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 ワンタンをこれからも作るのなら、ひき肉が必要なので何とかしてミンサーを作ってみるかなぁなんて思いながら、従兄のランディに手を引かれ、学校へ向かう。

「リア、今日はこの前の本の続きを読むのかい?」

「うん」

「面白いの?」

「うん。漸く国を護る戦争にケリがつくところなの」

「戦争かぁ・・・・」

「すんごく臨場感溢れる描写で書かれているから、ランディも一通り勉強が終ったら読んでみたら?」

「俺は読書はあんまり好きじゃないからなぁ・・・・。リアが本の内容を纏めて教えてくれよ」

 学校への行き返りはランディと二人だけで話をする良い機会なので、毎回手を引いてもらいながら会話が途切れる事は無い。


 子供の足でも直ぐに学校に着いた。

 パルマン神父様が教卓の横で子供たちに捕まっているところに元気よく挨拶をした。

「おはよう。ランディ、アウレリア。そろそろ始まるので、みんな席に着いてくださいね」

 あくまでおっとりと話すその姿は、若いに似合わず安心感をみんなに与えていて、おちゃらけパウロでさえ素直にパルマン神父の言う事なら良く聞くのだ。

 パウロはちょっとジャイアン入ってるからね。

 他人の意見には無頓着な所があるみたい。

 将来の村長を目指しているのに、他人の意見に興味がないというのは如何なものかと思うけどね・・・・。

 そのパウロを声を荒らげる事なく従わせるパルマン神父は、やはりスゴイ人なんだと思う。


「カンカンカン」

 神父が教室の端に備えてある鐘を鳴らして、カテキズムの始まりだ。

 何度見ても1人劇を見ている様だ。

 娯楽に乏しいこの世界では、この劇(カテキズムの授業)がとても楽しみなのだ。

 はぁ、神父ってのは宗教人というより俳優としての才能を問われる職業じゃないだろうか?


「では、5分休憩したら、3つのグループに分かれて、黒板に書いてある問題を解きなさい」

 いつもの通りそう言われて、私は先生から先週読んでた本を貸してもらう。

 繰り返しになるが、この世界では娯楽が乏しい。

 物語を読むのは劇を見るのと同じくらいの娯楽なのだ。

 めちゃくちゃ楽しい。


 学校の終わりにパルマン神父に本を返却する際、「アウレリア、君は王都の学園で学ぶ気はないのかい?魔法スキルがなくても、学業が優秀なら試験の結果によっては就学できるんだよ」と聞かれたが、首を横に振っておいた。

 「そうかい?君の年で、それ程学問を究めている子供は少ないし、一般教科だけでも磨きを掛ければ、将来貴族に引き立てられたり、裕福な商家に勤める事も夢じゃないと思うよ。それに今はまだ考えられないかもしれないけど、結婚だって学園で出会う優秀な異性と知り合い、裕福な家に嫁げるかもしれないよ」

 パルマン神父様が真剣に私の目を見て説得してくれる。


 中くらいの村から地方都市までは、平民が通う読み書き計算だけ教えるここの様な学校がある。

 それも父さんたちの代では叶わなかった夢であるが、私達の世代の子供は一律学校へは行かせてもらえる。

 但し、貴族の子は未だに学校ではなく家庭教師にいろいろと教わってるって伯父さんが言ってたよ。


 平民に話を戻すと、学校を卒業する時、優秀な生徒は領主様のご厚意で王都の学園で勉学を続ける事が許される場合がある。

 ご厚意というのは資金援助という意味だ。

 領主側も早い内から優秀な人物を抱え込むという、そういった意味も含んだ資金援助だ。


 正直、学園で魔法を学べるのならとっても嬉しい。

 だけど、ポンタ村から近い学園は王都にしかなく、王都へ戻るっていうのがネックなんだよね。

 学園は全寮制だから、王都へ戻っても伯爵家に住む必要はないんだけど、何より伯爵家ご長男のヘルマン様が勉強されているはずなのだ。

 ヘルマン様は魔法スキルは無いけど、貴族の嫡男だし、学業優秀という事で学園に入学しているって前に王都館のルイージさんが言ってたっけ。

 学園の寮に入れば、学年が違っても顔を合わせる事もあるかもしれない。


 生まれてこのかた、父さんたちが使用人なので伯爵家に住込みしていたけれど、ヘルマン様が使用人の子供を覚えているかどうかは分からない。屋敷でお互いの姿を見る機会も数える程しかなかったしね。

 でも、料理魔法なんて珍しいスキルを持っている事がバレたら、絶対に彼の注意を引いてしまうはず。

 かと言って魔法スキル持ちである事を隠し、一般教科だけを学ぶのなら学園へ行く意味がない。

 だって、平成・令和の日本の教育より随分と遅れているはずだから。

 やはり何度考えても魔法を習えないのなら、学園に行く事のメリットがデメリットを上回る事はない。

 うん!悩む必要はないね。

 学園へは行かない。


「先生、私、スキルについていろいろ学びたいんです。先生のお手隙の時に徐々にで良いので教えてもらえないでしょうか」

 私の唐突なお願いにパルマン神父はおっとりと頷いて肯定してくれた。

 これで今までくすぶっていたスキルについてのいろんな疑問が晴れるかもしれない。

 学園に等行かなくても、ポンタ村で十分知りたい事は学べるはずだ。

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