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 各自が自家の馬車で移動するのが貴族のデフォなので、ホテルへの到着時間はマチマチなのだが、昼前後に到着した場合はウチでランチを摂るのは確定だと思う。


 侯爵から男爵まで満遍なく大公様が選ばれたので、上位の貴族はスイートルームへ、下位の貴族はツインルームで、随行のメイド等はモリスン村に元からある宿屋へ宿泊してもらい、村の中心部からホテルまで無料の馬車便を午前、午後、夜に分け、それぞれ複数回行ったり来たりさせた。

 こんな事だったらもう1階分増やして客室を多めに作れば良かったかなとも思ったのだけれど、グランドオープンと通常の営業時では客の入り具合も違うと思うので、まぁこのままで様子見だね。 


 食事だが、今夜と明日の夜はブッフェ形式にするので、厨房も自分たちのリズムで調理しやすいのだが、アラカルトで頼まれるとどうなるかが今日の昼に判明する。


 私もレストランの調理場でがっつり働くのは学園に入る前辺りまでだったので、どんな感じかは忘れちゃったけれど、少しでも作業しやすい様に、2種類のランチセットとそれとは別にアラカルトを用意してみた。

 ランチセットがあるとお客様の方でもあれこれ悩まずに済むので、給仕の子たちには出来るだけランチセットを頼む様に客をそれとなく誘導する様指示を出している。

 

 普通貴族は子供がいても成人していなければ一緒に旅をしたりしない事が多いらしい。

 私の前世や前々世、そして現世の平民家族からはそれがどんな事なのかは想像がつかないけれど、あややクラブのザお貴族様ズはどこか他人との距離感があった気がする。

 もしかしたら高位の貴族の子は親との触れ合いが殆ど無いからそうなるのかも?

 まぁそれも、相手が子供であってもお貴族様と言うこともあり、こっちが距離を取っていたとも言えるので、あの距離感の正体がお貴族様側だけが原因とは言えないけれどね。


 でも、家族旅行を体験しない子供時代、親は夜は社交でパーティ三昧や長期で旅行をしたりするのに、子供たちはナニーが育ててくれる様なものだものね。

 家族間の繋がりってどんな風になるんだろうね。


 それでも高位な貴族でない場合は、子供も一緒に旅をする貴族家もあるらしく、今回大公様が選出されたおよばれお貴族様の中には子爵や男爵も交じっているので少人数の子供は来る可能性がある。


 と言うことで子供にはお子様ランチ!これしかないよね。

 親と一緒に旅行しても、レストランの様な大人が集まる公共の場へは、突然泣き出したり大声で話したり、そこら辺を駆けずり回ったりしない大人しい子以外は連れて入れない。

 まぁ、地球だってヨーロッパはそんな感じだよね。


 なので、今回ウチへお呼ばれに来るお貴族様の中には子供を引き連れて来て、子供だけ部屋でお食事なんてのは普通にありそうだ。

 だからこそのお子様ランチ。

 飽きが来ない様にいろんなおかずを彩よく馬車型のお皿に入れ、おやつのプリンや簡単なおもちゃも付けてある。

 え?どんなおもちゃかって?

 綺麗な色のついた厚紙で造られた風車だよ。

 お部屋にあるベランダで外の風で回しても良いし、口で息を吹きかけても回るし、なんならウチの庭園を散歩しながら外の風で回したり、自分が走る事で回したりと色んな遊び方が出来るからね。

 2日間続けて風車でも大きさや色が違ったらそれで充分だと思うし、両手に1本ずつ持って走るってのもいいかもね。

 気に入ってくれるといいなぁ。


 そして馬車型のお皿!

 これは私のスキルの出番でしたよ。

 錬金術クラブでミニ馬車をボブたちが作っているのを見てたからね~、大体の形と男の子が馬車を構成する部品のどこらあたりにキューンと来るのかが分かっちゃうんだよね。

 だから食べ終わってお皿を裏返すとちゃんと駆動部が見れる様になってるんだよね。

 陶器で作られたお皿なので、駆動部も薄ら浮彫になってるだけなんだけれど、食べ終わって皿の裏を何かの拍子に見る機会があれば、テンションが上がるのは間違い無い!うふふふふん。


 さぁ、アラカルトでもランチセットでも野菜の下拵えや付け合わせ用のカット野菜やグラッセなんかはどんどん用意しちゃうよぉ。


 お客様のお迎えはドアマンにお任せなのだ!

 ふふふふ。ドアマンの制服にも凝っちゃったからねぇ。

 お貴族様の中には驚くかもね。

 今が夏でなくて冬であればシルクハットとどっしりとした黒とか臙脂の質の良い膝下くらいまでのロングコートを着せちゃうんだけれど、今は夏なのでそんな服を着せたら拷問だよね。


 だから、薄手の生地でちょっと長めのロング丈の半そでジャケット。襟は楯襟ね。で、色は白に近いグレーで、手には白の手袋。

 そんなジャケットにシルクハットは合わないので、地球のベルボーイが良く被っている様なひさしの無い帽子にした。

 ジャケットとの共布で作ってあるので、統一感があるんだよね。


 馬車が敷地の境にある正門を入ると、門番がレセプションと繋がっているベルの紐を引く。

 心地よいチリンと言うカワイイ音が鳴ると、ドアマンとベルボーイがセットとなり正面玄関前でお客様を待つ。

 しばらくすると馬車は敷地内の道を道なりに移動し、正面玄関へ。

 一行の中で主が乗っていると思われる馬車のドアをノックし、開けるのがドアマンの仕事だ。

「ホテルフローリストガーデンへようこそ」と挨拶をしつつ、彼らをラウンジへご案内。

 飲み物の注文を受けるために、そこからウエイトレスへバトンタッチ。

 

 主たちがラウンジでお茶している間に付いて来たメイドさんか執事さんがレセプションで受付を。

 そこから先はホテルのメイドさんがお部屋までご案内なんだけれど、ベルボーイに荷物を運ばせるかどうかはお客様次第。

 有料サービスだからね。


 馬車は正面玄関前のロータリーを回り、看板の案内に従って左に逸れ、馬房がある方へ移動してもらう。

 馬の世話や馬車の駐車が済めば、御者は馬房二階の御者の部屋へ。

 御者の食事と馬の世話の有無を確認。有償サービスだからね、自分でやるって人もいるかもだから。

 数人に一人くらいは、村の安い食堂で食べたいって人もいるかもしれないからね、一応確認ね。

 で、御者用の食事は兎に角安くて量が多いものにする。

 品数は少な目だし、調味料は塩が主である。

 御者の宿舎となっている2階には共通食堂と大きなテラスがあるので、テラスで食事したい御者さんは庭園を上から見ながら食事出来るのだ。


 ウチの馬房のスタッフは自前の服の上に制服である袖なしジャケットを身に着けてもらってる。

 本館から見えない所は経費削減なのだ。

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