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ランビットの勤務風景

 俺は魔力が無い。

 実家は石材店だ。

 石材店を継ぐのなら魔力は必要ないが、俺の夢は錬金術師になる事だ。

 でも、錬金術師で大成しているのはみんな魔力持ちだ。

 だって、錬金術の装置は魔力が無いと動かせない。


 学園で同じクラスだったボブん所は王都でも有名な錬金術工房で、ボブはそこの後継ぎだ。

 ボブは仕組みを考えるのが大好きで、アイデアマン、いやいやアイデアウーマンのリアと3年間みっちり一緒に居たからか新しい事を立ち上げるのにも慣れていて、それら新しい事がちゃんと機能する為の仕組みを考えるのが好きらしい。

 まぁ、それはお貴族様のセシリオ様も同じだ。


 実は俺も仕組みを考えるのは嫌いじゃないんだけれど、どちらかというと多種多様な仕事を同時進行しながら、それら全てを滞りなく進めるために何を何時のタイミングでどの様にするかを考えながら進める方が好きだ。


 一見、仕組みを考えるのと似ているけれど、違いは他人を巻き込むかどうかという大きな違いがある。


 仕組みっていうのは自分の手を離れても、ちゃんと動いていれば第三者だけでそれを実施できるっていうものの事だ。

 でも、俺が好きなのは、俺の能力の中でギリギリまで仕事を抱え、それを形の違う積み木で遊ぶ様に時間と仕事を嵌め込み、問題無く遂行することだ。

 それが実現できた時、リアが言うところのドーパミンってのが大量に作られるらしく、多幸感が続くのだ。


 だから、学園4年生の時はスイカズラ工房で研修を受けていたんだけれど、リアんところが色んな特徴を持つ高級宿ホテルをたくさん建て運営し、その上で鉄道を敷いたのを見たら、絶対こっちの方が俺の仕事のやり方に合ってると思った。

 それに魔力をたっぷり持つ秘書も用意してくれたので、錬金術もしながら働ける。

 っていうか、仕事でも結構な頻度で錬金術を使うのだ。

 俺の大好きな設計図もたんまり引かないといけないのが地味に嬉しい。


 秘書は俺と同じ年の男の子サミュエルで、平民にしたら魔力はたくさんある代わりに、魔術スキルを持っていないという変わった奴だ。

 学園に通う事もしておらず、平民が通う学校だけを出ている。

 だから読み書きはできるし、ちょっとした歴史なら知っているけれど、ダンスとかお貴族様との付き合いの部分については何も知識が無いらしい。


「オイラの魔力をこんなすごい物を作るのに使ってもらえるなんて、嬉しいっす」

 リアが指示して俺が設計した調理器具を錬金術の装置で作り上げると、サミュエルはボサボサなこげ茶の髪をワシワシと手で掻いて嬉しそうにそう言った。

 しかし、そんなに何度も頭を掻くって、もしかして虱でも頭に飼っているのか?と最初の頃は此奴になかなか慣れなかった。


「裏方とは言え高級宿に勤めるのですから、いつもお風呂に入って清潔にして下さい。初回だけウチのエステで髪を切ってもらいますが、次回からはちゃんと自分で髪を切る所を探して、さっぱりした外見で出社してくださいね」

 リアにそう言われたサミュエルはモジモジしていたけれど、服は制服があるし、エステのお姉さんにジャキジャキ髪を切られると、そこそこ見られる感じになった。

 毎日の様に従業員用の風呂に入っているので、髪もサラサラだ。

 それでも良く髪をワシワシと掻くので、虱ではなくただの癖なのかもしれないと最近では思っている。


 俺は今、スイカズラ工房へ良く顔を出している。

 魔石で動く鉄道車両の開発を手伝っているのだ。

 本当は土産物の開発もリアから頼まれているのだけれど、そっちはダンヒルさんとダンテスさんも担当してくれているので、今の俺の優先順位は鉄道の方だ。


 鉄道は大人気。

 俺もサミュエルも乗った事はある。

 王都以外のホテルへ行く時に乗ったんだ。

 全然揺れなくて快適で、知らない間についつい寝ちゃってたりしたよ。

 普通の馬車なら尻が痛くなる程揺れるので、寝るなんて出来ないんだけど、鉄道は全然揺れないんだよな。

 これを考えたリアと実際に作ったガルフィールドさんは本当に凄い!


 大公様はリアに、各駅前に高級でなくて良いので自前のホテルを造りなさいって言われているみたいだけれど、リアはまだ今は各ホテルを問題無く運営する事の方が先だと言う。

 同時進行すれば良いのにと思わなくもないけれど、それは本当に難しいとリアが真剣な顔で説明してくれた。

 

 今ある5軒のホテルを建てて営業を開始した時、ほぼほぼ同時に工事や開業を進めたらしく、死ぬ思いをしたと言っていた。


 鉄道が全線開通した頃、ポンタ村の駅は良いんだけれど、他の駅は村の中に駅があるわけではなく、駅だけが荒野にポツンとある感じで、宿やコンビニはあるけれど、2日目に泊まった宿の料理はマズくて、他に宿や食堂が無いからこその殿様商売なんだろうけどな。

 コンビニで軽食を売ってくれていたから問題はなかったけれど、何度も鉄道を使っているお貴族様たちは最初から宿には泊まっても食事はコンビニで買っていたから、駅の食事は要改良だな。

 ヤンデーノの一つ前の駅の宿のは美味しいのにな。


 それでも最近は駅の周りに人が住み着いて来ているから宿も増えたし、食堂も増えた。

 でも、フローリストガーデンの様な美味しい料理はなく、普通のスープとステーキ肉くらいしか出ないし、そのスープも塩味だけだからな。

 やっぱりリアに食堂だけでも各駅に作ってもらいたいな。


 俺が好きなホテルはゴンスンデのホテルなんだ。

 もちろん他のホテルも好きだけど、デパートっていうのが凄い!

 お金が無いからカジノで遊んだ事はないけれど、デパートはお金が無くてもウィンドウショッピングだっけ?リアがそう言っていた様にただただ店を外から覗くだけで楽しいんだよ。

 お客が誇らしげにデパート専用の紙袋を手にホテルの宿泊階に向かうのを見るのも好きだな。


 よし!早めに魔石の鉄道車両を作って、今度はお土産のバラエティを増やし、その後はいよいよ駅の宿屋造りだな。


 それにしてもどこのホテルも従業員用の食堂も美味しいのが地味に嬉しい職場だよな。

 リアに誘われてフローリストガーデンに雇われて良かったよ。ニヤリ。

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