般客は使わないから、ウチの関係者しか駅として認識していないのだ。
作業員はポンタ村に住んでいるのだが、通勤トロッコに乗ってグランドキッチン駅に通勤してもらっている。
調味料はここでは作っておらず、純粋に作り置きして冷凍出来る物を中心に作ってもらっている。
別棟でパン工場もここにある。
パン工場では全てのチェーン店で提供するパンとクッキーを作ってもらっている。
もちろんゴンスンデのデパート内で売っているお土産用のクッキーもそうだ。
デザートはアイスクリームとシャーベットを作ってもらっているが、この2つはビジネスホテルでは提供していないので、高級ホテルと王都のレストランのみへ搬入している。
そしてグランドキッチンの製品や半製品はこの駅から鉄道の冷凍車輛に載せられて各施設へ運搬されるのだ。
お土産と言えば、デ・フピテル工房が作ってくれている観光名所の絵皿が完成し、結構人気を博している。
「もっと絵の種類を増やしたい」だの、「他の町のも作りたい」だの言ってくれているので、フェリーペん所を紹介しておいた。
コンビニに卸してもらってもいいし、他の商人を通すならそれでもいいと思う。
ウチとしてはゴンスンデの絵皿はゴンスンデ店のデパートにだけ卸してもらって独占できれば、他の町に関してはノータッチでいたい。
これ以上仕事を増やして自分の首を絞めたくないのだ。
そして今回新たに着手した雑誌。
これが徐々に人気を博して来た。
遊び方の説明まで雑誌に書き込むとなると文字が多くなり職人の手が必要となる事から大量生産できなくなるので、遊び方を書いたプレートを作り、各コンビニ店の売り場の壁に貼ってもらう事で対応した。
ありがたい事にサミュエルが初級程度の問題なら作れたので、初級は全て彼に頑張ってもらっている。
ただ、彼も忙しいランビットについてあっちへこっちへ出張しなければならないので、パズル作りだけに専念する事が出来ない。
それこそ鉄道の移動時間をパズル作りにあててもらっている。
中級に関しては、学園を卒業した大先輩らしいのだが、ヤンデーノにこういうのを考えるのが好きな御仁がおり、その方にお願いしている。
お年を召して、もう孫やひ孫までいる方で、仕事は息子たちに譲って久しく、時間が余ってるからこういう事を考える機会を与えてもらって嬉しいとやる気満々だ。
住んでいる所もマルコ書房のあるヤンデーノなので、工房とのやり取りも簡単に済むのでありがたい。
この御仁とサミュエルが揃うとパズル談義が始まり大変なんだそうだ。
ランビットそっちのけで何時間でも話し込むそうだ。
まぁ、談義に時間を割くのは自由時間にしてもらわないとね。
だから、書房との打ち合わせは2人が同席しない形でしてもらい、2人が仕事時間に顔を合わせるのは避ける方向にした。
どっちにしてもパズル班みたいなのを立ち上げて、もっと人手を増やさないと・・・・。




