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「メグちゃん、もっとお代わりしてね」

「はい、ありがとうございます」

「おいしいかい?」

「はいっ」

「ウチのアウレリアが、今夜はメグさんと一緒にご飯を食べれるってそりゃあもう色々と楽しそうに料理を作っていたんですよ」

「わぁ、嬉しいです」


 3階でメグたんだけでなく、ウチの家族も一緒に夕食を食べている。

 普段、私の友達と親しく話をする機会も無いので、母さんも父さんもここぞとばかりメグたんに話しかけている。

 そして多分だけれど、親元を離れて研修を受けているということで、勇者様がホームシックに罹っていないかを心配してるんだろうなぁ。

 前にゴンスンデに行った時、メグん所の家族が子だくさんだったし、家族仲がとても良いみたいだってウチの両親には伝えてあったしね。


「相変わらずリアの料理は美味しいです。学園ではクラブの部室で毎日の様におやつを作ってくれていたんですよ」

「へぇ。どんな物を作ってたんですか?」

「えっとですね、男子は甘い物よりもお腹に溜る物が良いみたいで、いつも簡単な一口サイズのお肉料理とか作ってくれていて、私たち女子は甘いものが好きなのでケーキとかクッキーとか、あっ、プリンとかゼリーの時もありましたね。何にしても美味しくて美味しくて。みんながリアの作るおやつを楽しみにしてたんです」

「そうだったんですかぁ」

「いいなぁ、私もリアのおやつを食べたいよ」

「え?おじさんはリアの作ったおやつ、食べた事が無いんですか?」

「いや、食べた事あるんだけれど、ここの所、家に居ない事が多かったからね」

「ああ、ホテルの件ですね」

 父さんは無言で頷いた。


 夕食はこんな風にウチの家族とメグたんが話をしながらだったけれど、一旦夕食が終ると、勇者様と私だけで私の部屋へ移動した。


「あれから叩かれたりはしてない?大丈夫なの?」

「うん、叩かれたのはあの時だけだよ。店長さんも暴力はいけないってみんなに注意してくれたしね」

「それで、先輩たちとは仲良くなれた?」

「う~ん、仲良くはなれてないけど、虐められる事もなくなったかなぁ」

「そっかぁ・・・・」

「兎に角ね、色々質問するのを辞めたの。で、質問する時はその場でするんじゃなくって、ノートに一旦書き付けておいて、その日の仕事が終わった時にする様にしたんだ。そうすると、時間が空いて態々質問することになるからちょっと冷静になって、どうしてもしなくちゃいけない質問とそうで無い質問ってのが分かる様になったんだぁ」

「なるほど!メグも色々と工夫したんだね」

「うん!だからもう心配はいらないよ」


 まぁ、そう言われても心配はしちゃうけどね。

 でも、一応解決の目処が立ったんなら安心だわぁ。

 しかし、流石勇者様。

 ちゃんと対応策を自分で考えて、それを実行しているのが凄いよ。


「ところでさぁ、リアは全然学園に来ないけど、イベントだけでも参加しないの?あややクラブの皆もそうだけれど、ひよこクラブの子たちも会いたがってたよ」

「メグは、イベントとか参加しているの?」

「うん。ドッジボールはリア以外の全員で参加したよ。でも、休み明けは魔法障害物競争とか鳥人コンテストもあるじゃない?どうするのかなぁって」

「私も参加者としてイベントを楽しみたいんだけれど、魔法障害物競争では私の魔法は役に立たないし、鳥人コンテストはイベント当日だけでなく数週間前から機体作成とかもあるしね。多分参加は難しいかなぁ~」

「う~ん、残念!リアと一緒にイベント参加してみたかったのにぃ」と、勇者様はジト目でこっちを見た。


「もし、参加するとしても魔法障害物競争くらいかな。鳥人コンテストは絶対に無理だぁ」

「本当に忙しいんだね」と言われ、思わず大きく頷いた。


「王都でもね、鉄道って言うのが早くて綺麗で揺れないって皆言ってて、ホテルも綺麗で広いって皆が話しているから、とっても評判が良いよ」

「え~、それ、本当?」

「うん、本当、本当。平民では手が出ないけれど、死ぬまでに1回くらいは鉄道に乗って、フローリストガーデンのホテルに泊まって、フローリストガーデンのレストランで食事したいねが皆の合言葉だよ」

「ぶほぉ。皆って?」

「皆は皆だよぉ」

「そっか」

「そうだよ」


 そんな四方山話に花を咲かせていたら父さんがひょいと戸口から顔を覗かせて、「メグさん、そろそろ遅い時間だからおじさんが宿舎まで送って行くよ~」と遠慮がちに声を掛けてくれた。

「は~い。リア、また遊びに来ていい?」

「もちのろんだよ。今度ウチのホテルにも一緒に泊まろう!」

「ええええ!?まじぃ?」

「マジマジ!」

「やったー!」と言いつつ、3人で玄関に向かい、お見送りに出て来たエイファを抱えた母さんに「今日はごちそう様でした。そして遅くまですみませんでした」と勇者様が言えば、「いえいえ、遊びに来てくれて嬉しかったわぁ。また来てね」と母さんが返し、みんなでニコニコ。


「じゃあ、エイファちゃんもまたね~」と言いつつ、勇者様は父さんに連れられて宿舎の方へ戻って行った。

 誰しもに欠点があり、誰しもが問題を抱える。

 そんな当たり前の事だけれど、一山超えたと聞けば本当に嬉しいよ。

 今度遊びに来てくれた時は何をごちそうしようかな~と考えつつベッドに入った。

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― 新着の感想 ―
勇者は、無事に人生の峠を一つ越えることができた 本当の峠は、学園だったのかもしれないが、リアがいたので、峠はなく、平坦なイージーモードだった
メグも苦労したんだなぁ、一つ成長できてよかったなあ。 と、しみじみしました。
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