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41  卒園式(前半)

「リアぁぁぁ、結局あの日、部室で会った以外は学園では会えなかったねぇ」

「うん、メグ、ごめんね」

 珍しく勇者様が私の肩に両手を回して飛びついて来た。

 あややクラブの1階にはまだ私たち二人しか居ない。


「ううん、私は時々店の方に顔を出してくれていたからリアに会えてたけど、他のメンバーは会ってないんじゃないの?」

「フェリーペにはコンビニの件で時々会ってたけど、ボブは全然会えなかったね。もちろんお貴族様とは行動範囲が違うからアドリエンヌ様たちには会えなかったけど、ヘルマン様と奥様にはウチのホテルで会ったよ」

「ええええ!なんか懐かしい。ヘルマン様元気だった?」

「うん。奥様も綺麗な人だったよぉ」

「おおおお!」

「後、ランビットは卒園後、ウチのホテルで働いてくれる事になったから、ウチの父さんとの面接の時、会ったよ。メグは他のメンバーとは時々顔を合わせてた?」

「うん、魔法障害物と鳥人コンテストの時にみんなと一緒に出場したんだよ」


 メグたんの様子は心配だったので、その後先輩たちとの関係を確認するためにメグたんの研修場所である店に時々顔を出していたんだけれど、あれから直ぐに改善されたので、自分の事業の忙しさもあり、今学年後半はついつい足が遠のいていたんだよね。

 だから、魔法障害物競争の頃にはあんまり学園の情報は耳に入って来てなかった事に気が付いた。


「おおお!それは初耳!何位だったの?」

「魔法障害物は4位だった・・・・鳥人コンテストはぁ・・・・」

 言葉を濁すメグたんに大体の想像は付いたよ。


「仮装部門で1位になったよ!」

「おおおおお!」

 あの口振りだと何の賞も取れなかったんだと思っちゃったジャマイカ。

 勇者様、お主、随分と演技が上手やなぁ。

 意外な特技だ。


「メグは卒園後は実家のお店を手伝うの?」

「うん。服飾部門を担当することになってるの。上手く行けばその後で独り立ちさせてもらえるって言われてるから、張り切っているの」


 これは以前から聞いていた話だけれど、何時頃あっちへ戻るのか知りたかったからね。

 どうやら、この卒園式の後にお兄さんが迎えに来て、二人でゴンスンデまで帰るそうだ。

 商売、上手く行くといいなぁ。


「あ、リア!お前全然学園に顔を出さなかっただろう」そう言いながら駆け寄って来たのはフェリーペだった。

「あ、この前振り~」

「お前なぁ、4年生はレポート提出だけでも卒園は出来るけどさぁ、ちぃたぁイベントへ参加しろよぉ。みんな待ってたんだぞ」

「ごめんごめん。でも、私がどれくらい忙しかったか知ってるでしょ?」

「それはまぁ知ってるけど・・・・」


 コンビニの事で打ち合わせがある度にフェリーペ父の後ろに座って居たフェリーペとは顔を見る事はあっても、仕事の話はフェリーペ父となので、細かな情報交換なんて出来てないのだ。

 でも、時々顔を合わせているので、お久し振り感はあまり無い。


「おっ!この1年顔を見せなかった奴がいるぞ」

 ぎくり・・・・。

「凄いホテルを建てたな。オレも行ってみたぞ」

「え?あ、ありがとうございます」

「ヤンデーノで風待ちの時に使わせてもらったが、あれ、スゴイな。居心地がとっても良かった」

「ありがとうございますっ」

 闇王様が背後から声を掛けて来たのでビクっと大きく肩が動いてしまったけれど、ウチのホテルを手放しで褒めてくれるので、段々嬉しい気持ちで一杯になって来た。


「食事も上手いけど、あのカードルームとかも良かったし、パティオと空中庭園、見晴らしの良いレストラン、どれをとっても洗練されていていいな。オレは父と一緒に行ったんだが、父も非常にくつろげるって褒めてたぞ」

 嬉しすぎて顔がにへらっとなりそうになるのを必死でつくろう。


「フェリーペん所のコンビニだっけ?あれもいいのな」

「あざ~っす」

「船の中で食べる軽食を買ったんだけど、すんごく美味しかった。それにあのフワフワなスリッパだっけ?あれ、履き心地が良くて足が疲れないしすぐ脱げるしで、部屋で寛ぐ時には必須だな」

「料理もスリッパもリアん所が開発したのをウチで売ってるんです」

「そうだったのか。今年は何度か領地へ行ったけれど、利用できたのはヤンデーノだけなんだよな。次は別の町のホテルも利用してみたいと思ったぞ。それに、オレはまだ鉄道に乗ってないんだ。切符が売り切れで中々乗れなくて残念だよ」


「あ、それは今度車輛自体を大きくしますので、混雑は大分緩和すると思います。ご不便をお掛けしました」

「俺も鉄道に関りたいから、卒園後はリアん所のホテルで働く事に決めました」

 そうなのだ、ランビットがとうとうウチのホテルで働いてくれる事になったのだ。

 調理器具も含め、鉄道とか、普通では触る事も出来ない装置を好き放題に触れるとあって、ランビットの方から働きたいと申し出てくれたのだ。


 色んな意味でコツコツ派だし、誠実な働き方のランビットが来てくれると、私としてもとっても嬉しい。


「そうか、みんな将来の道が決まったんだな」

「そういうアドルフォ様はやはり留学をされるのですか?」

 勇者様が聞いたのではなくフェリーペがそう質問をした。

 王都の洋装店で鍛えられた勇者様はもう無邪気に何でも質問する子ではなくなったのだ。

 こういうのも大人になったって言うことなのかな?

 ちょっと寂しいよ。


「ああ、オレはセシリオと一緒に留学する事になった」

「では、留学から戻られたらウチのホテルでまた皆で集まってお食事をしましょう」

「おおおお!リア、お前太っ腹だな」と闇王様より先にフェリーペが食いついて来た。

 君は時々、ウチのホテル内のコンビニに顔を出しているのでは?と思っていたら、贅沢にあれもこれもと食事をする事が出来なかったけれど、私の招待なら絶対御馳走が出ると思ったらしい。

 まぁ、もちろん御馳走を用意するけどね。

 みんなが笑顔になったまま、卒園式の会場へ移動した。

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― 新着の感想 ―
魔石式蒸気機関(魔導機関車)が完成したようです 食堂車か車内販売があれば良いですね 列車は、まだ富裕層の乗り物ですから、寝台車の必要性はないんでしょうね
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