42 卒園式(後半)
この学園の卒園式には卒業生と学園長、4年生の各クラスの担任、そして貴族生徒の保護者しか出席しないのだ。
なんかあっさりした卒園式なんだよね。
証書を渡されるわけでもないし、ただ単に卒園者名簿に名前が記されるだけなのだ。
もちろん、有料で卒園証書を発行してもらう事はできるのだが、何故だろう、希望者は少ない。
恐らくだけど、4年生の時に研修をしており、卒園後に所属する組織がほぼほぼ決まっているから、改めて証書を提出する必要が無いんだと思う。
まぁ、良くは知らないけどね。
アドリエンヌ様とは卒園後、会う事は少なくなる気がする。
闇王様と結婚されたら比較的自由な行動を取れるのだろうけれど、この後闇王様はセシリオ様と一緒に海外留学だ。
闇王様が帰国するまでアドリエンヌ様は実家で花嫁修業らしい。
今回、卒園にあたり誰も言い出していないのに、あややクラブのみんなはお互いへのプレゼントを用意していた。
かく言う私もそうだ。
「アウレリア、これはあなたに。あなたのイメージで作ったポプリよ。私の手作りなの。大事にしてね」
「ありがとうございます。アドリエンヌ様。私からはこれをどうぞ」と、渡したのは私のスキルで呼び出したこの世界には無い植物の種だ。
「これは見た事の無い種だわ」
「フローリストガーデンの温室にしか無い植物の種で、王都の気温で育つ物を持って来たんです。大半は野菜や果物の木になりますが、花は小ぶりでもカワイイのが咲くので良かったら育ててみて下さいね。そして、その花を見たらあややクラブのみんなを思い出してください」
「まぁ・・・・」
アドリエンヌ様は感極まった様に途中で言葉が途切れてしまったけれど、胸の前で種の入った袋をしっかりと握りしめたところを見ると、喜んでくれているんだと思う。
こんな風に皆が一人づつ、その人の事を考えて手作りのモノや、その人が喜びそうな物を贈り合った。
勇者様は私にメグたんとお揃いのカバンをくれた。
「これからホテル間を移動しながら働くリアに必要な物。そして私とお揃い」と。
私から勇者様へは鉄道の回数券。
「ゴンスンデに戻っても偶にはみんなに会いに王都へ遊びに来てね」
「うわぁ、とっても嬉しい。鉄道には一度乗ってみたかったの。こんなにたくさん切符を貰って良かったの?予約が取れないって有名なのに」
「うん、メグだからね。特別だよ」
卒園してしまうとランビット以外とは中々会えなくなってしまう。
闇王様やセシリオ様は外国だしね。
アドリエンヌ様はお貴族様の館の奥深くから中々出て来られないだろうし、メグたんはゴンスンデだし。
でも、フェリーペとボブはホテルの仕事関係で顔を見るくらいはできるかも?
卒園式の後、私たちはあややクラブの部室に戻った。
「オレはここ程居心地の良い場所を知らない。それもこれもお前らのお陰だ。楽しい4年間だった。帰国したらまた会おう」
「うん。アディの言う通り。楽しい4年間だった。私がイベントで解説をするなんて入園時には考えもしなかったけれど、今思い返せばどれもこれも楽しかった」
普段はあまり言葉を発しないセシリオ様も今日は特別の様で、しっかりみんなに挨拶してくれた。
「私も大好きなガーデニングを思いっきり堪能する事ができたし、何よりアウレリアさんが毎日作ってくれたおやつがとても楽しみだった。毎日毎日料理をしてくれてありがとうございます」
「身分を越えて、友達がたくさんできた良いクラブだと思ってます。俺は実家の店をいずれ継ぎますので、是非ウチの店に買いに来て下さい」
フェリーペが言うと、すぐさま無口なボブも言葉を継いだ。
「僕も入園時は人見知りが激しかったけれど、このクラブのイベントを通して、いろんな人と触れ合う事ができて、成長できたと思う。あややクラブには感謝しかない」
「俺は途中から入部させてもらったけれど、本当に良いクラブだと思う。これからも全員と連絡を取り合って大人になっても友達でいたいです」
「私も、最初はコスモスの花が縁で入部したこのクラブ、とっても楽しかったです。これからも偶には全員で集まってお話したいですね」
「ウチのホテルで定期的に会いましょう!もちろん美味しいお食事も用意しますよ」
「「「やった!」」」
最後は私が〆の言葉を。
それぞれの一言を最後に私たちは部室を出て、「またね」「元気でね」と挨拶を交わし、それぞれの馬車へ。
勇者様はお兄さんが迎えに来るまで寮で待機とのこと。
私やフェリーペ、ボブ、ランビットを見送りに寮の正面玄関前、それも少し脇に逸れた所にとめてある馬車の所へ見送りに来てくれた。
もちろんフェリーペん所の馬車だけどね。
「リア!元気でね。私もゴンスンデで頑張る」
「うん。リアがゴンスンデに帰る時には見送りに行くね」
「うん、ありがとう。そしてみんな」と勇者様は私たち4人の顔を一人一人確かめる様に見つめ、「とっても楽しい学園生活だった。ありがとう!」と言った。
「それは俺もだ。みんなありがとう」
「僕も」
「メグ、本当にありがとう。卒園してからもちょくちょく顔を見る機会があると信じてる!体に気を付けてね」
「リアもね」と勇者様はちょっぴり涙の浮かんだ目を拭うことなく私の首にガバっと抱き着いた。
私もメグたんの首に齧りつく様に抱き着いて、最後に彼女の背中を優しくポンポンと叩いて、馬車に乗った。
実質3年間しか通ってないし、日本の小中学生くらいの年齢の学生しかいない学園だった。
貴族の子は大体大人びた子と、冗長して我儘な幼い性格の子に分かれるのだが、あややクラブではラッキーなことに大人びた子に囲まれ、私たちの年では通常体験できない様なイベントの企画運営まで体験でき、本当に充実した学生生活だった。
あのイベントの数々は上位の貴族の子がいなければ到底学園で実施することはできなかっただろう。
そういう意味でも闇王様始めウチのザ・お貴族様ズとはかけがえのない縁だと言える。
平民のメンバーも頭の良い子が多く、自分のやるべき事をちゃんとする責任感の強い子が集まって来ていたのと、貴族と一緒でも物怖じしない子ばかりだったので、あややクラブでちゃんと活動していけてたんだと思う。
教室も同じでいつもひっつきもっつきで楽しかった。
これからもこの縁を大事にして行きたい。
絶対皆でまた集まろうね!ウチのホテルで御馳走を用意するからね。




