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「本日はお時間を割いて頂いて、ありがとうございます」

 父さんがフェリーペん家の店の中にある応接室で挨拶をしている。

 もちろんその横にはダンテスさんと反対側には私が座って居る。


 向かいのソファーにはフェリーペ父と店長、そしてオマケの様にフェリーペが後ろの方に座って居た。

 皮張りのソファーで壁には綺麗で豪奢な壁紙、この応接室は富豪なんかがお客として来た時に使っている部屋なのだろう。

 まぁ、お貴族様の場合は店から人を館へ派遣するだろうからね。

 この部屋を使う時の相手はお金持ちの平民か、貴族に仕える使用人くらいのものだろうとは思う。


 挨拶が終るとフェリーペが私の視線を捕まえようと変な動きをしているけれど、まずは商談だよね。

 なので少しの間無視しちゃうよん。


 今回の話合いは主にダンテスさんとフェリーペ父の間でなされた。

「鉄道というのをご存知でしょうか?」

「ヤンデーノとモリスン村の間に大公様が敷設された鉄の馬車専用道の事ですな」

「そうです。今はホテルの貨物だけを運んでおりますが、大公様は将来人の運搬もこの鉄道でしてみたいとお考えです」

「なんと!では、ウチのコンビニなどで売っている物資の運搬もその鉄道でさせてもらえるんですか?」

「それは可能ですが、有料になりますし、大きさや重さの上限がございます」

「ほぉ、で、運搬費はおいくらくらいになるので?」


 ダンテスさんから言い渡された金額を聞いて、フェリーペ父は目を剥いた。

「そ、そんなに高額なのですか・・・・」

「はい。ですので、人を運ぶと言っても貴族や豪商のみとなりましょうな」

「そうですか・・・・」


「で、人も運ぶとなれば夕方になると乗客が宿泊したり、食事を摂る事になります」と、途中駅の宿や食堂、そして食堂を使いたくない人や翌日のランチとしてお弁当的な物を買いたい人が出る事を考えてコンビニの様な店を備えたいと説明をした。


「でも、ダンテスさんのお話だと、賃貸契約になり私共が土地の所有は出来ないと言う事なんですね。しかもその賃貸契約は1年毎の更新で、数年後には確実に賃貸契約も終了してしまうと・・・・」

「はい。最終的にはその土地には簡易宿泊施設ではなくちゃんとしたホテルを建てるか、今のホテル程豪華で無くてもそれ相応の宿泊施設をこちらのアウレリアさんに建ててもらう心算です。そうなるとその施設の中にコンビニが必要となるので、簡易的なコンビニの後には正式なホテル内、或いは類似の施設の中でのテナント契約に移行します」

「おおお!それならウチにも旨味があります」


 正直言えば、フェリーペん所にはウチのホテルチェーン全店にコンビニを出店させてあげているので、既に儲けは出ているハズなんだけれど、それでも更に利益を求める。これが商人のあるべき姿なのかもしれない。


「ゴンスンデのデパートの様な施設になるかもしれません。今の所は鉄道の便数や利用客の数の予測が立ちませんので必ずしも儲けが出るとはお約束できません。そこで簡易施設である間だけではありますが、私どもと契約のあるコンビニ店へ搬入する商品の運搬に関してのみ、大きさ、重さの上限は設けさせて頂きますが、先ほどご提示させて頂いた料金の20%引きで運ぶ事をお約束いたしましょう。将来的には王都からヤンデーノ、そしてゴンスンデまでの2系統の線路が出来る予定です。もちろん、鉄道駅で簡易コンビニを出すのはちょっとと思われる場合は、別の商人の所へ話を持って行く事になります。私どもとしてはホテルチェーンで契約をしているそちらの顔を立てるつもりで今回お話を持って来ております」


 うほぉ。ダンテスさんも段々商人のやり方を学んで来てるみたい。

 相手にとっての利点を示すだけでなく、こちらの方が契約相手を選べるだけ上の立場なのだと暗に圧を掛けてるよ。


「も、もちろん、鉄道の駅もウチで出店させて頂きますよ。金持ちしか利用しない移動手段があると分かっているのに、そこに店を出さないというのは商人としては考えられません。例え最初の数年、損をしたとしても、最終的に利益を上げれば良いだけのこと。どうぞ、今後共よろしくお願い致します」


 悪い笑みを浮かべたフェリーペ父とダンテスさん、そして家の父さんの3人で固い握手をし、今はダンテスさんが持って来た契約書の中身の確認に入った。


 フェリーペがそっと私の横に来た。

 契約の中身は事前に読んで知っているので、私が一緒に確認しなくても良いので、フェリーペの方を振り向いた。


「リア、元気だったか?」

「うん、とっても忙しかったけどね。そっちは?」

「俺も毎日、忙しい。ボブやランビットも工房で頑張ってるぞ。でも、一つ気になったのが・・・・メグの事なんだが・・・・」

「お店でのいじめの事?」

「お!お前知っていたのか?」

「ううん。この前王都に戻って来てから初めてメグの所のお店へ行ったの。その時先輩から叩かれているのを見てびっくりしてしまって・・・・」

「え?叩かれていた?俺たちが知ってるのは無視されたり怒鳴られたりだったけど、叩かれてたって・・・・」

「この前、あややクラブの部室で待ち合わせしてちょっと話をしたんだ」

「で、どうだった?」

「メグの周りの雰囲気を気にせず質問する所が原因の一つだから、自分にも非があるので、もう少し同じ店で頑張ってみるって言ってたよ。どうしようも無くなる前に、私に言ってもらえたらウチの店でも研修できるし、服飾関係が良いなら大公様に頼んでみるとは言ったんだけどね、今のままだと同じ事の繰り返しになると思うからって・・・・」

「そうか・・・・」


 フェリーペたちもメグたんの状況を知っていた事に驚いた。

 私が王都に居ない間も彼らが勇者様の事を心配しながら見守ってくれるんなら少しだけ気が楽になったよ。


「フェリーペ、何かあったら、メグをウチの家に連れて行ってね。私が王都に居ない間でも問題ないから。研修先はメグさえ納得してくれれば、新しい所を探す手伝いもするし。兎に角、メグの心や体が傷つかない内に、ウチへ来てもらう様にしてね。私も王都に居る時は、出来るだけメグの様子を見に行くね」

「おう、分かった。俺ん所の衣服コーナーがもう少し大きければ、俺ん所って選択肢もあったんだけどな・・・・。うん、何かあったら絶対お前ん所へ連れて行く」


 私たちの内緒話が終る頃には、フェリーペ父とウチの契約書への署名が終っていた。

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