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 都会のホテルに何が望まれているか。

 便利さだろう。

 でも、ウチのホテルの様な大きな庭を有するホテルは地上げ屋みたいな強引な土地取得をするか、多少不便でも土地の空いている郊外に建てるしかない。

 ただ、郊外に建てた場合は便利さに欠ける事になる。

 そこで鉄道と駅なのだ。


 でもなぁ~そうすると旅客を鉄道で運ぶって事なんだよねぇ。

 何か面倒臭い。

 そう思っていたら、ダンテスさんがグランドオープンセレモニーが終ったばかりのナイトル店にとある男を連れて来た。


「アウレリア様、こちらが鉄道の運行計画を任せる候補者として考えているケヴィンと言う者です」と、若いのに頭髪が非常に寂しく、背が低く、出っ歯な男を紹介して来た。


「アウレリア様、どうぞよろしく。ケヴィンです」

 男は丁寧に頭を下げた。

「アウレリアと申します。どうぞよろしくお願い致します」


 こんな幼女に頭を下げさせられるのって大人の男としては不本意なんだろうなぁなんて思いながら挨拶を返すと、小男は目をランランと輝かせ、「ガルフィールド様から聞きました。あの鉄道ってアウレリア様が考案されたとっ!」とすごい食いつきだ。


 いや、私が考えたわけではないんだけれど・・・・と逡巡していたら、更に小男は「あれは世紀の発明です。後、単線、複線という考え方、駅での切り替えというのも聞きました。アウレリア様は流石大公様の精鋭のお一人だそうですね。天才ですっ!」と口から唾を飛ばしながらにじり寄られて、ちょっと引いちゃったよ。


「え、まぁ、いえ・・・・」

「ダンテスさんから大公様も旅客を運ぶ手段として考えているので、貨物以外に何便くらい客車を増やせば良いか考えて欲しいと言われてます。なので、一度運航計画の素案を作りますので、ホテル運営で忙しいでしょうが、確認して欲しいですっ。お願いします」

「ああ、はい・・・・」


 勢いに圧されついつい承諾してしまったけど、鉄道の運営は他の人がしてくれるなら私に嫌は無い。

 ホテルだけでも手いっぱいなんだよ。

 ただ、ホテル関係者の移動と、ホテルの貨物の運送を優先する事だけは忘れて欲しくないので、それは諄いくらいケヴィンさんにお願いしておいた。

 

 彼は鼻唄でも自然に口から出て来そうな上機嫌でウチのホテルを後にした。

「アウレリアお嬢様。鉄道の営業権や経営権はアウレリア様を含めた大公様の精鋭団全員になります。ただ、発案者であるアウレリア様の利益配分と鉄道使用の優先権は未来永劫必ず守る様にと大公様がおっしゃり、既に書面にされ、精鋭の皆さま全員が署名しております。次いで優先権をお持ちなのが実際にレールを作り敷設したガルフィールド様です。ケヴィンが運航計画を立てたとしても、それは技術的な事を考慮しての鉄道の時間割の作成にすぎませんし、アウレリア様が大人になられるまで経営そのものはガルフィールド様がなされます。ですので、これ以上アウレリア様のお時間を大きく割いて頂く事はあまり無いかとは思いますが、ホテルと一緒で、開通して運営に問題が無いか確認できるまでは、何かと相談させて頂く事になります。どうぞよろしくお願い致します」


 ダンテスさんがものすごく丁寧に頭を下げて来た。


 ゴンスンデのホテルは鉄道の駅が出来てからでないと本領を発揮しないだろうと言う事で、王都からゴンスンデ間をモリスン村-王都間より先に開通させるとのこと。

 う~む。

 

 大公様もどちらかというと北への旅行より、東への旅行の頻度が高いので、早く王都-ゴンスンデ間を開通して欲しいとのこと。


 本当はね、鉄道を敷いて目的地に着く途中に宿泊となると、旅客が泊まる宿屋が必要になるんだよね。

 王都からポンタ村を通り、ナイトル村まで鉄道でもレールの上を馬で曳かせると朝早く出て2泊して次の日の夕方までかかる。

 ナイトル村からゴンスンデまでやはり同じだけの移動時間が必要になり、駅前に宿を作る必要があるのだけれど、私は今手一杯で駅前ホテルを建てるのは無理。

 そこで今から建てるのは簡易の仮の駅とし、将来的には駅の場所を移動させる事を説明した上で宿を経営したい人たちを募った。

 魔石での鉄道運営が叶えば当然駅そのものの場所が大きく変わるし、それがダメで馬での運営でもウチが駅前ホテルを建てる時は駅の位置を少しずらして駅前という一番美味しい場所にはウチのホテルが建つ事も説明済だ。


 それでも世の中、そういう営業形態でも問題ないと思う人は結構多いみたいで、可成りの人が手を挙げた様だ。

 一つには鉄道に乗る事が出来るのは資金力のある客に限られるだろうし、その宿しか泊まる所がないという独占状態になるので1年でも2年でも、もっと言えば1年未満であっても数か月荒稼ぎ出来るなら良いとのこと。


 元々、鉄道の重要性に元の土地所有者である各領主が気づいていないために、線路周りに村や町が無いのだ。

 だから宿一つで独占状態なのだ。

 そして将来仮の駅を廃止し、新しく駅を建てる時はできるだけ駅に近い土地を割り合えててもらいたいという要望が宿の主人たちから出ており、それを飲んだ形で契約をしている。

 

 ただ問題はどれくらいの頻度で乗客が鉄道を利用するのか分からない事。

 今の技術力だと普通の馬車よりちょっと大きめの馬車、つまり日本で言う電車の車輛の半分にも満たないスペースに客を乗せる事になるのだ。

 ペイしないかもしれないよ、折角宿を建てても。


 それに1軒しかない食堂付きの宿屋ってぼったくりになったり、食べれない様な酷いモノを平気で出す店も出てくるかもしれない。

 そうなると鉄道のイメージが悪くなると思うので、宿とは別に小さなコンビニを駅横に建てようかなとは思うんだ。

 まぁ、そこはフェリーペん家と要相談なんだけれどね。 

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