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翌日、アドリエンヌ様は勇者様と私をクリサンテーモの会議室に呼び出した。
中に入るとお仕着せを着た女性が一人。
どうやらアドリエンヌ様ん所の例のお裁縫上手のメイドさんらしい。
「きちんとサイズを測らないと、ダンスした時に綺麗なシルエットが出ませんので」と、私たち二人の体のいろんな所を測ってメモって行った。
デザイン画を見せると、「可愛らしいですね。でも、これは子供が着てしまうと上身頃が徐々に下がってしまう可能性があるので、ここにリボンを付けてもよろしいでしょうか?」とオフショルダーで露わになっている肩の所に、ドレスと共布の細いリボンをストラップとなる様に描き込まれた。
胸が無いものね~。あう。
踊っている時に徐々に上身頃が落ちて来るとなるとそれはもうホラーなので、ストラップを付ける様にお願いした。
アドリエンヌ様は光沢のあるパールホワイト、メグたんは薄い黄色、私は明るい青の布を選んだ。
大きなリボンはアドリエンヌ様は胸の所に黒色の布で、メグたんは共布で腰の所、そして私は背中の首の直ぐ下に、同じく共布で付ける様にしてもらった。
全員リボンは共布で作るのかと思っていたら、アドリエンヌ様は白地のドレスに黒と言うかなり大胆なリボンにされたのでちょっと驚いたけれど、でも実際にメイドさんが両方の布をアドリエンヌ様の体にあててみると、メリハリが出て都会的で素敵なドレスが出来そうだなぁと思えた。
私のだけはリボンの襟足を少し長めにしてもらったよん。
踊った時、ヒラヒラとはためいて綺麗そうだもんね。
「皆様、当日御髪はどうなさるのですか?」
メイドさんの質問に私たちはハタっと体の動きが止まってしまった。
全然考えてなかったよ。
私は背中のリボンが見える様にアップにしなくちゃ様にならない。
残りの2人はどうするんだろう?
「御髪をアップにされるのなら、髪飾りはどうされますか?ドレスと共布のリボンにされますか?」
なるほど、メイドさんの質問の意図はそこにあったのか。
私はさっそくデザイン画のはしっこに、共布で作られた大きなリボンの真ん中に同じ共布の小さな造花を書き入れた。
ついでにオードリーがティファニーで~の映画でしていたアップヘアーの図を描いて、右横上にそのリボンを着けた絵を描き入れてみた。
そこまですればリボンの大きさも大体分かってもらえるだろうと思ったのだ。
その絵を見て、アドリエンヌ様もメグも同じ髪型にすると言い出したので、全員で同じ髪型、ドレスも基本は同じデザイン、でも色と大きなリボンの位置が違うお揃いさんになる。
いいかもしれない。
「可愛らしいですわぁ。これはドレスも髪飾りも作り甲斐があります。お三方がお揃いのドレスを着て並んで立った所を早く見て見たいです」とメイドさんは大変乗り気だ。
ありがたやぁ~。
こんな3週間くらいしか時間が無い時に3着も作ってもらえるなんて。
メグたんと私はアドリエンヌ様にもだけど、メイドさんにも何度もお礼を言って、クリサンテーモの会議室を出た。
アドリエンヌ様はまだメイドさんと打ち合わせがあるらしく、クリサンテーモに残った。
ダンスそのものは好きになれないけど、ドレスは嬉しいかも?
メグたんも自然とウフフと笑って、二人で錬金術クラブの部室へ。
「先ぱぁ~い。即売会、何を売るか聞いて下さいよぉ」
部室の中に入った途端、先日の後輩が寄って来た。
「何なに?何を作るの?」
「缶箱です」
「え?缶箱?」
装飾品にするのではなかったのかな?
後輩が背中に隠していた物を体の前に持って来た。
ん?
これってウチのレストランで売ってるクッキーを入れる缶箱じゃん?
「フローリストガーデンで売ってるクッキーを入れる缶箱です」
「うん」
後輩が胸を張って言うけど、私はそのフローリストガーデンのトップなのだ。
当然、それが何でどこで売っているかは知っている、と言うか、それをデザインしたのは私だ。
「これ、部長が作ってるんですって」
「うん」
ボブにはずっとアルバイトで2種類の缶箱、作ってもらってるから間違いじゃないよ。
「で、デザインはもちろん変えるけど、こういう缶箱って使い勝手が良いじゃないですかぁ」
「う、うん」
「4種類くらいの大きさで、それぞれデザインを変えて作ってみようかとっ!」
後輩君はもう缶箱を作る事を自分の中で決定しているらしく、頭の中で色々な缶箱を思い浮かべているのか、ちょっとトランス状態だ。
まぁ、私も人の事は言えない。
何かを思い付いたらそのアイデアに没頭しちゃって、問題点は無いかとか、どんなデザインにしようかとか、そりゃぁ色々考えるから、そういう時周りの人が私を見たら、今の後輩ちゃんみたいな感じになっているだろうなぁ。
「で、もうデザインは出来たの?」
「え?」
急に話し掛けられたという感じで驚いている後輩ちゃん。
いやいや、さっきまで一緒に話してて、君が勝手にトランス状態になっちゃっただけだかんね~。
「デザインはこれからです。でも、色はカラフルにしたいんです」
「へぇ~」
「同じ大きさの蓋で黄色もあれば青もある、下の部分の箱も赤や黄色、オレンジと色んな色の物を用意して、買う人が自分のセンスで組み合わせるといいんじゃないかと・・・・」
「おお!面白そうだね、これって、無地の缶箱をいっぱい作って、色の組み合わせで遊ぶって言うのもありかも。ドット柄とか格子柄とかもいいかも?白と後一色って感じでギンガムチェックみたいな感じも可愛いよね」
「おおおお!先輩、アドバイスありがとうございますっ!その方向でやってみます。それなら、設計図も3種類くらいで済むし、作るのが楽ですね」
「うんうん。がんばって!」
後輩ちゃんが嬉しそうにそれまで座って居た作業机の方に戻ったのを見て、メグたんが、「なになに?後輩たちの作品にまでデザインをしてあげるの?」って言って来た。
「いやいや、自分で無地って言ってたから土台は本人がちゃんと考えてたよ」
「ふぅ~~ん」
「さぁ、私たちはドールハウス、たくさん作らなきゃなので、作業開始するよぉ~」
「うへ~~い」
 




