ランディの将来設計
従妹のアウレリアがとんでもない宿を造っちゃった・・・・。
そんでもって鉄道って言うのも造るって話で、現物も無い状態で話だけ聞いても父さんも母さんも理解できなかったみたいだ。
もちろん爺さんも俺もな。
でも、お金は稼げる様になるけど、その為には貴族へ料理を出さなくちゃいけなくて、その場合はアウレリアんところの叔父さんがお金を貸してくれるから建物を増築しなくちゃいけないし、家族だけの経営じゃあ無理だって言われた。
俺はこの『熊のまどろみ亭』を継ぐ一人息子だ。
今後、父さんたちに別の子が出来たとしても長男である自分がこの宿を継ぐのは間違いない。
だからなのか父さんも母ちゃんもそして爺さんも、俺を呼んで家族会議をしてくれた。
俺は今までの『熊のまどろみ亭』も好きなのだが、今までは宿の掃除や給仕をして来て、漸く今年に入って料理を教わりはじめた。
まぁ、野菜の皮むきしかさせてもらえないけどな。
俺が調理場に入れたのも、フェリシアが手伝いに来る様になり、給仕が母ちゃんとフェリシアの2人体制になったから。
それでフェリシアがちゃんとウチの店に馴染んだ頃、いきなり父さんたちからフェリシアと結婚したらどうかって言われた。
フェリシアは俺より年上で結構気が強いけれど綺麗な子だし、仕事も出来る。
実家は野菜だけでなく卵や牛乳も納品してくれているので、2つの家に結婚による確かな繋がりがあると今後も経営をしやすいぞって父さんに説明されると、そうだなぁって思えたので、フェリシアに俺と結婚するってのをどう思うかって聞いたんだ。
そうしたら「その気がなかったら、ここに働きに来ないわよ」って言われちゃって、もしかして俺って狙われていた?
あはははは。まさかな。
そんな事を思っていたら、「バカねぇ。村の中で結婚しようと思ったら、早い内から目星をつけておかないと、行き遅れになっちゃうからね。あんたん家はパイで大儲けしていて将来性もあるし」なんて言われちゃったよ・・・・。
しっかり狙われていた。何か複雑。
で、俺とフェリシアの結婚話が進んでからは、彼女と一緒に『熊のまどろみ亭』をやっていくってビジョンを持って行って、俺が調理、フェリシアが給仕と宿の方をやってもらい、父さんと出来たら爺さんに調理場を手伝ってもらうイメージだった。
でも、リアが落としていった爆弾は、そもそもの営業規模が違う大きな商いになる可能性があって、鉄道の駅が目の前にあるかどうかは大きく違って来るとのこと。
今まで通りが良ければ駅は別の所に建てるが、そうなればポンタ村の他の宿や食堂が大儲けするのを横目で見る事になるよって言われたそうだ。
父さんがそう言っていた。
で、俺が望むのは宿屋よりも食堂だ。
いや、俺はまだ料理とかは出来ない。
それなのにどうして宿屋よりも食堂の方を選んだかと言うと、偏に将来性だ。
ウチには他の食堂や宿屋に無いパイと言うヒット商品がある。
それに天火で作る料理もとても好評で、特にお貴族様たちが宿泊はしないのに食事はよくウチで摂っている。
お貴族様のお客が増えるならテーブルや椅子、テーブルクロスや食器類、全部上のランクの物を揃えないといけないし、給仕も貴族に慣れている人が必要だ。
母ちゃんは可成りお貴族様に慣れて来ていて、俺たちが結婚すると決めた後は、フェリシアにもちょくちょくお貴族様への対応を教え込んでいるみたいだ。
父さんは前からの馴染み客も大切にしたいとのことで、部屋数は少ないながらも宿の方も平民用として続けている事に固執している。
爺さんはそれに反対するでもなく、賛成するでもなく、「もう、お前たちの代なんじゃから、お前たちが決めなさい」と言っている。
宿までお貴族様仕様にするととてもではないが大変そうなので、結局父さんの案、食堂は貴族も含めてどんな客にも対応し、宿は元々の常連客を中心に平民用として細々と経営する事に落ち着いた。
となると、今の1階にある食堂はそのままに、裏口から入れる新たな食堂を増設することになった。
もちろん、工事が終ったら、今の裏口が正面玄関になるけどな。
お貴族様でも使えるちょっと豪華な内装になる予定だ。
で、すんごい高位のお貴族様の場合はその端に用意される個室を使ってもらう事になる。
高い皿とか金銀が使われた装飾品なんて置けないけど、フェリシアんところの温室の端っこで綺麗な花を栽培してもらう事にした。
もちろんギジェルモ叔父さんに温室の使用についてお伺いを立てたから、俺たちの独断と偏見で温室を使っている訳じゃないからな。
季節外れの大輪の花を食卓に飾るだけで、絵画とかがなくても豪華そうに見えるもんな。
お花様々だぜ。
料理はリアに頼めば色々と教えてくれるかも知れないが、あまりにおんぶにだっこは情けないという父さんの意見で、今、俺たちは毎日の様にお貴族様向けの料理を開発中だ。
鉄道が通ると世界が変わるというリアの発言がどこまで本当なのか、この目で早く見たいよ。
そんなこんなでとうとう鉄道が開通すると、あれよあれよと言う間に、お貴族様や裕福な商人の客が増えて行った。
ウチの店はお貴族様にも大好評で、工夫された料理もだけれど、何時行っても綺麗なトイレと、移動中に手軽に美味しく食べられるパイもと、売りが3つもあるので客の入りは頗る良い。
隣村からウチに働きに来ている給仕と調理人のお陰で、大分人手も余裕が出て来た。
よし!ここまで来たら、流行る店である事を守り抜いて、俺の代で『熊のまどろみ亭』を大きくするぞぉぉぉ!




