61
メグはミスコンの候補者に決まった。
蓋を開けてみたら、フェリーペ、闇王様、セシリオ様などが候補者の中に名前を連ねていた。
マリベルが言うにはオスカル先輩は私同様断ったとのこと。
だろうねぇ~。
男子のあややクラブ率、結構高いよね。
今、朝のホームルームが始まる前の教室で、メグたんと私はメグたんが当日着る服と髪型を、ああでもない、こうでもないと話し合っている所だ。
勇者様自身がデザインした金属製の花冠はそれはそれはカワイイ感じで、カスミソウの様な花を模している。
それもカスミソウとしては比較的大きく花開いたモノを白い金属で、まだつぼみの細くて小さなカスミソウを銀色の金属で造るらしい。
決して派手ではない。
でも、カントリーテイストとでも言えるのか、ドイツあたりの民族衣装や開拓期のアメリカ合衆国の素朴な女の子が被ってそうな花冠なのだ。
でも、白いレースのドレスを着た花嫁さんが被ってても全然違和感ないデザインでもあるのよ。
結論としてはシンプルだから何にでも合う!
髪はアップにした方が後ろを向いた時に花冠が綺麗に見えると思うし、メグたんは髪が短めなので、形だけでも後ろをアップにした方がエレガントに見えると思うんだ。
顔がカワイイから、服は村娘風でも良いし、この前のダンスパーティの時のドレスなんかに手を入れてお洒落にしちゃっても良いと思う。
花冠と同じ素材と似た様なデザインでコサージュを作って、ドレスのリボンの所に付けておけば、冠を被った時にピタっと嵌る気がする。
「私は服はリアと一緒に作ったゴスロリ?あれか、アドリエンヌ様が作って下さったこのまえのドレスしか持ってないんだよねぇ」
「メグはどっちも似合ってたよ。ねぇねぇ、アドリエンヌ様が作って下さったドレスに大きなリボンが付いてるでしょ?」
「うん」
「リボンの結び目の所に、花冠とお揃いの飾りを付けたらどうかな?ステージで造るのは花冠だけだけど、前以て胸飾りは作ってドレスに付けておくの。そうしたら特別感が出るんじゃない?」
「うん!いいね」
勇者様は急いで紙の余白にリボンにくっつける飾りのデザインを描き始めた。
私はどんなデザインになるかワクワクして見てたんだけど、そこへマリベルが来た。
「ねぇ、アウレリア」
「ん?おはよう」
「おはよう」
まずは挨拶くらいしようよ~と思ったから、態と挨拶したった。にひひひ。
「ミスコン、女子の候補者が少ないのよ。あなた出なさいよ」
「え?嫌だけど」
「えええ?男子はすぐに集まったんだけど、女子がなかなか決まらないのよ。あなただってイベントを企画する大変さは分かるでしょ?」
出場者が少ないとしても、関係のない私がイベント運営側の苦労を考慮してあげる謂れはないんだけどなぁ。
「私は、人前に出るのが苦手なの。だから候補者にはならないわよ」
「でも、女子が足りないのよ」
マリベルは何が何でも私を出場させ様と思っているみたいで、こちらの言う事を一切聞く気が無いみたい。
「どうして女子が足りないの?他薦の数が足りなかったの?」
「違うわよ。貴族の女子が軒並み候補者になるのを辞退したのよ」
「え?どうして?」
「貴族が何かを選ぶ事はあっても、平民なんかに選ばれる立場になる事は無いって言いだした女子候補が居たんだけど、一人そんな事を言い始めたら右に倣えでほとんどの貴族女子の候補者は引き受けてくれなかったの」
「でも、同じ貴族でも男子は参加してくれるんでしょ?」
「男子は問題無いのよ。容姿が良い方が良いけれど、女子程容姿を問われないから。でも貴族の娘は容姿が優れているかどうかが婚約とか結婚に直結しているのと、ミスやミスターを選ぶのに平民も参加するのが許容できないってことみたい」
「なら、男子だけでミスターコンにすればいいんじゃないかな?」
「何を言ってるのよっ!」
マリベルは、私がなかなか候補者になる事を受け入れないので苛立った様子。
更に大声で詰ろうとしていた所に、ガスペール先生が教室に入って来た。
私に背を向けてナナの方に移動しようとしたマリベルの背中に「兎に角、私は参加はしないよ」と追い打ちをかける事になるけど、強い意志を持って拒否していると分かる様にしたった。
だって、勝手に登録とかされたら嫌だもの。
勇者様も私を気遣って声を掛けたそうにしていたんだけど、ガスペール先生のホームルームが始まったので、しょうがなく黒板の方を向いた。
マリベルと入れ違いになる様に私たちの横に来て椅子に座ったフェリーペたちも心配そうに私の顔を覗いている。
大丈夫よ。私は絶対に候補者にはならない。
勝手に登録されたとしても、出なければ良いだけだ。
何ならミスコンの時間になったら家に帰れば良い。
そうしたら誰も私に出場を強要する事は出来ないからね。
しかし、マリベルって入園当時からだけれど、メグや私に対しては何時でも上から目線なんだよね。
何を根拠に自分の方が上って思っているんだろうね。
はぁ~。




