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「メグ!体に気を付けてねっ」
「うん、リアも。ゴンスンデに来たら時間のある時だけで良いから、顔を見せてね」
「うん!」
「鉄道に乗せてくれてありがとう~」
「快適な旅を~」
「メグ、元気でぇ。俺もホテルで働くから、ゴンスンデにも行くから。そしたら会おう!」
「うん、ランビットも元気でぇ」
「妹と4年間一緒に居てくれてありがとう。ゴンスンデに来たら、是非ウチへ寄って欲しい。それと美味しい食事をありがとう」
メグたんのお兄さんが商談を兼ねてメグを迎えに来てくれ、今日は二人して初鉄道を体験しつつ帰郷するのだ。
「いえいえ、私たちこそ、メグに一緒に居て貰えて良かったです。楽しい4年間でした」
私がお兄さんにそう言うと、続いてランビットも「うん、俺もメグたちと一緒に学園生活を送れてとても良い思い出をいっぱい頂きました。ありがとう。ホテルや鉄道の仕事でゴンスンデへは良く行くから、絶対会いに行きます」と、ゴンスンデでも会う事を約束していた。
勇者様は初めての鉄道に目を輝かせて、あっちこっち全てを記憶に残そうとしているかの様に、プラットフォームの端から端まで目をやっている。
研修をしていたお店からは誰も見送りに来ていなかったけれど、ランビットと私と一緒に4人でウチのホテルのレストランで食事をし、そのままの足でホテルの真ん前にある駅から鉄道に乗ったのだ。
まだ馬で曳いているので、一つの車輛はちょっと大きな馬車くらいしかないけれど、馬でそれぞれに車輛を曳いているので最初の頃に比べ乗客の数は少し多くなった。
フェリーペもお見送りしたかったらしいけど、実はポンタ村の次の駅のコンビニに仕事で行っているらしく、そこで勇者様と会うらしい。
全員が王都でお見送りではなく、移動途中で知った顔を見れるのはメグたんにとっても良いと思うよ。
ボブは魔石を使った鉄道の納品期限がすぐそこまでに迫っているので、工房から出られない様だ。
闇王様とセシリオ様は既に海外へ旅立ったそうだ。
アドリエンヌ様はご実家で籠の鳥なので、外出は出来ないらしい。
卒園式から5日しか経っていないけれど、みんなそれぞれの道を歩き始めているのだ。
「リアお嬢様。そろそろ事務所へ戻りましょう」
「ランビット、なんかそれ慣れないんだよね」
「ん?もしかしてお嬢様って呼ばれること?」
私は激しく頭を縦に振った。
「でも、今は二人だけだけど、事務所では他の人が居るからちゃんと呼ぶ習慣を付けないと、この前みたいにうっかりリアって呼び捨てにして先輩たちから叱られるのは俺だからね」
「む~ん」
日本のプラットフォームよりぐ~んと背の低いプラットフォームからぴょんと飛び降りた。
「リア様、それってダンテスさんに見られたら叱られるぞ」
「へ~い」
「その返事も叱られ案件だな」
「ほ~い」
二人してコンコースの中を抜け、ホテル専用の通路を通り、ホテル内の事務所へ。
「では、リアお嬢様、私はスイカズラ工房の方へ行って、魔石型鉄道の開発を手伝います」
ランビットは俺呼びを私に切り替えてお仕事モードなんだけど、一瞬だけだけど私と言う前に間が発生するんだよね。
まだまだ慣れていない証拠だね。
「はい、しっかりお手伝いして来てください」
「承知しました」
私は私で土産物を開発する為、噴水の像や一部のホテルのフロントの壁の壁画等を描いてくれたデ・フピテル工房のマンテールさんと約束があるので、大人しく事務所で仕事をする事にした。
ふふふふ。
どんくさいけど、海外とかに旅行すると良く見掛けるその土地の絵を描きつけた陶器の皿なんかを開発してはどうかという案を提示してみるつもり。
これは別にお金を儲けるためではなく、デパートにあるウチ直営の土産物店の品揃えを豊かにするためなので、デ・フピテル工房が皿を作っても作らなくても特許を主張したりしないつもり。
ダンテスさんに知られると、しっかり特許は取って下さいって怒られそうだけれど、あんまり手を広げても体は一つだからね。
と言うか、すぐ後に醤油工場と味噌工場、そしていろんな種類の酒蔵を建てる事になっているので、土産物のお皿の権利なんてかかずり合ってる暇は無いのだ。
前々世、大正時代の時、味噌は各家庭で作っている所もあって、家もそうだった。
私は女学生だった頃になくなったので、ばあやを手伝った事くらいしかないので味噌づくりに自信は無いんだけれど、まぁ、スキルがあるからね。
で、醤油や味噌は土産物屋で売るのではなく、ウチのホテルやレストランで使う量が半端ないので、一か所で作って貰って各店舗に配布するつもりなのだ。
今、ランビットが大量に大豆を仕入れる先を調べてくれていて、既に2か国、あ、国内ではなく輸入になるので2つの国からサンプルを取り寄せ、値段と量の交渉をしている所らしい。
仕事を部下に放り投げたら、後は相談されるまで基本部下にお任せなのだ。
ランビットは良く働いてくれるけど、王都のホテルにある事務所で働くダンテスさん経由で雇った事務員3名の内の1人は気を抜くと良くサボっているので、彼にだけは時折、「あの仕事はどうなったの?」と圧を掛けないと動かない時があるのが面倒なんだよね。
でも、奴の仕事の手腕はめちゃくちゃ良いのだ。
ダンテスさん並み。
忠誠心の無いダンテスさんとでも言ったらピッタリ。
名前はゼットって言う、背も高くて顔も良い、女の人にモテモテだろうなぁっていうオーラ発しまくりの遊び人だ。
服だって良い物を身に付けているんだけれど、どこか着くずしてる感が付きまとうんだよね。
奴には今、各ホテル間での食材の融通を管理してもらっている。
魚も肉もそして穀物もそれぞれの土地に良い物があれば、冷蔵車や冷凍車を駆使してホテル間で回しているのだ。
問題はお酒なんだよね。
正直、醤油や味噌は私のスキルで呼び出した物を全てのホテルへ鉄道で運べば良いのだけれど、カクテルの売れ行きがどのホテルでも凄いのだ。
まず、ウチ以外ではカクテルらしいカクテルはフローリストパークくらいでしか飲めないのだが、種類も見た目もそして味もウチのカクテルは他の追随を許さないので、フローリストパークのカクテルはあまり話題にも上らない。
それに会員制クラブやカジノでのお酒の消費は鰻登りらしい。
早く酒造所をあっちこっちで作らないとだね。
ナイトル村では麦が原料のウイスキーを作る予定だ。
ホップを栽培できればラガービールも作りたい。
ナイトル村とポンタ村の間にトウモロコシを作っている村もあるので、その近くにジンを作る酒造を作って、最後に香りづけに使うねずの実はヤンデーノの手前辺りで手に入るらしいから鉄道で運べばいいよね。
ねずの実列車なんて命名して、観光資源にしちゃっても良いかもね。
で、カジノやバーでジンフェアなんて開催しちゃって、あの列車で運んでいる材料で今あなた方が飲んでいるカクテルのベースが出来るのよって言うのも一興かも!
おおお!いいね。
これはランビット案件にしちゃおう!ぐふふふふ。
ランビットが居てくれると同時進行で色々やってくれるから本当に、ほんっとぉ~に助かるよん。




