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「おはようございます」
「「「「おはようございますー!」」」」
「本日は新しいイベント、魔法障害物競争に参加又は観覧に集まってくれてありがとうございます。これより第一回魔法障害物競争を開始します」
「「「「「「「うわぁぁぁぁ」」」」」」」」
ドッジボールを上回る歓声が観覧席から沸き上がった。
今朝早くに設置されたポップカラーの巨大ストップウォッチがなんかとっても目を引いちゃう。
さぁ、闇王様の開会宣言が終ったので、ここからは私の仕事だね。
「それでは魔法障害物競争のルールをご説明致します。レーンは2つ。各レーンに1チームずつスタンバイしてもらい、合図に従って同時にスタートをしてもらいます。みなさん、ゴールの方向にある巨大な時計が見えますか?」
「見えるぞぉ」
「見えます」
「かっけぇぇ」
観覧席から色んな声が上がる。
「左のレーンは水色、右はオレンジ色がそれぞれのレーンカラーです。ゴールにある巨大な時計はそれぞれのレーンで競技をしたチームのスタートからゴールまでに掛かった時間を表示します。色で識別できるので各チームのゴールタイムが分かりやすいかと思います。競争自体は1度に2チームずつ実施しますが、優勝は全チームのゴールタイムで競います。一番短い時間でゴールしたチームが優勝の栄誉を手に入れるのです」
「「「「「わぁぁぁぁぁ」」」」」
「ゴールするまでには幾つかの障害があります。その障害を乗り越える為に魔法を使用しても良いのですが、道具はダメです。道具を使った時点でそのチームは失格となります。また、怪我人を出したチームも失格となります。ゴールまでの時間はチームの一番最後の人がゴールに入った瞬間で測ります。もちろん別のチームの妨害等、細かなルールに抵触したチームも失格となりますので、ルールに従って競技をお願いしま~す」
参加チームたちスタート地点の脇で頷いている。
「さて、レーンですが、落とし穴通路、平均台通路、水地獄、衝立、水路、振り子地獄の6つの障害で形成されています。平均台で下に落ちた時は平均台の最初に戻ってやり直しになります。それは落ちた人だけです。他のチームメイトはそのまま先に進みたかったら進んで頂いて結構です。また、スムーズにイベントを進めるため、ゴールに10分以上掛かるチームも失格となりますので、頑張って下さい。スタートの合図ですが、音楽クラブのハミルさん、試しに一度音を出して頂けますか?」
スタート地点横にラッパを持って立っていたハミル様は一度軽く頷いて「パオ~ン」と言うちょっと間抜けな音を出してくれた。
この音はこちらから指定しているのだ。
必死になって競技したり、それを応援する人たちは直ぐに熱くなると思ったので、態とちょっと力が抜ける様な間抜けな音と言ったらハミル様の方でこの音をチョイスして来たのだ。
「ありがとうございます。この音がスタートの合図となります」
私が拡声器を通してお礼を言うと、ハミル様は軽く手を挙げて答えてくれた。
今回はファンファーレは無しなので、音楽クラブからはハミル様だけが協力者として参加してくれている。
「スタートする前に最後の注意事項です。水や土などを使う場合、各自レーンのすぐ横にある貯蔵された物を活用して下さいね。そしてレーン内の土や水を取り除く場合も、それらの土や水は所定の所にのみ移動させて下さい。これは競技に参加している人だけでなく、観覧席にいる人たちの安全にも関係してきますので絶対守って下さい」
これにフライング等についても案内をし、それで私の説明は全てだ。
最初の2組は今か今かとスタートの合図を待っている。
では、そろそろ始めますか。
「それではお待たせしました。魔法障害物競争の栄えある第一回の競技は左水色レーン1年平民組の5名、右オレンジレーンは3年中の1組チーム4名です。位置について、よーい」
「パオ~ン」
「「「「「わぁぁぁっぁぁ」」」」」
2チームの全メンバーが我先にスタートすると、観覧席の声援もものすごい声量になった。
ゴール付近ではひよこクラブのメンバーがインタビュー要員として待ち構えている。
各レーンにも水と土の魔法を扱うアルバイトさんたちが控えている。
さぁ、ここから実況しないとだね。
「スタートは体力のある3年中の1組が早いですね。でも、直ぐに最初の障害物、落とし穴通路が待っています。さて、各チームどんな対応策を使ってこの障害物を乗り越えるのでしょうか?あ、3年生チームは土魔法で落とし穴の半分までを土で埋めていますね」
「おはようございます。解説のセシリオです」
「おはようございます。セシリオさん、今回もどうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。ところでアウレリアさん、この落とし穴の深さを半分まで埋めると言う手法、どうしてだと思いますか?」
「落とし穴全部を埋めるよりも短い時間、少ない魔力で済むからではないですか?」
「その通りなんです。でも、ほら1年生チームは同じ手は使っていませんね。彼らは可成り上まで土で充填していますね」
「そうですね。この差はどこから来ているんでしょうか?」
「それはですね、1年生チームの身長が3年生チームのメンバーに比べて低い事と、1年生チームには女子が2人入っていますね」
「そうですね」
「やはり女子だと体力の問題があるので、彼女たちの負担を出来るだけ減らしたいと言う思惑があるのではないでしょうか」
「そうだったんですね。あっ、3年生チームは早くも落とし穴通路を全員が通過しました。次は平均台通路が彼らを待っているわけですね」
「1年生チームも3年生チームに遅れる事41秒で落とし穴通路を通過した様ですよ」
「セシリオさん、41秒の差と言うのはどうでしょうか?」
「まだ序盤なので、問題無いと思いますよ」
「さぁ、3年生チームの最初の一人が平均台に足を掛けました。土魔法で台を出しているみたいですね」
「台は出しているみたいですが、台そのものが平均台から滑り落ちない様に要所要所で平均台を巻き込む様にして台を形成しているみたいですね。考えましたねぇ」
最初の競技が始まり、セシリオ様の解説も分かりやすく、どこを見れば面白いかと言うのを上手く誘導してもらってる。
セシリオ様もイベントの度に解説をしてくれているので、段々解説が上手くなってる気がするよ。




