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「アウレリア!」

 王都のホテルのレセプション担当者から業務連絡を受けカウンターの客側に立っていたら、若い男性の声で後ろから声を掛けられた。

 振り向くとそこにはヘルマン様が同じ様な年の女性と腕を組んで立っていた。


「ヘルマン様!お元気でしたか?」

「酷いよぉ、アウレリアさん。何でウチの町にはホテルを造ってくれなかったの?」

「え?」

「だってヤンデーノにすらホテルを建てているのに・・・・」

「あ、いや、その・・・・最初は建てるつもりだったんですけど、既に貴族用の宿があったので見送ったんです」

「ええええ!?建ててくれれば良かったのに。ってか、今からでも良いから建てて欲しいなぁ」


 ヘルマン様の卒園時にあややクラブで会ったのが最後だったけれど、このくらいの年の人の成長は著しくて背も高くなってるし、何より肩の厚みとかに幅が出てるよ。

 横にいる女性は奥さんかな?と思いながら視線をやると、「あ、この人は僕の妻です」とヘルマン様が紹介してくれた。

 例の必ず魔法スキルを持った子を産む家の娘さんだった。

 

「アウレリアと申します。学園では平民の仲間たちと一緒にクラブ活動等でヘルマン様にお世話になった者です。どうぞよろしくお願い申し上げます」

「ヘルマンの妻です。イベントを立ち上げられ、学園中の生徒を夢中にさせたと伺っております。こちらこそ、よろしくお願い致しますね」と、女同士でニッコリほほ笑んだ。


「ヘルマン様、今日は何故ウチのホテルへ?」

「ああ、食事をしに来たんだよ。『フローリストガーデン 光』の方は中々予約が取れないからねぇ。王都にもう一つ食事処が出来て良かったよ」

「まぁ、あなたは会員制クラブの方に御執心の様だけど」

 奥様が揶揄う様にヘルマン様の腕をつねる真似をした。

「あ、いや。もちろんクラブも良いけど、ここの食事は美味しいから君にも食べさせてあげたかったんだよ」

 どうやら夫婦仲は良いみたい。


「これだけたくさんのホテルを開業したからか、学園のイベントへは顔を出していないみたいだけれど、卒園するともっと仲間の顔を見る機会が少なくなるから、出来るだけ学園には顔を出した方が良いぞ」

「ご心配をお掛けしております。確かに忙しくて中々学園へは顔を出す事が出来ていませんが、今後は出来るだけ顔を出す様に努力しますね」

「はははははは。その年で、これだけの事業を立ち上げるだけでも凄いのに、全ての店舗が大繁盛だから、大変だろうなぁ。まぁ、それでもシツコイかもしれないけれど行ける時には学園に顔を出すと良いよ」

「そうですね。出来るだけ顔を出してクラブの皆に会える様に努力しますね。後、事業は大公様の御威光と優秀なスタッフに支えられておりますので、私個人の力等微々たるもので、時間が無いのは自分の能力不足なだけなんですよ」

「あなたが言う通り、彼女はとても優秀ね。そのお年でこれだけの受け答えが出来れば素晴らしいわ」


 ヘルマン様の奥様は少し悋気が強いのかもしれない。

 誉め言葉を口にしながら、瞳と口調には険がある。

 ヘルマン様も何となくそれが分かっている様で、もっと私と話したそうだけれどご自分から「忙しいアウレリアさんを引き留めては悪いから、僕たちはそろそろレストランの方へ行くよ。また機会があったら、あややクラブのメンバーで一緒に食事でも」と切り上げてくれた。


 結婚をしたメンバーがいると、その配偶者との立ち位置まで考えないといけないのが面倒と言えば面倒なんだよね。

 前世で結婚する前、先に結婚した同性の友達とその旦那さんと初めての一緒に食事とかとても緊張したものだ。

 大事な友達の配偶者とは絶対に良い関係を築かないと、その友達との縁も遠くなるかもしれないと思うからこそだった。


 異性の友達が結婚して同じ様に友達の配偶者込みでの食事は、グループならそこまで緊張しないものの、自分と相手カップルのみだったりした時の緊張は同性の友達のカップルとの食事での緊張の比では無かった。


 ヘルマン様の奥様とは別にそこまでの緊張が発生する仲では無いとは思うけど、貴族と平民という身分差や奥様が知らない頃のヘルマン様の異性の知り合いと言うことで、変に勘繰られない様にと気を使うのだ。

 前世の十人並みの容姿ではなく、現世の母さんそっくりの容姿では、異性の受けが違う気がするんだよね。 


 だからヘルマン様の奥様への自己紹介では『平民の仲間たちと一緒にクラブ活動等でヘルマン様にお世話になった』と一対一での付き合いでないことを強調したり、『出来るだけ顔を出してクラブの皆に会える様に』と学園やクラブ活動でもクラブ全体というのを強調してみた。

 それが相手に伝わったかどうかは分からないけれど、今後はこういう風に知り合いの配偶者への気配りも必要になるのかなぁなんて思っちゃったよ。


 闇王様とアドリエンヌ様がご夫婦になられたらどちらも知り合いだから良いけれど、セシリオ様が婚約や結婚をされて、元クラブのメンバーで集まる事があれば同様の配慮が必要なんだろうなぁ・・・・面倒くさい・・・・。

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