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「アウレリア様の御心配は分かりました。では、どこかの門の近くの土地を買いましょう。もちろん貴族街と平民街の境の土地を」

「でも、ダンテスさん。町外れだと、ホテルまでの移動が大変じゃないですか?」

「ホテルの顧客は貴族、或いは裕福な平民です。自前の馬車をお持ちでしょう。それにレストランの隣家はまだ土地を売る事に対し首を縦に振っておりません。門近くの土地なら貴族街だとしても土地代はとても安いです。数件の屋敷を買い取り、門の横に鉄道専用の門を増設してもらいましょう。そうすればホテル敷地内に駅を建設することもできます」


「となると、今のレストランは閉めて、あの土地を売ると言う事ですね」

「いや、もしアウレリア様がレストランも続けたければ、そのままでも良いですよ。また、売るとしても、今の建物はホテルの方へ移築すれば良いので、更地で売り出せます。有名なレストラン跡地となるので、買い手には事欠かないでしょう」

「それは商売をしやすいと言うことですか?」

「そうです。あの跡地で食堂を営めば、余所から来た人たちはフローリストガーデンと勘違いするでしょうし、そうでなくても今まで利用したくても予約がいっぱいで一度も利用できなかった人達が好奇心に負けて一度は行ってみるでしょうね。ただ」

「ただ?」


「ただ、私としてはレストランはそのまま営業して、ホテルは別とした方が良いと思います」

「ダンテスさん、それはどうしてですか?」

「今でさえ、レストランは予約が取りづらい状況が続いています。ホテルの中にもレストランを造るので、予約を分散させる事ができます。フローリストガーデン 光を閉めてしまうと、宿泊客だけでなく今レストランを利用したいと思っている人が皆、ホテルに集中してしまいます。ホテルには宿泊客がおり、彼らの食事も賄わなければならないのに、宿泊客以外の予約の算段をするのは大変だと思います」


 なるほど~!

 そうだった。未だにレストランは予約で一杯なのだ。

 ホテルと分散出来れば楽かもしれない。

 王都のホテルは今のレストランのスタッフで対応と思っていたから、調理人とかに関しては研修はしていなかったけれど、これは研修を始めた方が良いかもしれない。

 スティーブ叔父さんたちがナイトル村へ移住してしまったので、研修に対応できる人数が減っているけれど、研修をやるなら早めに人材を募集した方が良い!


 結局、西門の貴族街の土地を買い、西門から数マートル離れた所に鉄道専用の門を造り、出入りは今西門を守っている衛兵が管理する事に決まったらしい。

 王都なので、広い土地と言ってもそれ程ではないのだが、下級と中級貴族の屋敷5つ分だそうだ。

 駅も造るし、庭園も造るので、それなりに土地があるとありがたい。

 まぁ、下級と中級貴族の館と言えど5軒分なら建物を上にのばせば庭は確保できるだろう。


 駅はやっぱり人の出入りが激しくなると思うので、五月蠅くなると思うんだよね。

 だから宿泊棟からは少し離したい。

 

 で、早速ダンテスさんはウチのお隣りさんとの土地売買の交渉を打ち切り、王都での工事の職人の手配をし始めた。

 そして私には新しく入手した土地を実際に見て、王都店の設計を変更する様にと言われた。

 城壁の真横の土地だった。

 背の高い建物は城壁から少し離した方が良いだろう。

 城壁の上を警備している衛兵からホテルの中が見える様じゃあ、お客様も落ち着かないからね。


 そこで、敷地に入ってすぐは馬車道としてロータリーを造り、その真ん前がすぐに宿泊棟だ。

 庭園は宿泊棟の裏側から城壁まで。

 敷地は塀で囲い、駅は正面玄関に向かって左側にある大通りに面して建設予定。

 城壁を潜って直ぐの所にした。

 駅に降りるとコンコースとなり、駅ビルから外に出る通路は2つだけ。

 ホテルに繋がっている通路と、街に繋がる通路だ。

 

 他の駅は建物で覆わない予定だが、王都の駅だけは覆う予定だ。

 それはオープンな駅にして列車が入って来た時、人が線路に立ち入り事故になるのを避けるためと、ホテルへの出入りをチェックし、ホテル内の安全性を高めるためだ。


 最初はお金に余裕のある乗客しかいないだろう。

 でも、数年も経てば、ある程度のお金を用意すれば誰でも使える移動手段となる可能性があるだろうしね。

 それは地球の例を見てもあきらかだ。

 前々世なんかは短い距離の日の本初の鉄道が敷かれ、みんなワイワイと見物に行ったものだ。

 まぁ、列車を馬で動かせばそんなにすぐには一般的な移動手段とはならないかもだけどね。

 だって、一度に運べる人数に限りがあるからね。


 で、ホテルの1階はレセプションとお茶等を楽しめるロビーとエステ、それといくつかの会議室で良いと思うんだよね。

 2階からは客室、レストラン、会員制のカジノにして、お店はコンビニくらいで良い気がする。

 コンシェルジュがいるから、買い物は情報を与えて王都内で好きな所でしてもらえばいいしね。


 そんな計画を立て、設計図とも呼べない簡単なクロッキーをダンテスさんに見せたら、会員制クラブは倍から三倍の広さにして欲しいと言われた。

 で、出来たら会員制のクラブと会員制のカジノは別扱いにして欲しいとも。


 どうやらイギリスであった紳士クラブみたいな物はこの世界にはなかったらしく、是非、作ってほしいとの事。

 作りさえすれば、会員希望者が殺到するハズなのだそうだ。

 で、会員は全員貴族のみにして欲しいとのこと。

 まぁ、会員制クラブは内装を豪華にすれば、軽食以外は特別なサービスを用意する必要が無いから楽かもしれない。

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― 新着の感想 ―
土地売買の隣家は、駅やホテル新設の話しを耳にして、「しまった。引き延ばし過ぎた」と思い、ダンテスに再交渉を望んできそうですね 紳士倶楽部はイギリスの産業革命以降、ロンドンなどに創設されましたね 単なる…
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