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 学校から戻ると、伯父さんが作ってくれた生ワンタンとスープが入った鍋をバスケットに入れて、ランディがそれを持ってくれた。

 右手で重たいバスケット、左手で私の手を引くという7歳児には難しいクエストを難なく熟して行くランディ。恐ろしい子。

 ランディは元々体格が良いので力持ちなのだ。熊の子だものね。


 見渡す限りの麦畑と蕪やらほうれん草などの冬の野菜畑。

 昼下がりに吹く、ちょっぴり冷たい風。

 私より大股に歩くランディに付いて歩く私はじんわりと汗が出るくらいで、体はポカポカしている。

 そうなってくると自然と口から零れて来た。

「ラン、ランララランランラン♪ラン、ラーラララーン♪」という某アニメの挿入歌が。

 だって小麦が『蒼き衣を纏いて金色の野に降り立つ』を連想させるんだもん。


 無意識に導入の部分を繰り返していたらしく、何度目かの時、ランディも一緒になって歌っていた。

 およ!

 ランディが歌うまで、自分が鼻歌を歌っていると気づいていなかったので、即行で顔が赤くなる。

 私の鼻歌が止まると、ランディが不思議そうにこっちを覗き込んで来た。

「どうしたの?リア。歌わないの?」

 私は恥ずかしくて無言でウンウンと頭を縦に振る。

「俺、この歌好きだけどなぁ。何の歌なの?」と聞かれ、言葉に詰まってしまった。

「知らない。な・なんとなく口から出たの」

「へぇ、じゃあ、王都で誰かが歌ってたのかもな」

 ランディの言葉に、また激しく縦に首を振って、自分で作ったという嘘を言わなくて良くなったことにホッとした。


 そうこうしている内に、フェリシアの家が見えて来た。

 バターの事を知りたいあまりに、私は重いバスケットを運んでいるランディを後ろに置いて、フェリシアの家の門まで走って行った。


「こんにちは~」

 大きな声で門のところから叫ぶと、後から着いたランディが、「戸の所まで行ってから声かければいいんだよ」と教えてくれたと同時に、玄関の戸が開いた。


「遅ーい!」

 フェリシアの第一声だ。

 私たち二人は早速家の中に呼ばれ、婆ちゃんに伯父さんからだとバスケットから出された鍋を渡した。もちろんランディがだ。

 また、お土産で一杯にしてくれという感じにならない様に、クリスティーナ伯母さんから鍋を渡したら、さっさと中身を別の鍋に入れてもらい、空になった鍋だけ返してもらうんだよとキツク言われていたランディはその通りにしていた。

「まぁ、これはこれは美味しそうだねぇ」と喜ぶ婆さんの手から、フェリシアがスープの入った鍋を受け取り、台所へ持って行った。

 『熊のまどろみ亭』の鍋はさっと洗われ、布巾で拭かれて、すぐに戻してもらえたので、バスケットに戻し、居間の片隅に置いて、私達は婆さんとフェリシアたちと話し込んだ。


 今回の訪問の目的は二つ。

 フェリシアの家で作っている農作物や酪農の品が何なのかと、バターを作っているのかどうかの確認だ。


 結論から言うと、今の時期は蕪とかホウレンソウで、もちろん売ってくれるとのこと。

 フェリシアの家にしても定期的に野菜を買ってもらえるなら嬉しいらしいが、値段とか売る量についてはフリアン伯父さんに聞かないといけないらしい。

 酪農については、そもそも種類は多いけれど、量は少ないので売ってくれるかどうかは分からないとのこと。

 フェリシアの家は元々生粋の農家だったのだが、フリアン伯父さんのスキルが『飼育』であったため、伯父さんの代になってから始めたそうだ。


「でも、父ちゃん。レティシア伯母さんの事、とぉぉぉぉっても可愛がってたらしいから、その子供のあんたが売ってって言ったら、売ってくれるんじゃないかなぁ」というのがフェリシアの予想だ。

 当たってくれればいいんだけどね。


 そしてバターなのだが、商売にはしていないが固形というよりは半液体のバターは自分家の料理には時々使っているとのこと。

 小型の樽に取っ手が付いた様な道具があり、特に冬とか手が空いている時に、くるくると回してバターを作っているらしい。

 そこでバターを見せてもらったが、本当に水っぽかった。

 う~む。この水っぽいバターでもパイは作れるのだろうか?

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