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「すみません。レーンの予約が取れないと複数名のチーム代表が抗議に来ています」
私たちザ平民ズとひよこクラブのメンバーの所に大勢の生徒がなだれ込む様にクレームを声高に詰め寄り、何らかの対処を要請して来た。
その事を伝える為に、月曜なのにあややクラブの部室に来て、闇王様たちに現状を伝えたのだ。
まぁ、クレームを出たとしても、まずは出場チームとして登録されてから予約をお願いします、別の空いている日に予約して下さいとか、早い者勝ちなのでそこんとこよろしく!としか言いようが無いんだけどね。
また、クレームも質問箱の方へ書面で入れて下さい。質問もクレームも同じ扱いになりますと言ってからは、ピタっと口頭での申請は無くなった。
みんなこのイベントに出場したいんでしょうね。
でも、質問箱はクレームの紙で溢れているけどね。
「見事に予約で一杯になってますよ」と予約表の中身を写して来たペペ君が誇らしげに闇王様に伝えている。
ん?何で授業時間中にも予約が入っているの?
それダメじゃん。
しかも、元々の予定表は授業のない時間しか枠内に書いてないのに、態々自分たちで書き足したのだろう、めっちゃ不細工な表になってるよ。
「アドルフォ様、通常の授業の時間の予約が見受けられますが、この時間に訓練するチームがあると学園側が問題視すると思いますよ」
「うむ。アウレリアの言う通りだな。練習は参加決定チームのみ可。1度予約すると予約日を含め2日間は予約不可。授業時間中は使用禁止と新しい予約表に大きな字で記入して、学食に張り出しておいてくれ」
「は~い」
やっぱり闇王様って地頭が良いんだろうね。時間を掛けずにサラっと解決策を指示してるのがすごいよ。
「今朝さぁ、実家から寮に戻る時に馬車の中から見えたんだけど、もうレーンを使って訓練してたチームがいたんだよね。しかも観覧席も立ち入り禁止にしているにも関わらず、かなりの数の生徒がいたんですよ」
ペペ君が、イベントの成功を疑わない自信に満ちた仕草で誇らしげに闇王様に報告した。
「アディ、これは、実行委員会が必要かもね。レーンだけを貸し出すにしてもチーム同士で喧嘩したり怪我をされても困っちゃうしね。僕たちがずっと張り付いている訳にもいかないから、実行委員会の方で管理してもらった方がいいのかも?」
「う~ん。セシリオの言う事も分かる。分かるんだけど、実行委員会を募集すると可成りのメンバーがイベントクラブの部員と重なっちゃうからなぁ・・・・喧嘩したチームは本選出場禁止で学生の自主性に任せる方が面倒が少ない気がするんだが・・・・。怪我の方は元々出場禁止の条件に入ってるから大丈夫だと思うぞ」
闇王様にしても実行委員会設立は、帯に短し襷に長し感が拭えないんでしょうね。
「アドルフォ様、表の時間外、特に夜に勝手にレーンを使って訓練しない様、そっちについても警告文を載せた方が良いと思いますよ」
ペペ君、するどい!
夜とか勝手にレーンを使って練習するチーム、いそうだわぁ~。
「あっ、俺、そろそろ学食へ行きます。参加チームの登録申請を受け付けないと」
「フェリーペ、僕たちも一緒に行くよ」
「「私たちも」」
ザ平民ズがフェリーペを支えるべく一緒に学食へ移動しようとしたら、「フェリーペ、手間を掛けるけど参加希望者には時間外のレーン使用は禁止である事を、登録の都度言い聞かせてくれ」と言われ、フェリーペが闇王様へ頷く。
「それと、ペペ。登録申請を担当しているひよこクラブの部員も申請作業に必要な事をしっかり学ぶ様積極的に手伝いをする様に」
「はい、アドルフォ様。ありがとうございます」
学食へは開始時間の18時より15分も前に到着したのに、既に長蛇の列が出来ていた。
「「「うわぁぁ」」」
ここに並んでいるのがチーム全メンバーでなく、代表者のみであるならば、もう見るからに列の頭の1/5以外の人たちは参加できない。
だって早い者勝ちで12チームまでだもん。
列には1チームで代表1名から2名が並んでいた。
結局列の1/4のチームにはごめんなさいしなくてはいけなかった。
「これって、予選とか無いんですか?」
「そうだ!何日かに分けて実施したら全てのチームが参加できるじゃないか」
「参加できないってなると、メンバーからどれだけ嫌味を言われるか・・・・」
「横暴だ!早い者勝ちでなく、実力で決めて欲しい」
登録できなかったチームの人たちが口々に文句を言うけれど、こんな面倒なイベントを何日にもわたって実施する私達の苦労を考えろっ!って言いたい。
参加する方は参加する瞬間だけを考えればいいけれど、実施する方は大変なんだよぉぉ。
しかも、怪我人とかを出さない様に、イベントそのものだけでなく多方面に気を配らなくちゃいけなんだよ。
各レーンにつく各属性の魔法使いたちの経費は誰が出すんだ?
はぁ~。生徒って気楽でいいよねぇ~。って私も生徒だけどっ。
「みなさん。あややクラブのイベントに参加を希望して下さり、ありがとうございます。人数制限で参加できなかったチームのみなさんには申し訳なく思います。ですがっ、最初からポスターに早い者勝ちで12チームが出場可と明記してありました。登録の選定方法については事前にお知らせしてありますので、あややクラブに落ち度は無いと思います。このイベントは来年以降、ひよこクラブが引き継いでくれると思いますので、今年出場できなかったチームは是非来年、参加を希望してみてください。ありがとうございましたっ」
フェリーペが大きな声で登録できなかった人たちに向かって挨拶をするが、「僕たちは4年生だから来年は無いんだよ。4年生を優先的に出場させる事はできないのか?」等と反論もされた。
どう言い返したら良いのかフェリーペが悩んでいる風だったのだが、それを見かねたのだろう、ランビットが一歩前に出た。
「数日間に渡って予選をして欲しいと言う案。4年生を優先的に出場させる案。ありがとうございます。今年は既に出場者決定方法やイベント実施日時は決まっているので動かせません。何故なら、その方法で実施すると学園側に申請し、許可を得ているからです。また、僕たちの様にイベントを用意する側もこの日時、方法で実施する様に数か月前から動いており、急遽の変更は出来かねます。イベントを開催する際、毎回費用が発生します。今回であれば、レーンや観客席の設置費用、レーンの質を保つために魔法を使えるプロの方を複数雇用しています。ご要望は来年このイベントを実施するクラブにちゃんと伝えますが、こういう理由で全ての要望を受け入れられるかどうかはまた別の話になります。兎に角今年はこのイベントの最初の年。どんなイベントなのか、自分たちが参加したり、観客席からご覧頂いて、楽しんだり、来年への対策を立てて下さい。いつもイベントに参加して頂いてありがとうございますっ!」
平民が貴族も含む生徒に説明するのでちゃんと敬語風になっているランビット。
普段は一歩後ろに控えている感じなのに、こういう所は本当に凄いと思った。