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普段と違う男前のランビットを見た翌日からも2つのレーンは早朝と放課後、びっしりと予約が入り、出場チームが練習していた。
あの時はまずフェリーペが漢な所を見せたのにね、すっかりその後話したランビットに全部持っていかれちゃったよね。クククク。
練習後、動かした土や水は、レーンを使ったチームが練習時間内に自分たちで元の状態に戻している。
ちゃんと戻さないと本選に出場できないとあって全チームちゃんと決まり事を守ってくれているので、今の所もめ事は起こっていない。
ただ、観覧席は入場禁止にしているのに、常に多くの生徒たちが入り込んでいて、ワイワイと楽しそうに見ている。
中には野次を飛ばす者もいたりする。
どうして観覧席を入場禁止にしているのか?
それは練習している他のチームのクリア方法を見て真似られると、その手法を考え出したチームが不利になるからなのだが、もうここまで毎回たくさんの生徒が入り込んでいると、取り締まりも何もあったものではない。
見られたチームも他のチームを見る事は出来るので、もう放置でいいんじゃねぇ?ってウチのクラブでもそんな雰囲気になってます。
失格基準に怪我人が出たらと明記しているので、かなりのチームが慎重に攻略を進めているっぽい。
ぽいと言うのは、私たちあややクラブのメンバーは今の所、レーンには近づいていないのだ。
唯一近づいたのはひよこクラブと対抗する様に行った試技の時とその後練習が始まって様子見した1回くらいだ。
だって、不用意にレーンに近づいたら、質問攻めにあいそうなんだもん。
出場チームのメンバーらは出場取り消しが怖くて質問して来ないけれど、出場できないただの観覧だけの生徒は出場取り消しが関係無いものね・・・・。あう・・・・。
それよりも私たちが今しないといけないのは大型ストップウォッチ作成だ。
便宜上、みんなには時計って言ってるけど、要はストップウォッチなんだよね。
こっちの世界ではまだ無いみたいだから、もうこれからも時計で押し通しちゃうけどね。
時計と違って作るのが面倒なのは、ボタン一つで複数の機能を持たせないといけないからだ。
まぁ、各機能毎にボタンを取り付けるでもいいけど、機能としてはスタートと針を止める機能、0の所に針が戻る様にしなくてはいけない。
ただボタンがいっぱいあると咄嗟の時にボタンを押し間違えたり、どのボタンか迷ったりしてタイムラグが発生する可能性は否めないよね。
はっきりと言おう。
私は時計の作り方もストップウォッチの作り方も知らないんだよ。
だけど前に錬金術クラブの即売会で携帯用の時計を作ったから、時計の事は少しなら分かる。
でも、少しだけだよ。
だって、設計の殆どはランビットがやってくれたからね。
で、今回もどうやったらストップウォッチが作れるのか分からないんだけど、ボブもランビットも恐らく作れると思うって言ってたから、彼ら2人が主となって作ってくれるはず。
ランビットが引いた設計図を錬金術の機械に入れて魔力を流すくらいはじゃんじゃんやるから、基本の仕組みを考えたり、設計図を引くところは君たちに任せるよと思ってたら、あれよあれよと言うまにストップウォッチできちゃったよ。
うほぉぉ。
で、直径2マートルの大きなストップウォッチが2台。
どっちのストップウォッチがどっちのレーンかなんてその配置で分かるとは思うんだけれど、レーンカラーを決めてレーン毎に統一してみてはなんて意見を勇者様が出したもんだから、ゴールに向かって左側が水色、右側がオレンジ色という事になった。
というのも、ボブがストップウォッチの外核をカラフルなプラスチックで作りたいと言って来たので、私のスキルで呼び出す事にしたんだけれど、カジノのチップでは使っていない水色とオレンジ色にしたのだ。
チップで使っている色はチップ改ざんとかに使われたら嫌だからね。
問題はストップウォッチを何時レーン際に設置するかだ。
雨が降って濡れると精密機械ではあるので、ヤバいのではないかという意見もあり、結局はあややクラブの2階に大会日近くまで保管しておくことになった。
大会の朝、天気によっては前日の設置も視野に入れている。
警備がちゃんとしている学園なので、前日に設置しても盗まれる事はないとは思うが、一番良いのはやはり当日の朝早くだと思うよ。
それにしてもカラフルなプラスティックってそれだけで目を引くね。
すごく綺麗だ。
で、折角レーンカラーを決めたので、各レーンの真ん中にそれぞれのテーマカラーの線を引いた。
レーンの真ん中はここですよって感じ。
ここからあんまり離れないでねの意味もある。
しっかし何時見ても、出場チームの皆がレーンの周りに集まって、ワイワイと楽しそう。
この週末は土曜も日曜も多くの生徒が寮に残ったらしい。
だからレーンカラーのラインは夜遅くに外部委託して塗ってもらったよ。
私?もちろん週末は帰るよ。
店も気になるけど、モナミやホットドッグのお店も色々確認したいしね。
モナミはまだ手がヒリヒリと痛い様で、夜に薬を手放せないみたいだ。
彼女をあんな目に遭わせたのに謝りもせず逃げた件の男2人を捕まえたいが、あまり特徴のある人たちではなかったらしく、ちょっと難しいらしい。
嫁入り前の娘にあれだけの大怪我をさせておいて、ツルンと居なくなるとかありえんわ~。
天罰が落ちればいいのに。
ホットドッグの方はこの週末から営業だそうだ。
無事購入手続きが済んだ後、父さんがその店の権利書を孤児院名義にして院長先生に渡したそうだ。
院長名義にしなかったのは、院長が代わっても、代々孤児院の子供が働ける場所として確保できる様にと言う父さんの心遣いなのだ。
院長先生は恐縮しながらもとっても喜んだそうだ。
屋台の時と同じ広場なので、お客さんも大方戻って来たそうだ。
早くモナミの手の痛みが治まる事を祈ってる。




