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 液体状のバターっていうのは見た事がなかったので、どうしてだろうと鑑定を使ってみると、


山羊の無塩バター:

常温の山羊の乳を使って作られたバター。冷やされた脂肪分42%以上のクリームで作られておらず、バターミルクを取り除いていない為、水分多め。


 ブフォ。

 突然、私が噴き出したので、横に座ってたランディとフェリシアが少し私から離れて、いぶかし気にこちらを見た。


 ごめん。でもね、でもね、噴き出したってしょうがないと思う。

 だって欲しい情報が全部入ってるんだものと心の中で思うだけで、口では何も言わない。ふふふふ。


 ん?でも、待って!全部の情報かな?

 クリームってどうやって作るんだっけ?

 そう思って、みんなからは見えない鑑定のディスプレイの『クリーム』の文字を軽くタップしてみた。

 そうしたら画面が変わって


クリーム:

 牛や山羊などの乳を遠心分離機にかけ、脱脂乳と分けた残りをクリームと呼ぶ。

 追加で殺菌・均質化・エージングなどの工程を行う事もある。

 脂肪分の量によるが、1000mlの生乳から100mlのクリームが採取できる。


うぉぉぉ!なんと優秀なスキルだろう!!

これはっ!まずクリームを乳から分離しないとダメで、その後、そのクリームを冷やさないと固形のバターは作れないって事なのね。


そこで、まず、バターの作り方を聞いてみた。

「なんてことないさ。濃い味の乳をこの入物に入れてハンドルを回すだけさ」と婆さんが教えてくれた。

 濃い味のって事は、山羊の乳であればどれでも良いのではなく、脂肪分が高い方が良いということを経験則で知っているということなのかな?

 鑑定の結果を信じるならば、この時点で固形物になっているのだが、バターミルクを取り除いていないから水っぽいという意味にもとれる。

 ということは、ちゃんと取り除けばしっかりとした固形になるのでは?


「婆さん!この家は牛も飼ってる?」

 突然話題を変えた私に、特に驚きもせず鷹揚に「飼ってるよ」と答えてくれた。

「牛の乳も取ってる?」

「ああ、でも、家は雄と雌1頭づつしかいないからね。子牛を産んだ後しか取れないしね」

「今、子牛は?」

「今年1頭生まれたから、乳は出てるよ」

 えっと、鑑定によると1000mlあれば100mlのクリームだから、倍くらいあればいいかな?という事は2ℓ?

 2ℓなら『熊のまどろみ亭』から持って来た鍋の半分くらいかな?

 そう思ったら居ても立っても居られなくなり、熊、もとい、マノロ伯父さんに相談することなく購入させてもらう事にした。


「婆さん。牛乳って売ってもらえるの?」

「少しだったら買わなくても分けてあげるよ」

「ううん。買いたいの。そしてもしかしたらこれから定期的に売って欲しいかもしれないの」

「定期的に?」

「うん。だからお値段を教えて欲しいの」

「値段かい・・・・。困ったねぇ。そういう話なら、私じゃなくってフリアンが決める事になるねぇ」

「それ、さっき私が言ったじゃん。酪農の方は売るかどうか分からないから父ちゃんに聞いてって」

「そうだったね。ごめんね、フェリシア。フリアン伯父さんは今どこ?畑?」

 せっつく私にびっくりしたのか、フェリシアが「今、父さんの所に行っても忙しくしてるから、今度あんたが遊びに来るまでには私が値段を聞いておくよ。どっちにしても家も牛乳は料理に使うからね、売るかどうか分からないよ。まずはそこから聞いておくね」と言われ、それもそうだな。忙しく働いている人の作業を中断させてまでという話ではないなと反省した。


「それで、今日はタダで分けてやるから、持って帰りな」と婆さんがとりなしてくれた。

 どれくらい欲しいのかと言われ、持って来た鍋の中を指さし、「ここくらいまで」と2ℓくらいの分量を目算で指示した。


 今回の目的だったバターについての情報と、自分たちで実験するための牛乳を入手できたので、お礼を言って辞した。

 ランディが中身を零さない様に、行きよりよっぽど慎重な足取りで家を目指している。

 『熊のまどろみ亭』のスープは、満腹感を出すために、私が小麦粉を少し溶かし入れる事を提案して採用されたので、スープであってもとろみが多少ある。

 でも、牛乳はとろみが少ないので運びづらいよね。

 バターミルクさえ取り除けば固形バターになるのか、そもそもクリームを冷やさないと固形にならないのか、その辺を試行錯誤する為に必要なので、一滴も零して欲しくない。

 ランディ、頑張れ!心の中で応援した。


「リア、バターだっけ?作れそう?」

 ランディは目をバスケットに向けながらもポツポツ話してくれる。

 決してイケメンという訳ではないし、マノロ伯父さんの子だけあってガタイが良いのでちょっと圧迫感はあるのだが、いつも妹に接する感じで優しいので、会話がしやすい。


「できそうな気がする。フェリシアん家のバターは液体が多かったんだけど、私が欲しいのはもっと固まってる奴なの。だから、今夜お家で固まったバターができるかどうか実験してみる」

「実験?」

「いろいろ試すってこと」

「はぁ。リアは難しい言葉もいっぱい知ってて驚くよ」

「本を読む機会がたくさんあったから・・・・。ランディも本を読めば、いろんな言葉を知る事ができるよ」

「そうか。じゃあ、学校でも早く計算の授業を終わらせて、リアみたいに本が読める様に頑張るよ」

 いつも前向きなランディと話すと力を貰える感じがするよ。

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― 新着の感想 ―
冷やしてシャカシャカやってれば、クリームになって、すぐにバターになります。クリームで止める方が難しい。
話の流れとしてクリームが欲しいからバターに拘ったのかな? ヨーロッパでも古いレシピでは(菓子の類でさえ)バターじゃなくラード使うのが普通だったので特にミンスパイならラードでいいと思うんだけども…
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